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自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

安易な改造は命を危険にさらす

2012-06-03 03:13:18 | クルマをいじる
 一年ほど前のある日、僕は片側二車線の国道を走っていた。右側車線のほうがクルマの流れは順調だったのだが、僕はたまたま混雑している左側車線を走行。「いつもより混んでいるなぁ」などと思いながらのんびり走っていると、右側車線の後方からカッ、カッ、カッ、カッ、という不思議な音を立てながらクルマが迫って来た。
 そのクルマは先代の日産エルグランドだった。エルグランドは右隣まで来たところで、その後しばらく僕のクルマと並走状態。今まで聞いたことのない音だったので、僕は音の発生源を捉えようとサイドウィンドウを開けてみた。エンジンか?それとも足回りか?そんなことを考え、なおかつ音を聞きながらチラッ、チラッ、とそのエルグランドを見ていると、思いもしなかった光景が目に飛び込んできた。なんと左フロントのブレーキキャリパーが外れそうになっていて、そのキャリパーがアルミホイールのスポーク部分に接触している音だったのである。
 キャリパーは対向4ポットのブレンボだった。よく見るとキャリパーの下部が車両外側へとずれてホイールのスポーク部分と接触している。つまりキャリパーがディスクローターに対して斜めになっていたのである。とにかくドライバーに異常を知らせなきゃと思ったのだが、こういう肝心な時に再び右側車線のほうが流れが速くなってしまう。そのエルグランドは僕が右手を挙げて合図を送るよりも一足早く加速して行ってしまった。もっとも、あれほど派手に壊れていたら運転していた人は当然異常に気付いていただろうとは思うのだが。

 僕が思うに、恐らくキャリパーサポートが破断していたのではないだろうか。キャリパーサポートとはキャリパーの台座のことで、これがなければ純正キャリパー用のハブナックルに社外品のキャリパーを取り付けることはできないのだが、このキャリパーサポートが強度不足のために破断してしまったのではないか、と思うのである。今でもあの光景は鮮明に覚えているのだが、キャリパー上部は固定されている様子だったのに対して、キャリパー下部はホイールと接触してプルプルと震えていた。このことから金属疲労によってキャリパーサポート下部が破断し、その結果キャリパー下部は宙ぶらりん状態になりプルプルと震えていたのではないか。そしてキャリパーサポート上部は破断した時の衝撃によって変形したために、取り付けられているキャリパー自体も斜めになってしまったのではないかと考えられるのである。ブレンボのキャリパー自体が変形したのか?とも考えてみたのだが、あのモノブロックの高剛性キャリパーが変形することはまず考えられない。
 いったいどこのメーカーのキャリパーサポートなのだろうか。それともどこかの鉄工所にでも依頼して作ってもらったものなのか。あるいは自作した、という可能性もある。ブレンボの正規販売店の中には特注でキャリパーサポートを製作してくれるところもあるらしいが、そういった店のものではないだろう。正規販売店ならば間違っても破断するキャリパーサポートなど製作するはずがない。いずれにしても、このエルグランドのオーナーのかたは安易な改造をした結果、自分の命を危険にさらすことになってしまった。クルマの改造は、『一点豪華主義』では通用しないのである。

 ブレーキをブレンボに改造したい気持ちは僕にもよく分かる。下駄代わりのバイクとして僕がピアジオX9を選んだ理由は、まさにそのブレーキがブレンボのトリプルディスクだったためだ。白状するが、ただ単にそれだけの理由でバイクを購入してしまうほど、僕はブランド好きなミーハー野郎である。実際に乗ってみるとブレンボのブレーキは本当に素晴らしい。その剛性感やタッチはまさに絶妙で、加速をしている時よりもブレーキをかけて減速している時のほうが楽しい、と感じるほどだ。ただしこれはキャリパーだけブレンボ、というだけでは実現できなかっただろうと思う。ピアジオX9はキャリパーだけでなくマスターシリンダーもブレンボ、さらにブレーキレバーもブレンボのマークがしっかりと刻印されている。そこまでとことんやらなければ、ブレンボの真価は十分に発揮できなかったのではないだろうか。
 クルマの場合も全く同じである。キャリパーをブレンボにしたら、場合によってはディスクローターやマスターシリンダーも対応品に交換しなくてはならなくなることもあるだろう。キャリパーサポートなどは基本中の基本だ。ここがだめならすべてが台無しになる。クルマもバイクも、改造すると決めたらとことん突き詰めていかなければ効果と信頼性を発揮することはできない。そして突き詰めていくには金がかかるのである。それともう一つ。改造するなら信頼のおけるメーカーの高価な部品を選ぶこと。これは以前『アーシングについて』のところでも述べたが、安物の部品を買うとロクなことはない。安物買いの銭失い、ということわざがあるが、銭を失うだけならまだいい。最悪自分の命まで失ってしまったら、それこそ取り返しのつかないことになる。命が惜しいのなら、安物の部品を使用した安易な改造は慎むべきだ。
 
