鍼灸健保推進・闘いの歩み ⑥
その後、Nさんの「不服申し立て」の言い分には
全くの顧慮もなく県の支給担当者の「不支給理由」を
そのままオーム返しに、当然のごとく
「県社会保険審査官」は却下しました。
それで、国の「社会保険審査会」に
「処分撤回」の「再審査請求」をし
更に一歩進めた取り組みとして
審査会へむけた行動を開始しました。
当時、民主党参議院議員だった谷博之先生には
絶大なご支援を戴きました。
「審査会」でも、
Nさんの「代理人」として証言して下さいました。
「審査会」の結論・設定が出される前に
平成59年5月5日の日本鍼灸師会・代議員総会が開かれ
私は、栃木会長に代わり県の「代議員」として出席し
発言の機会を得ました。
「審査会」へむけた行動を呼びかけ
何県かの代議員も支援の発言・質問をしてくれました・・・
それについての「日鍼会の会長・保険部長回答」は
昭和59年6月発行「日本鍼灸新265号」の全文をそのまま引用し、
私の考えを記したい思います。
井垣保険部長
全国の鍼灸師に健保推進のため立とうという檄文をもって
諸問題打破を訴えたが非常な矛盾(どんな?)がある。
健保の再審査請求に十分戦って場合によっては行政訴訟も辞さない
という激しい内容であり、勝つ要素があるようにみえるが、
現在の社会体制、医療体制、医療保険体制からみて
鍼灸師によってこの様な戦いを挑んだとしても勝ちを得ることは非常に難しく
却ってやぶ蛇となるおそれがある。
公開審査で却下されれば
全国的に波紋が及び、これが行政訴訟まで進み
”鍼灸に費用を支払うべきでない”との結論が下されたならば、
現在取り扱い中のものは非常な危険に晒されるので、
この様な行動を起こされることは絶対に反対である。
日鍼会は支援すべきではない。
われわれは強い力もなく、
保険については行政と真っ向から立ち向かう何もない。
只ただ、
我々は当局の理解と患者の支援と要請によって費用が支払われているのであって、
正面きって戦いを挑むならば必ずや敗北することも明白である・・・・・
会長回答
現在地方の会員の皆様が
鍼灸に対する健保の現状に強い危機感を持っておられること、
また、中央のみにまかせてはおけないというお考えは
痛いほど察しておりますが、
大変重要な問題ですので私なりの検討を基にお答え申し上げます。
お申し出での点を要約すると
その一は鍼灸は正式に医療の一種である。
次は鍼灸を健保で受ける権利。
三番目は鍼灸に対する差別行政。
この三点はお気持ちとしては分からないものでもありませんが、
基本的に健保に関する認識の相違があります。
先ず、現行制度の下にあっては、
医療は医師でなければ行うことができないということです。
残念ながら医師の行う鍼灸は医療であっても鍼灸師の行う鍼灸は
施術であり、医業類似行為であります。
健康保険法が西洋医学による療養の給付を原則とている以上、
医業類似行為である鍼灸は
療養費払いという特例によらざるを得ないわけであります。
この原則をまず、
明確に認識していただきたいと存じます。
では、柔整のみが健保の団体協定や同意書の省略ができて
何故鍼灸ができないのか?
この点については私も大変重要なこととして受けとめ、
これをどの様に打開して行くか日夜心を痛めているところでもあります。
そこで考えて頂きたいことは、
柔整は昭和11年頃から運動を進めており、
当時は大学においても整形外科を設けているところは殆どない
という状況でありました。
従って整形外科が極端に不足していた中で、
柔整の取り扱う患者は緊急性が高く、
医療の延長上ある柔整として取り扱われたという事情があります。
また、柔整は国技とされ、
戦前戦後を通じ柔道整復師と政界、官界とは強い連携によって結ばれてきた
ということもあります。
柔整が健保運動に成功した裏には
以上のようなことがあったということも承知して頂きたいと存じます。
何れにしても鍼灸と柔整とは全く異なるものでありますが、
我々は当面柔整並みの健保取り扱いを目標として、
これからも強力に諸般の問題に取り組まなければならないと存じます。
次に行政差別の問題であります。
提案者によれば、
療養費の支給条件、同意書の簡素化、委任払い等の取り扱いの面で
国民が健保で鍼灸を受ける権利が侵害されている。
又は同じ医業類似行為である柔整と鍼灸とで大きな差別を設けているのは
行政の不公平であるから、行政訴訟も辞さない強い姿勢で行政と対決し、
健保制度の基本に斬りこみ鍼灸に対する行政の考え方を
根本的に変えさせなければならないというご意見である。
しかし、この様に行政と対決して問題が解決されることであろうか。
この問題に業界として一丸になって行けと言われるが
もう少し深く考えてほしい。
たとえ、70%でも勝てる見込みがあれば、
私は、討ち死にを覚悟でやることを惜しまない。
しかし、現段階においては
99%勝てないということを充分認識してほしい。
日鍼会は日鍼会として築き上げてきた長い歴史と伝統がある。
この点は行政当局にも、日本医師会にも高く評価されており
30年誌を見てもおわかりの通りであります。
一言で申し上げれば、日鍼会としては
正面切って大上段に振りかぶることはいたしません。
団体協定が出来れば鍼灸師も、公に話し合えることになります。
いま、日鍼会としてもまた、
鍼灸業界全体のリーダーとして私が
