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自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

ブレーキングの練習をしよう

2012-06-17 18:05:37 | 運転術
 僕は幼少の頃からクルマが大好きだったのだが、同時にとてもクルマ酔いを起こしやすかった。家族でドライブに行くとすぐに気持ち悪くなる。父親がつねに大雑把な運転をしていた影響も大きかった。その運転はつねに右に左にとクルマは揺れ、アクセルはオン、オフを繰り返す、というもの。絶え間なく前後左右に揺すられ続けるのである。特に堪えたのがブレーキングで、停止するまでにブレーキのオン、オフを繰り返し、最後はカックンブレーキで停止する。僕はなぜもっと滑らかな運転ができないのか、といつも考えていた。いつも考えながら顔は真っ青、そして気持ち悪さのために手には脂汗を握りしめながら父親の運転するクルマに乗っていたのである。こんな過酷な状況を常に味わっていても、決してクルマが嫌いにはならなかったのだから大したものだと思う。たぶん「クルマは悪くない。とうちゃんの運転が悪いんだ!」とでも思っていたのだろう。

 以前、アクセルペダルはペダルと足裏の間に生卵があることをイメージして踏むようにする、と書いたことがある。生卵を割らないようなイメージでアクセル操作をすれば燃費にいい、と紹介したのだが、これはもともと燃費を考えてのことではなかった。どうすれば同乗者が快適に乗っていられるか、クルマ酔いをしないで済むのかを考えた末に見つけたひとつの方法だった。要するに、クルマ酔いをしない運転方法を考えたらたまたま燃費にもいいことに気付いた、ということだ。まさに一石二鳥、だったのである。
 そして、ここからはブレーキ操作について書いていこうと思う。これも元々はどうすればクルマ酔いをしないで済むのか考えた末に見つけた方法なのだが、こちらは一石二鳥どころか『一石三鳥』の利点があった。ぜひやってみてほしい。

 やってみてほしい、と偉そうな事を言ってもそのやり方は簡単である。例えば赤信号などでクルマを停止させる際に、あらかじめ目標停止地点を自分で設定して、その地点までブレーキペダルの踏み込み量を一定に保ちながら止まるのだ。目標停止地点は交差点の停止線であったり、前方で停止しているクルマの四メートルくらい後ろであったりと、そのつど前もって自分で決めればいい。さらに、踏み込み量を一定に保ちながら減速していき、停止する瞬間に踏み込み量を若干緩めてカックンブレーキの発生を防止する。このブレーキング方法を常に実践することができれば、同乗者は前後に揺すられることなく快適に乗っていることができるだろう。
 常に状況は変化するものだから、最初のうちは難しいかもしれない。軽めのブレーキ操作で止まれる時もあれば、強めの操作が必要な時もある。スピードの違いによっても操作は変化するし、さらには天候による路面状況の違いでも変わってくる。しかし、仮になかなかうまくできなかったとしても諦めずに練習することが重要だ。諦めずに練習すれば、『一石三鳥』と表現したように二羽目、三羽目の鳥が見えてくるようになる。つまり同乗者が快適、という以外にもブレーキング技能そのものが向上するためにふたつの利点が備わることになるのである。
 まず、危険回避能力が向上する。様々な状況下で日々ブレーキの踏み込み量を一定に保つ練習をしていれば、しだいにクルマが安定して止まれるスピードと距離の関係が自然と把握できるようになってくるのだ。把握できるようになれば、前走車が仮に事故を起こした場合に安定して止まれる車間距離がどれほどのものなのかがなんとなくわかるようになってくる。「前走車との距離はこれくらいあれば万が一の時も止まれる」、と想定することができるようになるのである。そしてさらに想定外の緊急事態、つまりこの距離では止まりきれない、と判断した場合には最初からブレーキだけではなくステアリング操作も併用して緊急事態を回避しようとする。要するにフルブレーキングで減速していき、しだいに「止まりきれない!」と判断するのではなく、最初から「この距離ではフルブレーキングだけでは回避できない!」と瞬時に判断できるようになるのである。判断が早ければ、その後の的確な動作が可能となるのは言うまでもない。それまでの経験が素早い条件反射を可能にする、と表現できるのではないだろうか。
 そして次に、このブレーキング方法を練習していれば峠やサーキットで速く走れるようになる。どこまでコーナーに突っ込めるかが判断できるようになるのである。特にサーキットでクルマを速く走らせるためにはブレーキングを可能な限り遅らせて、なおかつブレーキングを開始したらフロントタイヤがロックしないギリギリのところで踏み込み量を一定に保ちながら目標地点まで一気に減速することが重要になる。つまりこれはレベルこそ違うが、やっていることは前述した一般道でのブレーキング方法と全く同じなのだ。僕はたとえ同乗者が乗っていなくてもこのブレーキング方法を日々実践しているのだが、それは今でも峠やサーキットを速く走りたい、という思いが強くあるためである。日々練習。日々訓練。こうした思いでいつもクルマに乗っているから、運転していて眠くなることなどほとんど無い。

 早いものでクルマの免許を取得してから約二十年、これまでに自分のクルマで走った距離はおよそ四十万キロにもなる。四十万キロというのはおよそ地球十周分の距離に等しい。よくもまあこれだけ走ったものだと自分に呆れたりもするのだが、この間に起こしてしまった事故は一回だけである。その一回というのは走行中に左側の小道から一時停止を無視したクルマが出てきて僕のクルマの左側面に接触してきた、というもの。こればかりは防ぎようが無かったのだが、四十万キロを走ってこの事故だけで済んでいる理由はブレーキングの練習を日々行っているからだと思っている。クルマというのは走ることより止まることのほうが難しい。だから練習しなければならない、と思う。