 僕もレガシィのブレーキをブレンボにしたいなぁと思っているのだが、今のところ突き詰めていくだけのお金が無い。人生あきらめも肝心だと、つくづく思う。
 
 

湿式エアクリーナーの誤解を解く その2

2012-05-09 04:10:51 | クルマをいじる
 湿式エアクリーナーはエアフロメーター(エアフロ)に悪影響を及ぼす、という意見がある。エアフロという部品はエンジンが吸入する空気の量を計測する装置で、コンピューターがエンジン内部に噴射する燃料の量を判断する決め手のひとつを担っている。このエアフロのセンサー部分に湿式エアクリーナーのオイルが付着してしまい、誤作動を起こしてしまう、と言うのだ。しかし前回にも述べたように僕はK&Nの湿式エアクリーナーを長らく愛用しているのだが、今までそんなトラブルに見舞われたことは一度も無い。エアフロセンサーにオイルが付着していたことなど一度も無いのである。ではなぜこういう意見があるのだろうか。このことについて、僕なりに考え、解説していきたいと思う。

 まず湿式エアクリーナー自体の材質と、これに使用するオイルについて着目していきたい。K&Nの材質はコットンなのだが、他の湿式タイプはたいていスポンジ製かポリウレタン製、またはこのふたつを組み合わせたものとなっている。先ほど述べたような問題は、このスポンジやポリウレタンという素材に原因があるのではないだろうか。コットンであればその繊維一本一本にオイルが染み込んでいくが、スポンジやウレタンという素材では繊維レベルでオイルは染み込んでいかない。微細な穴にオイルが入り込んでいるだけである。入り込んでいるだけのオイルはエンジンの吸気によってしだいにエンジン側へと簡単に移動し、最後はあっけなく吸い込まれて行くことが容易に想像できる。コットンのTシャツとポリエステルのTシャツを想像すれば話が早い。ポリエステル製の吸汗速乾Tシャツというのは汗が繊維に染み込まない。染み込まずに繊維の微細な隙間に入り込んでいるだけだからこそ、早く乾くのである。これに対してコットンのTシャツというのはなかなか乾きにくい。これは汗が繊維に染み込んでしまっているからだ。湿式エアクリーナーも全く同じ理屈である。コットンという素材はTシャツには都合が悪いこともあるかもしれないが、湿式エアクリーナーにはまことに都合がいい、ということになるだろう。
 次にオイルである。K&Nのオイルは粘度が非常に低いもので、もはやオイルというより水に近い。このことから、エンジンが吸い込んでもエアフロセンサーにオイルがベタッ、と張り付き、そこにとどまることができる可能性は非常に低いのである。だが、これが粘度の高いオイルであればエアフロセンサーに張り付いてしまうことは十分に考えられる。さらに、張り付いた状態でエンジンをあまり回すことがなければ、空気の吸入速度が遅いためにエンジンに吸い込まれる可能性も低い。その結果、エアフロセンサーに張り付いたオイルはそこにとどまり続け、しだいに固着していくことが考えられる。粘度の高いオイルを使用する湿式エアクリーナーの場合は注意が必要となってくるだろう。
 湿式エアクリーナーにオイルを含ませ過ぎ、という可能性もあるように思う。例えばスポンジ製の湿式エアクリーナーが純正装着されているバイクなどは、その説明書に『湿式エアクリーナーのオイルは固く絞ってから使用してください』などと書かれてある。湿式とは言ってもオイルはほんのお湿り程度でいいのである。しかしこれが煮物の高野豆腐のようにオイルを含ませていたりすれば、当然問題は発生してくると思う。湿式エアクリーナーはエアフロに悪影響を及ぼすと言っている方が、はたしてどれほどの量のオイルをエアクリーナーに含ませていたのか。残念ながらその程度については、ご本人にしかわからない。

