動力性能、そしてサスペンションの性能については文句無し。まさに非の打ちどころがないほどの高性能を誇るこのレガシィワゴン2.0GT-DITなのだが、メカニカルな面でひとつだけ気になるところがある。それは電動パワーステアリングに対してである。
パワーステアリングには油圧式と電動式の二種類が存在する。油圧式パワーステアリングというのはエンジンの動力をファンベルトによってポンプに伝え、このポンプが発生させる油圧によって作動する、というもの。これに対して電動式というのはその名の通り電気モーターによって作動する。今までは油圧式が主流だったのだが、最近は電動式のほうが主流になりつつある。その理由は電動式であればエンジンの動力を使用しないために燃費が向上するからだ。
レガシィはこの電動パワーステアリングをBM/BR型から採用したのだが、そのステアリングフィールがなんとなくぎこちない。特にBM/BRの前期型はクイック感を出そうとするあまり、直進時のステアリングフィールがやや過敏過ぎる傾向があった。クルマの直進安定性は抜群なのだが、ステアリングをわずかに動かすだけで反応し過ぎるのである。スバルもさすがに「やりすぎた」と思ったらしく、このDITではいくぶんマイルドな味付けになっていたのだが、それでもまだ過敏さが残っている。ステアリングの中立付近はさらにもう少し鈍感なほうがいいと思う。そのほうがリラックスして走れる。率直に言って、これならサンバーの電動パワステのほうがはるかに自然なフィーリングだ。恐らく開発陣が『レガシィのパワステだから』と気負い過ぎてしまった結果なのだろう。
BM/BR型レガシィの最大の欠点はインテリアである。最高級グレードのこのDITでもそのデザインと質感は閉口してしまうほどレベルが低く、それは軽自動車に毛が生えた程度のものでしかない。スバルお得意の真っ黒地獄の色彩、「プラモデル?」と思うほどのぺキペキのプラスチック感丸出しの巨大なダッシュボードとドアトリム、カーボンには全く見えない意味不明なカーボン『調』パネル、合成皮革という名のビニール然としたシート生地などなど、いったい何を考えているのかと思うほどだ。やたらと派手な色彩のメーターパネルを取り付けて七難を隠そうとしているのだが、悲しいことに全く隠れていない。100万円のクルマならこれでも納得するが、350万円前後もするクルマにこのインテリアはないだろう。
僕はこのインテリアを見て、つくづくBP前期型のレガシィを買って良かったなぁと思ってしまった。前モデルであるBL/BPレガシィの前期型は、スバルとしては驚くほどのインテリアの質感を誇っていたのである。ソフトパッドに覆われた優しいデザインのダッシュボードと立体的な形状のドアトリム、緩やかにラウンドした心地良いデザインのセンターコンソール、そしてオプションのマッキントッシュオーディオを選ぶと黒光りをした本物のアルミパネルが贅沢に奢られていた。さらにBピラーの内側、つまり前席用シートベルトが取り付けられている部分もていねいに布張り、という念の入れようである。レガシィのインテリアは見違えるほど上質になったなぁ、と感動したのだが、どうやらそれは一時の夢だったようだ。BL/BP後期型からカクカクしたデザインのうえにプラモデル感漂う『バリ』の残るセンターコンソール、蓋を廃止した安っぽいドリンクホルダー、プラスチック一体成型の安直なBピラー内側のパネル、などというふうにインテリアの質感はしだいに劣化しはじめ、そして現在のBM/BR型では『レガシィ伝統』の安っぽいインテリアが見事に完全復活してしまった。
僕は東京の築地で本場の江戸前アナゴのにぎり寿司を食べたことがある。大きなアナゴは口に入れるとフワッとしていて、しかもとろけるような食感だった。あの絶品の江戸前アナゴを味わってしまったら、とてもじゃないがそこらへんのアナゴなど食べる気にはなれない。一度でも上質を味わってしまったら、もう元には戻れないのである。突拍子もない例えで申し訳ないが、レガシィのインテリアもこれと全く同じだ。一度は上質になりながら、また安っぽいインテリアに戻る。そんなことをされて納得できるわけがない。それならばいっそのこと、上質を体験しないままのほうがまだ納得できる。江戸前アナゴを食べることがなければ、そこらへんのアナゴでも満足できたのである。スバルは人間の心理というものを全く理解できていない。
レガシィワゴン2.0GT-DITの走りのレベル、上質感は文句無く一流のものである。しかし残念ながらインテリアは三流だ。もしかしたら走りの面でコストをかけすぎてインテリアにはコストがかけられなかったのかもしれないが、あえて同情はしない。なぜならBL/BP前期型では走りもインテリアもかなりのレベルを実現できていたではないか。コストを抑えて商売上手になるのは結構なことだが、あまりにやりすぎるとファンからソッポを向かれることになる。
インテリアなど気にしない、という方にはこのレガシィワゴン2.0GT-DITは自信を持っておススメできるクルマである。走りのレベルだけを考えると、350万円という値段はかなり安い。お買い得である。しかしインテリアも重要だと考える方にはどうしようかと迷ってしまう。要は、安っぽいインテリアを「しかたがない・・・」と割り切ることができるかどうか。ここが問題になる。
