僕は幼少の頃からクルマが大好きだったのだが、同時にとてもクルマ酔いを起こしやすかった。家族でドライブに行くとすぐに気持ち悪くなる。父親がつねに大雑把な運転をしていた影響も大きかった。その運転はつねに右に左にとクルマは揺れ、アクセルはオン、オフを繰り返す、というもの。絶え間なく前後左右に揺すられ続けるのである。特に堪えたのがブレーキングで、停止するまでにブレーキのオン、オフを繰り返し、最後はカックンブレーキで停止する。僕はなぜもっと滑らかな運転ができないのか、といつも考えていた。いつも考えながら顔は真っ青、そして気持ち悪さのために手には脂汗を握りしめながら父親の運転するクルマに乗っていたのである。こんな過酷な状況を常に味わっていても、決してクルマが嫌いにはならなかったのだから大したものだと思う。たぶん「クルマは悪くない。とうちゃんの運転が悪いんだ!」とでも思っていたのだろう。
以前、アクセルペダルはペダルと足裏の間に生卵があることをイメージして踏むようにする、と書いたことがある。生卵を割らないようなイメージでアクセル操作をすれば燃費にいい、と紹介したのだが、これはもともと燃費を考えてのことではなかった。どうすれば同乗者が快適に乗っていられるか、クルマ酔いをしないで済むのかを考えた末に見つけたひとつの方法だった。要するに、クルマ酔いをしない運転方法を考えたらたまたま燃費にもいいことに気付いた、ということだ。まさに一石二鳥、だったのである。
そして、ここからはブレーキ操作について書いていこうと思う。これも元々はどうすればクルマ酔いをしないで済むのか考えた末に見つけた方法なのだが、こちらは一石二鳥どころか『一石三鳥』の利点があった。ぜひやってみてほしい。
やってみてほしい、と偉そうな事を言ってもそのやり方は簡単である。例えば赤信号などでクルマを停止させる際に、あらかじめ目標停止地点を自分で設定して、その地点までブレーキペダルの踏み込み量を一定に保ちながら止まるのだ。目標停止地点は交差点の停止線であったり、前方で停止しているクルマの四メートルくらい後ろであったりと、そのつど前もって自分で決めればいい。さらに、踏み込み量を一定に保ちながら減速していき、停止する瞬間に踏み込み量を若干緩めてカックンブレーキの発生を防止する。このブレーキング方法を常に実践することができれば、同乗者は前後に揺すられることなく快適に乗っていることができるだろう。
常に状況は変化するものだから、最初のうちは難しいかもしれない。軽めのブレーキ操作で止まれる時もあれば、強めの操作が必要な時もある。スピードの違いによっても操作は変化するし、さらには天候による路面状況の違いでも変わってくる。しかし、仮になかなかうまくできなかったとしても諦めずに練習することが重要だ。諦めずに練習すれば、『一石三鳥』と表現したように二羽目、三羽目の鳥が見えてくるようになる。つまり同乗者が快適、という以外にもブレーキング技能そのものが向上するためにふたつの利点が備わることになるのである。
まず、危険回避能力が向上する。様々な状況下で日々ブレーキの踏み込み量を一定に保つ練習をしていれば、しだいにクルマが安定して止まれるスピードと距離の関係が自然と把握できるようになってくるのだ。把握できるようになれば、前走車が仮に事故を起こした場合に安定して止まれる車間距離がどれほどのものなのかがなんとなくわかるようになってくる。「前走車との距離はこれくらいあれば万が一の時も止まれる」、と想定することができるようになるのである。そしてさらに想定外の緊急事態、つまりこの距離では止まりきれない、と判断した場合には最初からブレーキだけではなくステアリング操作も併用して緊急事態を回避しようとする。要するにフルブレーキングで減速していき、しだいに「止まりきれない!」と判断するのではなく、最初から「この距離ではフルブレーキングだけでは回避できない!」と瞬時に判断できるようになるのである。判断が早ければ、その後の的確な動作が可能となるのは言うまでもない。それまでの経験が素早い条件反射を可能にする、と表現できるのではないだろうか。
そして次に、このブレーキング方法を練習していれば峠やサーキットで速く走れるようになる。どこまでコーナーに突っ込めるかが判断できるようになるのである。特にサーキットでクルマを速く走らせるためにはブレーキングを可能な限り遅らせて、なおかつブレーキングを開始したらフロントタイヤがロックしないギリギリのところで踏み込み量を一定に保ちながら目標地点まで一気に減速することが重要になる。つまりこれはレベルこそ違うが、やっていることは前述した一般道でのブレーキング方法と全く同じなのだ。僕はたとえ同乗者が乗っていなくてもこのブレーキング方法を日々実践しているのだが、それは今でも峠やサーキットを速く走りたい、という思いが強くあるためである。日々練習。日々訓練。こうした思いでいつもクルマに乗っているから、運転していて眠くなることなどほとんど無い。
早いものでクルマの免許を取得してから約二十年、これまでに自分のクルマで走った距離はおよそ四十万キロにもなる。四十万キロというのはおよそ地球十周分の距離に等しい。よくもまあこれだけ走ったものだと自分に呆れたりもするのだが、この間に起こしてしまった事故は一回だけである。その一回というのは走行中に左側の小道から一時停止を無視したクルマが出てきて僕のクルマの左側面に接触してきた、というもの。こればかりは防ぎようが無かったのだが、四十万キロを走ってこの事故だけで済んでいる理由はブレーキングの練習を日々行っているからだと思っている。クルマというのは走ることより止まることのほうが難しい。だから練習しなければならない、と思う。