 ただ、ベーン式(フラップ式)のエアフロは確かにトラブルが発生する可能性がある。このベーン式というのは空気通路に設けられた扉の開く角度によって吸入する空気の量を計測する、というものだ。吸入量が少なければ扉は少し開き、多ければ大きく開く。かなり単純な仕掛けでひと昔前に主流だったエアフロなのだが、この扉にオイルが付着する可能性はかなり高い。なにせ扉だから、オイルが付着する的が大きいのである。このため、ベーン式のエアフロを採用しているクルマはK&Nも含めたすべての湿式エアクリーナーの使用を控えたほうがいいだろう。
 現在ではベーン式は抵抗が大きい、ということでホットワイヤー(白金線)式が主流となっている。このホットワイヤー式というのは白金線に電流を流して発熱させ、その温度の冷え具合で吸気量を計測するというもの。僕のユーノス・ロードスターやレガシィもこれである。ちなみに同じユーノス・ロードスターでもNA6CEのほうはベーン式のエアフロになっている。過渡期のクルマはこのユーノス・ロードスターのように前期と後期でエアフロの方式が違っている場合があるので注意が必要だ。

 使用した湿式エアクリーナーでトラブルが発生したからといって、単純にすべての湿式エアクリーナーを全否定するのは間違えている。今までせっせと説明してきたように、トラブルの要因というのは実はこれほどあるのだ。単純に湿式エアクリーナーというだけでK&Nまで否定されてしまっては、K&Nがあまりに哀れである。
 

湿式エアクリーナーの誤解を解く その1

2012-05-03 03:52:06 | クルマをいじる
 まず最初に、僕はユーノス・ロードスター、レガシィ、ビューエル、ピアジオX9の四台にアメリカのK&N製湿式エアクリーナーを使用している。このうちユーノス・ロードスターに使用しているものはキノコ型タイプで、かれこれもう十一万キロ以上に渡って使用しているのだが今まで問題が起きたことは全く無い。実に経済的なエアクリーナーである。

 湿式エアクリーナーとはその名のとおり、エアクリーナーにオイルを染み込ませて使用するものを言う。アフターパーツだけではなくバイクの一部などにも純正装着されていて、汚れたら洗浄して乾燥後にオイルを染み込ませて再使用する。これに対して乾いたままで使用するものが乾式エアクリーナーである。乾式エアクリーナーは現代のほぼすべてのクルマに純正装着されているもので、汚れたら使い捨て。つまり新たな乾式エアクリーナーを購入し、交換なければならない。アフターパーツで販売されている乾式エアクリーナーも同様である。
 乾式エアクリーナーの長所は完全にメンテナンスフリーであるという点だ。これに対して短所はそのつど新品を購入しなければならないためにコストがかかること。そして湿式と比べて吸気抵抗が大きい、という点にある。
 いっぽう湿式エアクリーナーの長所はその吸気抵抗の少なさにある。染み込ませたオイルが埃やゴミをキャッチしてくれるから、フィルター自体を薄くすることが可能なのだ。吸気抵抗の低減はエンジンレスポンスの向上や微増ながらエンジンのパワーアップ、そして燃費の改善などに効果がある。短所は先ほども述べたように汚れたら洗浄してオイルを染み込ませる、という手間がかかるうえ、そのメンテナンスが終了するまでクルマ(バイク)に乗ることができない、という点だろう。

 K&Nの湿式エアフィルターの素材はコットンで、ガーゼのように織ったものである。このガーゼのようなフィルター素材の表裏両面を細かいアルミニウム製のメッシュが覆い、これを蛇腹状にすることによってフィルターとしている。フィルターを覆っているアルミニウム製のメッシュは単にフィルター自体の強度を確保するという目的だけではなく、例えば虫などの大きなゴミをキャッチする効果も備えている。実に合理的である。加えて蛇腹状にする理由は表面積を稼ぐためで、表面積が広ければそれだけ集塵効果が増す。なかなかよく考えられているなぁと思う。洗浄と染み込ませるオイルは、K&N専用の洗浄剤とオイルを使用する。手順としてはまずスプレーの洗浄剤をフィルターにたっぷりと噴霧し、しばらく置いてから水で汚れを洗い流す。その後、十分に乾燥させた後にオイルを染み込ませていく。手順と言っても、やることはこれだけだ。ある時洗浄剤が無いために台所用洗剤を使用したことがあったのだが、汚れ落ちはあまりよくなかった。やはり専用の洗浄剤で汚れを落とすのが一番手っ取り早い。さらにこの時、汚れ落ちがあまりよくないために歯ブラシを使って汚れを落とそうとしたのだが、この歯ブラシの使用は厳禁である。ガーゼのようなフィルター素材を痛めてしまうのだ。K&Nのエアフィルターを使用する方は歯ブラシ使用が厳禁であることをぜひ覚えておいてもらいたい。