一度ディーラーに行ってご自分の目でじっくりと見て判断されたほうがいい。見て、そしてぜひ試乗してみて欲しいと思う。インテリアはともかく、その走りは試乗する価値があるクルマである。
パワーステアリングには油圧式と電動式の二種類が存在する。油圧式パワーステアリングというのはエンジンの動力をファンベルトによってポンプに伝え、このポンプが発生させる油圧によって作動する、というもの。これに対して電動式というのはその名の通り電気モーターによって作動する。今までは油圧式が主流だったのだが、最近は電動式のほうが主流になりつつある。その理由は電動式であればエンジンの動力を使用しないために燃費が向上するからだ。
レガシィはこの電動パワーステアリングをBM/BR型から採用したのだが、そのステアリングフィールがなんとなくぎこちない。特にBM/BRの前期型はクイック感を出そうとするあまり、直進時のステアリングフィールがやや過敏過ぎる傾向があった。クルマの直進安定性は抜群なのだが、ステアリングをわずかに動かすだけで反応し過ぎるのである。スバルもさすがに「やりすぎた」と思ったらしく、このDITではいくぶんマイルドな味付けになっていたのだが、それでもまだ過敏さが残っている。ステアリングの中立付近はさらにもう少し鈍感なほうがいいと思う。そのほうがリラックスして走れる。率直に言って、これならサンバーの電動パワステのほうがはるかに自然なフィーリングだ。恐らく開発陣が『レガシィのパワステだから』と気負い過ぎてしまった結果なのだろう。
BM/BR型レガシィの最大の欠点はインテリアである。最高級グレードのこのDITでもそのデザインと質感は閉口してしまうほどレベルが低く、それは軽自動車に毛が生えた程度のものでしかない。スバルお得意の真っ黒地獄の色彩、「プラモデル?」と思うほどのぺキペキのプラスチック感丸出しの巨大なダッシュボードとドアトリム、カーボンには全く見えない意味不明なカーボン『調』パネル、合成皮革という名のビニール然としたシート生地などなど、いったい何を考えているのかと思うほどだ。やたらと派手な色彩のメーターパネルを取り付けて七難を隠そうとしているのだが、悲しいことに全く隠れていない。100万円のクルマならこれでも納得するが、350万円前後もするクルマにこのインテリアはないだろう。
僕はこのインテリアを見て、つくづくBP前期型のレガシィを買って良かったなぁと思ってしまった。前モデルであるBL/BPレガシィの前期型は、スバルとしては驚くほどのインテリアの質感を誇っていたのである。ソフトパッドに覆われた優しいデザインのダッシュボードと立体的な形状のドアトリム、緩やかにラウンドした心地良いデザインのセンターコンソール、そしてオプションのマッキントッシュオーディオを選ぶと黒光りをした本物のアルミパネルが贅沢に奢られていた。さらにBピラーの内側、つまり前席用シートベルトが取り付けられている部分もていねいに布張り、という念の入れようである。レガシィのインテリアは見違えるほど上質になったなぁ、と感動したのだが、どうやらそれは一時の夢だったようだ。BL/BP後期型からカクカクしたデザインのうえにプラモデル感漂う『バリ』の残るセンターコンソール、蓋を廃止した安っぽいドリンクホルダー、プラスチック一体成型の安直なBピラー内側のパネル、などというふうにインテリアの質感はしだいに劣化しはじめ、そして現在のBM/BR型では『レガシィ伝統』の安っぽいインテリアが見事に完全復活してしまった。
僕は東京の築地で本場の江戸前アナゴのにぎり寿司を食べたことがある。大きなアナゴは口に入れるとフワッとしていて、しかもとろけるような食感だった。あの絶品の江戸前アナゴを味わってしまったら、とてもじゃないがそこらへんのアナゴなど食べる気にはなれない。一度でも上質を味わってしまったら、もう元には戻れないのである。突拍子もない例えで申し訳ないが、レガシィのインテリアもこれと全く同じだ。一度は上質になりながら、また安っぽいインテリアに戻る。そんなことをされて納得できるわけがない。それならばいっそのこと、上質を体験しないままのほうがまだ納得できる。江戸前アナゴを食べることがなければ、そこらへんのアナゴでも満足できたのである。スバルは人間の心理というものを全く理解できていない。
レガシィワゴン2.0GT-DITの走りのレベル、上質感は文句無く一流のものである。しかし残念ながらインテリアは三流だ。もしかしたら走りの面でコストをかけすぎてインテリアにはコストがかけられなかったのかもしれないが、あえて同情はしない。なぜならBL/BP前期型では走りもインテリアもかなりのレベルを実現できていたではないか。コストを抑えて商売上手になるのは結構なことだが、あまりにやりすぎるとファンからソッポを向かれることになる。
インテリアなど気にしない、という方にはこのレガシィワゴン2.0GT-DITは自信を持っておススメできるクルマである。走りのレベルだけを考えると、350万円という値段はかなり安い。お買い得である。しかしインテリアも重要だと考える方にはどうしようかと迷ってしまう。要は、安っぽいインテリアを「しかたがない・・・」と割り切ることができるかどうか。ここが問題になる。
一度ディーラーに行ってご自分の目でじっくりと見て判断されたほうがいい。見て、そしてぜひ試乗してみて欲しいと思う。インテリアはともかく、その走りは試乗する価値があるクルマである。