一年ほど前のある日、僕は片側二車線の国道を走っていた。右側車線のほうがクルマの流れは順調だったのだが、僕はたまたま混雑している左側車線を走行。「いつもより混んでいるなぁ」などと思いながらのんびり走っていると、右側車線の後方からカッ、カッ、カッ、カッ、という不思議な音を立てながらクルマが迫って来た。
そのクルマは先代の日産エルグランドだった。エルグランドは右隣まで来たところで、その後しばらく僕のクルマと並走状態。今まで聞いたことのない音だったので、僕は音の発生源を捉えようとサイドウィンドウを開けてみた。エンジンか?それとも足回りか?そんなことを考え、なおかつ音を聞きながらチラッ、チラッ、とそのエルグランドを見ていると、思いもしなかった光景が目に飛び込んできた。なんと左フロントのブレーキキャリパーが外れそうになっていて、そのキャリパーがアルミホイールのスポーク部分に接触している音だったのである。
キャリパーは対向4ポットのブレンボだった。よく見るとキャリパーの下部が車両外側へとずれてホイールのスポーク部分と接触している。つまりキャリパーがディスクローターに対して斜めになっていたのである。とにかくドライバーに異常を知らせなきゃと思ったのだが、こういう肝心な時に再び右側車線のほうが流れが速くなってしまう。そのエルグランドは僕が右手を挙げて合図を送るよりも一足早く加速して行ってしまった。もっとも、あれほど派手に壊れていたら運転していた人は当然異常に気付いていただろうとは思うのだが。
僕が思うに、恐らくキャリパーサポートが破断していたのではないだろうか。キャリパーサポートとはキャリパーの台座のことで、これがなければ純正キャリパー用のハブナックルに社外品のキャリパーを取り付けることはできないのだが、このキャリパーサポートが強度不足のために破断してしまったのではないか、と思うのである。今でもあの光景は鮮明に覚えているのだが、キャリパー上部は固定されている様子だったのに対して、キャリパー下部はホイールと接触してプルプルと震えていた。このことから金属疲労によってキャリパーサポート下部が破断し、その結果キャリパー下部は宙ぶらりん状態になりプルプルと震えていたのではないか。そしてキャリパーサポート上部は破断した時の衝撃によって変形したために、取り付けられているキャリパー自体も斜めになってしまったのではないかと考えられるのである。ブレンボのキャリパー自体が変形したのか?とも考えてみたのだが、あのモノブロックの高剛性キャリパーが変形することはまず考えられない。
いったいどこのメーカーのキャリパーサポートなのだろうか。それともどこかの鉄工所にでも依頼して作ってもらったものなのか。あるいは自作した、という可能性もある。ブレンボの正規販売店の中には特注でキャリパーサポートを製作してくれるところもあるらしいが、そういった店のものではないだろう。正規販売店ならば間違っても破断するキャリパーサポートなど製作するはずがない。いずれにしても、このエルグランドのオーナーのかたは安易な改造をした結果、自分の命を危険にさらすことになってしまった。クルマの改造は、『一点豪華主義』では通用しないのである。
ブレーキをブレンボに改造したい気持ちは僕にもよく分かる。下駄代わりのバイクとして僕がピアジオX9を選んだ理由は、まさにそのブレーキがブレンボのトリプルディスクだったためだ。白状するが、ただ単にそれだけの理由でバイクを購入してしまうほど、僕はブランド好きなミーハー野郎である。実際に乗ってみるとブレンボのブレーキは本当に素晴らしい。その剛性感やタッチはまさに絶妙で、加速をしている時よりもブレーキをかけて減速している時のほうが楽しい、と感じるほどだ。ただしこれはキャリパーだけブレンボ、というだけでは実現できなかっただろうと思う。ピアジオX9はキャリパーだけでなくマスターシリンダーもブレンボ、さらにブレーキレバーもブレンボのマークがしっかりと刻印されている。そこまでとことんやらなければ、ブレンボの真価は十分に発揮できなかったのではないだろうか。
クルマの場合も全く同じである。キャリパーをブレンボにしたら、場合によってはディスクローターやマスターシリンダーも対応品に交換しなくてはならなくなることもあるだろう。キャリパーサポートなどは基本中の基本だ。ここがだめならすべてが台無しになる。クルマもバイクも、改造すると決めたらとことん突き詰めていかなければ効果と信頼性を発揮することはできない。そして突き詰めていくには金がかかるのである。それともう一つ。改造するなら信頼のおけるメーカーの高価な部品を選ぶこと。これは以前『アーシングについて』のところでも述べたが、安物の部品を買うとロクなことはない。安物買いの銭失い、ということわざがあるが、銭を失うだけならまだいい。最悪自分の命まで失ってしまったら、それこそ取り返しのつかないことになる。命が惜しいのなら、安物の部品を使用した安易な改造は慎むべきだ。