 今までK&Nのエアフィルターについて長々と説明した理由は、僕が強くおススメするエアフィルターだからである。巷間では湿式エアフィルターの使用はエアフロメーターに悪影響を及ぼすからやめたほうがいい、という話をよく耳にするが、K&Nのエアフィルターに限ってはそんなことはない。その証拠に冒頭でも述べたように僕はユーノス・ロードスターで十一万キロ以上も使用しているが、今までエアフロメーターの不具合など一度も起きたことは無い。レガシィでも六万キロほど使用しているが、同じように全くノートラブルである。ピアジオX9はキャブレターだが、キャブレターに使用していてももちろん不具合は一度も無い。

 ではなぜ湿式エアフィルターはエアフロメーターに悪影響を及ぼす、などという話をよく耳にするのか。その原因については僕なりに思いつくことがいくつかある。そのことを次回に詳しく述べていきたい。

 次回へ続く


 

軽量ホイールナットの注意点

2012-04-01 03:01:38 | クルマをいじる
 最近、ホイールとともにホイールナットをカラフルな物に取り換えてあるクルマがやたらと目立つ。その多くがジュラルミン製の軽量ホイールナットで、カラフルなアルマイト塗装が施されているものだ。なかにはゴールドのホイールに赤いホイールナット、なんていうド派手なコーディネートのクルマを見かけたりするが、とりあえずここではコーディネートの話は脇に置いておく。問題はそのジュラルミンがアルミニウム合金である、ということだ。

 ホイールの話のところでは合金の説明を省略したが、合金とは簡単に言うと複数の物質をブレンドしたものだ。そしてアルミニウム合金とはその名のとおり、アルミニウムを主成分とした合金のことである。その物質とは、例えばシリコン、鉄、銅、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、クロムなどであり、これらの配合の仕方によって何種類ものアルミニウム合金が存在している。
 このうち、ジュラルミンの主成分はアルミニウムと銅である。そしてジュラルミンよりもマグネシウムの比率が高いものを超ジュラルミンと呼び、銅よりも亜鉛の比率が高いものは超々ジュラルミンと呼ばれている。JIS規格ではジュラルミンがA2017、超ジュラルミンがA2024、超々ジュラルミンがA7075という番号が与えられている・・・
 僕が前回合金の説明を省略した理由がおわかりいただけたのではないかと思う。専門家ではないから、ざっくりとしか説明できない。しかも読んでいる方は面倒くさいと思う。

 さて、ここからホイールナットの話である。そもそもアルミニウムという金属は、鉄と比べると振動や衝撃に対して疲れやすい性質を持っている。金属に『疲れやすい』という表現は適切ではないかもしれないが、ともかくアルミニウムは振動や衝撃にさらされると強度が鉄よりも早く低下してしまうのである。このため、タイヤの脱着を頻繁に行うような方にはアルミニウム合金製のホイールナットは向いていない。インパクトレンチの使用など厳禁である。加えてアルミニウムは鉄と比べると熱膨張係数が二倍ときわめて高い。したがってアルミ合金製のホイールナットは熱膨張と収縮を繰り返し、それによってしだいに緩んでくる可能性がある。以上の点から、例えばサーキットにクルマと数種類のタイヤ・ホイールセットを持ち込み、それを交換しながら一日中走りこむ、といった場合にはアルミニウム合金製のホイールナットは使用しないほうがいいと思う。ごく普通に一般道を走るだけ、という方もアルミニウム合金製のホイールナットを使用しているのならば、定期的に点検、増し締めは行ったほうがいい。
 それでも、どうしてもアルミニウム合金のホイールナットが欲しい、というならジュラルミンよりも強度が高い超ジュラルミン製か超々ジュラルミン製のものをおススメしたい。特に超々ジュラルミンはアルミニウム合金中、最強レベルの強度を誇る。値段は高いが、安心を買いたければそれなりの出費は覚悟すべきだろう。たまにネットで『アルミ製軽量ホイールナット』というだけでそれ以外の詳しい説明が全く無いものが安く売られていたりするが、これなどは注意したほうがいい。最低でもジュラルミン製だと思いたいが、もし万が一これがただのアルミ削り出しホイールナットだったらとても怖い。命の保障ができないようなシロモノである。