この問題を「厚生省はけしからん」と言って行政と喧嘩して
討ち死にをするわけにはいかないことをご理解願いたいと思います。
提案者初め皆様の主目的である団体協定と
柔整並みの事務取り扱いの簡素化んぽ推進は
私たちの目的と何等変わりはありません。
ただそのやり方、運動方法が誤っている事を理解して頂きたい。
鍼灸師会の名において行政と対決などという強硬な運動は、
マイナス以外の何物でもありませんので
日鍼会としては反対であります。
ただし、国民サイドの立場から患者さんたちが、
保険料を払っているのになぜ健保で鍼灸が受けられないのか、
鍼灸師にかかれないのか、鍼灸による鍼灸治療の門戸を開け、
とアッピールし世論を盛り上げて頂く事は大いに歓迎いたします。
新聞・NHK等を通じ患者サイドにおいて鍼灸の健保を進める運動を
展開して頂きたいとは思いますが、
どこまでも運動は政治色を出さずに超党派的に行われる事が必要と思います。
例え結果において、鍼灸師の利益につながることであっても、
それを業団があからさまに表に出し対決姿勢で運動しては、
世論が取り上げないことを充分認識して頂きたい。
行政の締め付けを緩めるためには、
何といっても世論を高めること一番大切である。
またそのことが日鍼会のオーソドックスな運動の成功になることを
信じて頂きたいと思います。
次に保険局に対して、
鍼灸治療を保険でやらした方が医療費が大きくダウンすることを主張すべきだ
という説もありますが、
そうしたことは充分考えられるにしても、
現段階において、これを当局に充分説得するだけの資料を持っておりません。
しかし、我々は常々このことを社労関係の議員諸先生方に
充分お話いている事を承知しておいて頂きたいと存じます。
一方、権利意識が先走りして、
鍼灸師の行う鍼灸を療養の給付(現物給付)に組み込みたいという運動もありますが、
これは大きな間違いであります。
鍼灸が現物給付として取り入れられたとき
開業鍼灸師がどういう立場に立たされるか火を見るよりも明らかであります。
この点を充分考えて
鍼灸の現物給付に連なる運動は絶対にしてはならないことをつけくわえて、
私の見解とさせて頂きます。
以上が、当日の私の「提案事項」に対する長い長い会長回答でした。
その後、Nさんの「不服申し立て」の言い分には
全くの顧慮もなく県の支給担当者の「不支給理由」を
そのままオーム返しに、当然のごとく
「県社会保険審査官」は却下しました。
それで、国の「社会保険審査会」に
「処分撤回」の「再審査請求」をし
更に一歩進めた取り組みとして
審査会へむけた行動を開始しました。
当時、民主党参議院議員だった谷博之先生には
絶大なご支援を戴きました。
「審査会」でも、
Nさんの「代理人」として証言して下さいました。
「審査会」の結論・設定が出される前に
平成59年5月5日の日本鍼灸師会・代議員総会が開かれ
私は、栃木会長に代わり県の「代議員」として出席し
発言の機会を得ました。
「審査会」へむけた行動を呼びかけ
何県かの代議員も支援の発言・質問をしてくれました・・・
それについての「日鍼会の会長・保険部長回答」は
昭和59年6月発行「日本鍼灸新265号」の全文をそのまま引用し、
私の考えを記したい思います。
井垣保険部長
全国の鍼灸師に健保推進のため立とうという檄文をもって
諸問題打破を訴えたが非常な矛盾(どんな?)がある。
健保の再審査請求に十分戦って場合によっては行政訴訟も辞さない
という激しい内容であり、勝つ要素があるようにみえるが、
現在の社会体制、医療体制、医療保険体制からみて
鍼灸師によってこの様な戦いを挑んだとしても勝ちを得ることは非常に難しく
却ってやぶ蛇となるおそれがある。
公開審査で却下されれば
全国的に波紋が及び、これが行政訴訟まで進み
”鍼灸に費用を支払うべきでない”との結論が下されたならば、
現在取り扱い中のものは非常な危険に晒されるので、
この様な行動を起こされることは絶対に反対である。
日鍼会は支援すべきではない。
われわれは強い力もなく、
保険については行政と真っ向から立ち向かう何もない。
只ただ、
我々は当局の理解と患者の支援と要請によって費用が支払われているのであって、
正面きって戦いを挑むならば必ずや敗北することも明白である・・・・・
会長回答
現在地方の会員の皆様が
鍼灸に対する健保の現状に強い危機感を持っておられること、
また、中央のみにまかせてはおけないというお考えは
痛いほど察しておりますが、
大変重要な問題ですので私なりの検討を基にお答え申し上げます。
お申し出での点を要約すると
その一は鍼灸は正式に医療の一種である。
次は鍼灸を健保で受ける権利。
三番目は鍼灸に対する差別行政。
この三点はお気持ちとしては分からないものでもありませんが、
基本的に健保に関する認識の相違があります。
先ず、現行制度の下にあっては、
医療は医師でなければ行うことができないということです。
残念ながら医師の行う鍼灸は医療であっても鍼灸師の行う鍼灸は
施術であり、医業類似行為であります。
健康保険法が西洋医学による療養の給付を原則とている以上、
医業類似行為である鍼灸は
療養費払いという特例によらざるを得ないわけであります。
この原則をまず、
明確に認識していただきたいと存じます。
では、柔整のみが健保の団体協定や同意書の省略ができて
何故鍼灸ができないのか?