僕もレガシィのブレーキをブレンボにしたいなぁと思っているのだが、今のところ突き詰めていくだけのお金が無い。人生あきらめも肝心だと、つくづく思う。
そのクルマは先代の日産エルグランドだった。エルグランドは右隣まで来たところで、その後しばらく僕のクルマと並走状態。今まで聞いたことのない音だったので、僕は音の発生源を捉えようとサイドウィンドウを開けてみた。エンジンか?それとも足回りか?そんなことを考え、なおかつ音を聞きながらチラッ、チラッ、とそのエルグランドを見ていると、思いもしなかった光景が目に飛び込んできた。なんと左フロントのブレーキキャリパーが外れそうになっていて、そのキャリパーがアルミホイールのスポーク部分に接触している音だったのである。
キャリパーは対向4ポットのブレンボだった。よく見るとキャリパーの下部が車両外側へとずれてホイールのスポーク部分と接触している。つまりキャリパーがディスクローターに対して斜めになっていたのである。とにかくドライバーに異常を知らせなきゃと思ったのだが、こういう肝心な時に再び右側車線のほうが流れが速くなってしまう。そのエルグランドは僕が右手を挙げて合図を送るよりも一足早く加速して行ってしまった。もっとも、あれほど派手に壊れていたら運転していた人は当然異常に気付いていただろうとは思うのだが。
僕が思うに、恐らくキャリパーサポートが破断していたのではないだろうか。キャリパーサポートとはキャリパーの台座のことで、これがなければ純正キャリパー用のハブナックルに社外品のキャリパーを取り付けることはできないのだが、このキャリパーサポートが強度不足のために破断してしまったのではないか、と思うのである。今でもあの光景は鮮明に覚えているのだが、キャリパー上部は固定されている様子だったのに対して、キャリパー下部はホイールと接触してプルプルと震えていた。このことから金属疲労によってキャリパーサポート下部が破断し、その結果キャリパー下部は宙ぶらりん状態になりプルプルと震えていたのではないか。そしてキャリパーサポート上部は破断した時の衝撃によって変形したために、取り付けられているキャリパー自体も斜めになってしまったのではないかと考えられるのである。ブレンボのキャリパー自体が変形したのか?とも考えてみたのだが、あのモノブロックの高剛性キャリパーが変形することはまず考えられない。
いったいどこのメーカーのキャリパーサポートなのだろうか。それともどこかの鉄工所にでも依頼して作ってもらったものなのか。あるいは自作した、という可能性もある。ブレンボの正規販売店の中には特注でキャリパーサポートを製作してくれるところもあるらしいが、そういった店のものではないだろう。正規販売店ならば間違っても破断するキャリパーサポートなど製作するはずがない。いずれにしても、このエルグランドのオーナーのかたは安易な改造をした結果、自分の命を危険にさらすことになってしまった。クルマの改造は、『一点豪華主義』では通用しないのである。
ブレーキをブレンボに改造したい気持ちは僕にもよく分かる。下駄代わりのバイクとして僕がピアジオX9を選んだ理由は、まさにそのブレーキがブレンボのトリプルディスクだったためだ。白状するが、ただ単にそれだけの理由でバイクを購入してしまうほど、僕はブランド好きなミーハー野郎である。実際に乗ってみるとブレンボのブレーキは本当に素晴らしい。その剛性感やタッチはまさに絶妙で、加速をしている時よりもブレーキをかけて減速している時のほうが楽しい、と感じるほどだ。ただしこれはキャリパーだけブレンボ、というだけでは実現できなかっただろうと思う。ピアジオX9はキャリパーだけでなくマスターシリンダーもブレンボ、さらにブレーキレバーもブレンボのマークがしっかりと刻印されている。そこまでとことんやらなければ、ブレンボの真価は十分に発揮できなかったのではないだろうか。
クルマの場合も全く同じである。キャリパーをブレンボにしたら、場合によってはディスクローターやマスターシリンダーも対応品に交換しなくてはならなくなることもあるだろう。キャリパーサポートなどは基本中の基本だ。ここがだめならすべてが台無しになる。クルマもバイクも、改造すると決めたらとことん突き詰めていかなければ効果と信頼性を発揮することはできない。そして突き詰めていくには金がかかるのである。それともう一つ。改造するなら信頼のおけるメーカーの高価な部品を選ぶこと。これは以前『アーシングについて』のところでも述べたが、安物の部品を買うとロクなことはない。安物買いの銭失い、ということわざがあるが、銭を失うだけならまだいい。最悪自分の命まで失ってしまったら、それこそ取り返しのつかないことになる。命が惜しいのなら、安物の部品を使用した安易な改造は慎むべきだ。
僕もレガシィのブレーキをブレンボにしたいなぁと思っているのだが、今のところ突き詰めていくだけのお金が無い。人生あきらめも肝心だと、つくづく思う。