 僕自身は軽量ホイールナットというものを使用した試しが無い。そもそもホイールナットの軽量化などたかが知れているから、安心感も含めて純正のスチールナットのほうがいい、と僕は考えている。それでも、あえて選ぶとすればジュラルミン製ではなくクロームモリブデン鋼のものを選ぶだろう。アルマイト塗装ではないために決してカラフルではないのだが、安心感は絶大だ。


ホイールの深い話 その2

2012-03-28 03:38:31 | クルマをいじる
 鋳造と鍛造の違いについては前回の説明でおおよそ理解していただけたのではないかと思う。そして理解したうえで、さらにもう少し話を進めてみたい。

 簡単に鋳造、鍛造と区別したが、実際にはそれぞれより細かく数種類の製法の違いがある。つまり鋳造ホイールの製法にも種類があり、鍛造ホイールの製法にも種類が存在するのである。例えば鍛造並みの製法と称する鋳造アルミホイールがあったり、さらには鋳造ホイールと鍛造ホイールの中間に位置するような製法のアルミホイールも存在し、区分としてはこれも一応鍛造扱いされていたりする。メーカーが製法の特許を取得している場合があるのでここから先の具体的な説明はあえて控えることにするが、様々な製法が存在したとしても、やはり僕は本来の純粋な鍛造アルミホイールを強くおススメする。それは鍛造が強靭で、なおかつ粘りのある性質をも兼ね備えているからである。
 例えば、不注意によって路肩の段差に勢いよく乗り上げてしまった、とする。こういった場合、マグネシウムホイールや前述したような鋳造と鍛造の中間のようなアルミホイールの場合は割れてしまう可能性が高い。やたらと軽量をアピールする競技用のホイールなども注意が必要だ。ところが純粋な鍛造アルミホイールの場合はその粘りのある性質のため、割れにくい。割れずに曲がるのである。この割れると曲がる、のとではその後の対応が大きく異なってくる。ホイールが割れれば、そのクルマはもちろん走行不能に陥る。もし交通量の多い道路でこういった事態に陥れば後続車に迷惑がかかってしまう。さらにこれが走行中だったらどうなるか。もし走行中に何らかの強い衝撃が加わりホイールが割れてしまったとしたら・・・それは命に関わる問題となってくる。これに対して、ただ曲がった場合はとりあえずは走行可能、という場合が多い。タイヤの空気さえ抜けなければ、そのまま自走して帰ることも可能だろう。
 この知識はとあるタイヤ館の店長に教えていただいた。プロドライブの鍛造アルミホイールを購入する時に、ここだけの話、と教えてくれたのである。僕もホイールには様々な製法があることは知っていたのだが、その詳細についてはあまり知らなかった。教えてくれたことに対して僕が感謝すると、鍛造アルミホイールは値段が高いが、高いだけの価値がある、とその店長は笑顔で言っていた。なるほど、確かにそのとおりである。
 ついでになるが、鍛造アルミホイールには1ピース、2ピースなどの種類があるが、できれば1ピースを選びたい。1ピースが一番軽量だからである。2ピースというのはディスク面とリムを別々に作り、その後に溶接やボルトなどによって接合している。こうする理由はデザインの自由度が高くなるためなのだが、当然1ピースよりは重くなる。値段も2ピースのほうが高い場合が多い。

 マフラーなどにお金をかけるくらいなら、そのぶんをホイールにつぎ込んだほうがいいと僕は思う。スポーツカー、例えばフェアレディZやRX-7などに重くてデカい鋳造アルミホイールを履かせて走っている人をたまに見かけるが、こういうクルマを見るとなんだか短距離のウサイン・ボルト選手が鉄下駄を履いて走っている姿を想像してしまう。
 最後に今までアルミニウム、マグネシウムと書き記してきたが、正確に表現するとそれぞれアルミニウム合金、マグネシウム合金とするのが正しい。ただ、合金まで書き記すと合金の説明までしなければならない、と感じたためにあえて省いた。
 なにとぞご容赦いただきたい。