この点については私も大変重要なこととして受けとめ、
これをどの様に打開して行くか日夜心を痛めているところでもあります。
そこで考えて頂きたいことは、
柔整は昭和11年頃から運動を進めており、
当時は大学においても整形外科を設けているところは殆どない
という状況でありました。
従って整形外科が極端に不足していた中で、
柔整の取り扱う患者は緊急性が高く、
医療の延長上ある柔整として取り扱われたという事情があります。
また、柔整は国技とされ、
戦前戦後を通じ柔道整復師と政界、官界とは強い連携によって結ばれてきた
ということもあります。
柔整が健保運動に成功した裏には
以上のようなことがあったということも承知して頂きたいと存じます。
何れにしても鍼灸と柔整とは全く異なるものでありますが、
我々は当面柔整並みの健保取り扱いを目標として、
これからも強力に諸般の問題に取り組まなければならないと存じます。
次に行政差別の問題であります。
提案者によれば、
療養費の支給条件、同意書の簡素化、委任払い等の取り扱いの面で
国民が健保で鍼灸を受ける権利が侵害されている。
又は同じ医業類似行為である柔整と鍼灸とで大きな差別を設けているのは
行政の不公平であるから、行政訴訟も辞さない強い姿勢で行政と対決し、
健保制度の基本に斬りこみ鍼灸に対する行政の考え方を
根本的に変えさせなければならないというご意見である。
しかし、この様に行政と対決して問題が解決されることであろうか。
この問題に業界として一丸になって行けと言われるが
もう少し深く考えてほしい。
たとえ、70%でも勝てる見込みがあれば、
私は、討ち死にを覚悟でやることを惜しまない。
しかし、現段階においては
99%勝てないということを充分認識してほしい。
日鍼会は日鍼会として築き上げてきた長い歴史と伝統がある。
この点は行政当局にも、日本医師会にも高く評価されており
30年誌を見てもおわかりの通りであります。
一言で申し上げれば、日鍼会としては
正面切って大上段に振りかぶることはいたしません。
団体協定が出来れば鍼灸師も、公に話し合えることになります。
いま、日鍼会としてもまた、
鍼灸業界全体のリーダーとして私が
この問題を「厚生省はけしからん」と言って行政と喧嘩して
討ち死にをするわけにはいかないことをご理解願いたいと思います。
提案者初め皆様の主目的である団体協定と
柔整並みの事務取り扱いの簡素化んぽ推進は
私たちの目的と何等変わりはありません。
ただそのやり方、運動方法が誤っている事を理解して頂きたい。
鍼灸師会の名において行政と対決などという強硬な運動は、
マイナス以外の何物でもありませんので
日鍼会としては反対であります。
ただし、国民サイドの立場から患者さんたちが、
保険料を払っているのになぜ健保で鍼灸が受けられないのか、
鍼灸師にかかれないのか、鍼灸による鍼灸治療の門戸を開け、
とアッピールし世論を盛り上げて頂く事は大いに歓迎いたします。
新聞・NHK等を通じ患者サイドにおいて鍼灸の健保を進める運動を
展開して頂きたいとは思いますが、
どこまでも運動は政治色を出さずに超党派的に行われる事が必要と思います。
例え結果において、鍼灸師の利益につながることであっても、
それを業団があからさまに表に出し対決姿勢で運動しては、
世論が取り上げないことを充分認識して頂きたい。
行政の締め付けを緩めるためには、
何といっても世論を高めること一番大切である。
またそのことが日鍼会のオーソドックスな運動の成功になることを
信じて頂きたいと思います。
次に保険局に対して、
鍼灸治療を保険でやらした方が医療費が大きくダウンすることを主張すべきだ
という説もありますが、
そうしたことは充分考えられるにしても、
現段階において、これを当局に充分説得するだけの資料を持っておりません。
しかし、我々は常々このことを社労関係の議員諸先生方に
充分お話いている事を承知しておいて頂きたいと存じます。
一方、権利意識が先走りして、
鍼灸師の行う鍼灸を療養の給付(現物給付)に組み込みたいという運動もありますが、
これは大きな間違いであります。
鍼灸が現物給付として取り入れられたとき
開業鍼灸師がどういう立場に立たされるか火を見るよりも明らかであります。
この点を充分考えて
鍼灸の現物給付に連なる運動は絶対にしてはならないことをつけくわえて、
私の見解とさせて頂きます。
以上が、当日の私の「提案事項」に対する長い長い会長回答でした。