 最後に、踏み込み量を一定にして通常のブレーキングをしていき、もし止まれそうになかったら必ずブレーキをさらに強く踏むこと。当たり前のことなのだが、この世の中どんな人がいるかわからない。「言われたようにブレーキングしたら、前のクルマに衝突してしまったじゃねーか!」などといちゃもんをつけられても困る。

燃費の悪さをクルマのせいにしすぎていないか

2012-01-11 03:20:47 | 運転術
 先日僕のクルマの前を真新しいプリウスαが走っていた。運転していたのは女性で、ルームミラーに映る表情から年齢は五十歳前後くらいの方だった。
 クルマのナンバーは1919。まさにイクイクッ!!というノリで発進時はリアを沈めて勢いよくスタートダッシュ。赤信号で止まる時は直前までアクセルを緩めず、ギリギリのところでガガーッとブレーキを踏んでこれまた勢いよく停止。僕はこの女性の後ろを三十分ほど走っていたのだが、その間ずっとこんな運転の仕方だった。プリウスαのカタログ燃費はJC08モードで26.2km/L。こんな運転の仕方でこのプリウスαの燃費はいったいどれくらいなのだろうか、と僕は思った。まさかクルマを降りて聞きに行くわけにもいかないのでわからないままなのだが、しかし想像がつくことがある。それはこの女性がまわりの人たちに「プリウスαって、思ったほど燃費が良くないわよ」と言っている姿である。
 プリウスαを買うということは、この女性はクルマの燃費について相当シビアなはずである。いや、燃費をまず第一に考えてプリウスαを購入したに違いない。にもかかわらず運転がこのありさまでは話にならない。僕はこの女性が乗っていたプリウスαが哀れに思えてならなかった。
 なんとも笑い話のようだが、しかし、これを他人事と思ってはいけない。多くの人は自分が乗ったクルマの燃費の悪さをそのクルマのせいにしている。自分の運転が未熟なのだと考える人はほとんどいない。いったい自分が日々どういう運転をしているのか、ということを顧みている人に出会ったことも非常に少ない。今やクルマの燃費はクルマ選びをするにあたって最重要課題になっているのだそうだ。ならばなぜ自分の運転技術も磨こうとはしないのか。それとも運転のしかたくらいでは燃費などそう変わるものではないと思っているのだろうか。だとしたらそれは大きな間違いである。運転のしかたでクルマの燃費というのは大きく変わるものなのだ。

 まずは発進時。ブレーキからアクセルペダルに足を乗せて静かにゆっくりと踏み込んで発進していく。ちょうど足裏とアクセルペダルの間に生卵があるとイメージすればいい。その生卵を割らないようなイメージで踏み込んでいくのである。よく発進時にアクセルペダルをガバッと、まるでスイッチのように踏みつける人がいるがこれはNG。先ほどのプリウスαの女性もまさにこれだが、クルマというのは発進時に多くのエネルギーを必要とする。ただでさえ多量のガソリンが必要な発進時に乱暴なアクセル操作をすれば燃費の悪化は避けられないのだ。ただ、あまりにゆっくりな加速もNG。低速走行の時間が長ければこれまたガソリンを無駄に消費してしまうし、後続車に迷惑をかけることにもなる。そのへんの加減は文章で表現するのが難しい。
 スムーズに加速し法定速度に達したらアクセルを一定に保つように心がける。前走車との車間距離は比較的広めに取り、スピードの微調整はアクセルオン、オフの微調整によって行う。トップギアのまま定速走行し、無駄にシフトダウンをしないように心がけることが大切だ。
 前走車の一台前、二台前を走っているクルマの状況も確認し、ブレーキランプが点灯したら早めにアクセルをオフにして惰性走行する。前方の信号機も同じように確認し、赤信号、もしくは赤信号になりそうな場合はやはり早めにアクセルをオフにして惰性走行に切り替える。この惰性走行の時間をいかに長く確保できるかということもこれまた燃費に大きく影響してくるのである。
 以上のような点に注意して運転すれば、確実にクルマの燃費は上昇する。余談だが、僕のレガシィは3リッターの6気筒でATという仕様ながらリッター9.8キロ走る。高速道路での燃費ではない。もちろん高速道路も走るが、市街地に住んでいてごく普通に買い物にも使用するし仕事の用事にも使う。決しておとなしく運転しているだけではなく、むしろ高速道路や峠に行けばここぞとばかりにエンジンをブン回す。そんな使用状況で一万キロ走行してのトータル燃費が9.8キロである。いつもだいたい同じような数値で、時には10キロの大台に乗ったこともあった。燃費計が付いているから分かるのだが決して壊れているわけではない。満タン法で計測しても同様の数値が出る。

 最新のクルマは燃費計だけではなく、アクセル操作のアドバイスをしてくれるクルマもある。アクセルを踏み込む量が多ければメーター内の照明が赤に変わり、燃費を考慮した運転をしていれば緑の照明になる、といったものだ。僕はこういった装備は自動車メーカーの技術者達のユーザーに対する抵抗、あるいは文句だと思っている。自分がラフな運転をしていながら、燃費が悪いのはいつもクルマのせいにしやがって、という積年の恨み、みたいなものがこの装備に込められているような気がしてならないのである。