最後に、踏み込み量を一定にして通常のブレーキングをしていき、もし止まれそうになかったら必ずブレーキをさらに強く踏むこと。当たり前のことなのだが、この世の中どんな人がいるかわからない。「言われたようにブレーキングしたら、前のクルマに衝突してしまったじゃねーか!」などといちゃもんをつけられても困る。
以前、アクセルペダルはペダルと足裏の間に生卵があることをイメージして踏むようにする、と書いたことがある。生卵を割らないようなイメージでアクセル操作をすれば燃費にいい、と紹介したのだが、これはもともと燃費を考えてのことではなかった。どうすれば同乗者が快適に乗っていられるか、クルマ酔いをしないで済むのかを考えた末に見つけたひとつの方法だった。要するに、クルマ酔いをしない運転方法を考えたらたまたま燃費にもいいことに気付いた、ということだ。まさに一石二鳥、だったのである。
そして、ここからはブレーキ操作について書いていこうと思う。これも元々はどうすればクルマ酔いをしないで済むのか考えた末に見つけた方法なのだが、こちらは一石二鳥どころか『一石三鳥』の利点があった。ぜひやってみてほしい。
やってみてほしい、と偉そうな事を言ってもそのやり方は簡単である。例えば赤信号などでクルマを停止させる際に、あらかじめ目標停止地点を自分で設定して、その地点までブレーキペダルの踏み込み量を一定に保ちながら止まるのだ。目標停止地点は交差点の停止線であったり、前方で停止しているクルマの四メートルくらい後ろであったりと、そのつど前もって自分で決めればいい。さらに、踏み込み量を一定に保ちながら減速していき、停止する瞬間に踏み込み量を若干緩めてカックンブレーキの発生を防止する。このブレーキング方法を常に実践することができれば、同乗者は前後に揺すられることなく快適に乗っていることができるだろう。
常に状況は変化するものだから、最初のうちは難しいかもしれない。軽めのブレーキ操作で止まれる時もあれば、強めの操作が必要な時もある。スピードの違いによっても操作は変化するし、さらには天候による路面状況の違いでも変わってくる。しかし、仮になかなかうまくできなかったとしても諦めずに練習することが重要だ。諦めずに練習すれば、『一石三鳥』と表現したように二羽目、三羽目の鳥が見えてくるようになる。つまり同乗者が快適、という以外にもブレーキング技能そのものが向上するためにふたつの利点が備わることになるのである。
まず、危険回避能力が向上する。様々な状況下で日々ブレーキの踏み込み量を一定に保つ練習をしていれば、しだいにクルマが安定して止まれるスピードと距離の関係が自然と把握できるようになってくるのだ。把握できるようになれば、前走車が仮に事故を起こした場合に安定して止まれる車間距離がどれほどのものなのかがなんとなくわかるようになってくる。「前走車との距離はこれくらいあれば万が一の時も止まれる」、と想定することができるようになるのである。そしてさらに想定外の緊急事態、つまりこの距離では止まりきれない、と判断した場合には最初からブレーキだけではなくステアリング操作も併用して緊急事態を回避しようとする。要するにフルブレーキングで減速していき、しだいに「止まりきれない!」と判断するのではなく、最初から「この距離ではフルブレーキングだけでは回避できない!」と瞬時に判断できるようになるのである。判断が早ければ、その後の的確な動作が可能となるのは言うまでもない。それまでの経験が素早い条件反射を可能にする、と表現できるのではないだろうか。
そして次に、このブレーキング方法を練習していれば峠やサーキットで速く走れるようになる。どこまでコーナーに突っ込めるかが判断できるようになるのである。特にサーキットでクルマを速く走らせるためにはブレーキングを可能な限り遅らせて、なおかつブレーキングを開始したらフロントタイヤがロックしないギリギリのところで踏み込み量を一定に保ちながら目標地点まで一気に減速することが重要になる。つまりこれはレベルこそ違うが、やっていることは前述した一般道でのブレーキング方法と全く同じなのだ。僕はたとえ同乗者が乗っていなくてもこのブレーキング方法を日々実践しているのだが、それは今でも峠やサーキットを速く走りたい、という思いが強くあるためである。日々練習。日々訓練。こうした思いでいつもクルマに乗っているから、運転していて眠くなることなどほとんど無い。
早いものでクルマの免許を取得してから約二十年、これまでに自分のクルマで走った距離はおよそ四十万キロにもなる。四十万キロというのはおよそ地球十周分の距離に等しい。よくもまあこれだけ走ったものだと自分に呆れたりもするのだが、この間に起こしてしまった事故は一回だけである。その一回というのは走行中に左側の小道から一時停止を無視したクルマが出てきて僕のクルマの左側面に接触してきた、というもの。こればかりは防ぎようが無かったのだが、四十万キロを走ってこの事故だけで済んでいる理由はブレーキングの練習を日々行っているからだと思っている。クルマというのは走ることより止まることのほうが難しい。だから練習しなければならない、と思う。
最後に、踏み込み量を一定にして通常のブレーキングをしていき、もし止まれそうになかったら必ずブレーキをさらに強く踏むこと。当たり前のことなのだが、この世の中どんな人がいるかわからない。「言われたようにブレーキングしたら、前のクルマに衝突してしまったじゃねーか!」などといちゃもんをつけられても困る。