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自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

ホイールの深い話 その1

2012-03-25 03:54:11 | クルマをいじる
 クルマ用語でバネ下重量、という言葉を聞いたことがあるだろうか。これは読んで字のごとくバネから下の重量、つまりサスペンションにぶら下がっている部分の重量のことをいう。具体的にはブレーキ、サスペンションアーム、タイヤ、そしてホイールなどの重量がこのバネ下重量に当てはまる。そしてこのバネ下重量を軽量化することは乗り心地やハンドリング、加速、制動、燃費など実に広範囲の性能が向上するのである。これは諸説あるのだが、バネ下重量の軽量化はバネ上重量ではその数倍から数十倍の軽量化に匹敵する効果があると言われている。つまりバネ下重量を1kg軽量化すると、最低でもバネ上重量では2kg軽量化した効果があるということだ。クルマに大きな好影響をもたらすのである。
 最初から堅苦しい解説になってしまったのだが、簡単に言うと例えば重さ2kgのジャケットを着て走るのと、片足1kg、両足で合計2kgのスニーカーを履いて走るのとではどちらが楽か、ということだ。2kgのジャケットを着て走るぶんにはたいして苦にならないが、片足1kgのスニーカーを両足に履いて走るのは相当ツラい。それは4kgのジャケットを着て走るのと同等か、それ以上の労力であることが容易に想像できると思う。着地する時の衝撃はあるし、コーナーを曲がるのも大変だ。坂を登るのも下るのもしんどいし、体力も早く消耗してしまう。人間もクルマも同じ理屈なのである。
 しかし残念なことに我々ユーザーはブレーキ、サスペンションアーム、タイヤについてはそう簡単に軽量化することはできない。したがってバネ下重量を軽量化しようと思えば、それはホイールの軽量化という点にすべて集約される。人間にたとえれば足の骨や筋肉は軽量化できないが、スニーカーなら軽量化できる、という理屈とまったく同じである。

 ホイールの材質は主にスチール、アルミニウム、マグネシウムがある。このなかで最も重いものがスチールだ。軽量化という観点から見れば、当然スチールホイールは候補から外れる。残るはアルミとマグネシウムということになるのだが、この両者ではマグネシウムのほうが軽い。したがって軽量化に一番効果があるのはマグネシウムホイールである。しかし、残念ながらマグネシウムホイールをおすすめします、という単純な話にはならない。マグネシウムという金属には重大な欠点が存在するのである。
 まずマグネシウムという金属はとても腐食しやすい。このためマグネシウムホイールは入念に塗装を施して酸素や水から守らなければならないのだが、飛び石などで塗装が剥がれてしまったりすると、あっという間にそこから腐食が進んでいってしまう。さらに縁石にヒットしてリムにガリ傷を作ろうものなら最悪の事態だ。ただでさえ日本という国は湿度が高いのである。マグネシウムホイールとはそれほどデリケートなものなのだ。
 加えてマグネシウムは密度が1.74g/㎤ととても柔らかい性質を持っている。つまり密度が低いために軽く、そして柔らかい(脆い)のである。ちなみにアルミニウムの密度は2.7g/㎤だ。このため、マグネシウムホイールは基本的に衝撃に対する強度が弱い。サーキットのような平滑な場所ならいいが、凸凹のある一般道には不向きなのである。たまに「マグネシウムホイールを履いて走行していたらホイールナット周辺を残してホイールが完全に割れて外れてしまい、タイヤとともに転がって行ってしまった」なんていう恐ろしい話を聞くことがあるが、これなどはまさにマグネシウムホイールならではの珍事である。もっとも、マグネシウムホイールは鍛造も含めてその製造技術も進化しているだろうから、中には強度的にも満足のいくものがあるかも知れない。前述で基本的に、と記した理由もこうしたことを考慮してのものだが、それでもやはりマグネシウムホイールは特殊なホイールである、と認識しておいて間違いはない。余談だが、BMWのマグネシウムエンジンブロックも、そのインナーにはアルミが使われている。

 最後に残ったアルミホイールだが、その製造方法も認識しておく必要がある。大まかに分けて鋳造と鍛造とがあり、これは先ほどのマグネシウムホイールにもほぼ共通している製造方法だ。簡単に説明すると、鋳造は金属を溶かして型に流し込んで成型したもの。そして鍛造とは金属に圧力をかけて成型したものである。
 圧力をかけて成型すれば、当然密度が向上して強度が増す。分かりやすい例が刀鍛冶だ。鉄を熱して金槌でたたくその作業こそがまさに鍛造、である。そして鍛造で作られたホイールは強度が飛躍的に向上するため、今度は余分な贅肉をそぎ落とし軽量化することが可能となるのである。よく鍛造≒軽量化だと単純に認識されている場合があるのだが、これは間違いだ。鍛造によって成型された金属は密度が向上しているため、同じ形であれば当然鋳造よりも重量は重くなる。だがあくまでも強度が増しているために鋳造では実現できないほどの贅肉のそぎ落としが可能となるため、その結果として鋳造よりも軽量化ができる、と解釈するのが正しい。
 これは短大の金属工芸科の教授から直接教わった話である。その教授は東京芸大卒。このため、僕の作った作品に対してすべて徹底的にダメ出ししてきた教授でもあった。僕は木工芸科の生徒だったのだがそんなことはお構いなし。
 腹も立ったけど、でもいい人だった。
 
 次回へ続く

アーシングについて

2012-01-22 03:05:59 | クルマをいじる
 アーシングとは簡単に言うとマイナス極の配線を増やし、電気抵抗を減少させることである。
 もう少し詳しく説明すると、まずクルマのバッテリーのマイナス配線はボディに直接取り付けられている。つまりクルマにおける電気の流れはバッテリーのプラスからエンジンやその他様々な電装品へと流れ、最後はボディを伝ってバッテリーのマイナスへと帰ってくることになる。クルマのボディというのはいわば巨大なマイナス配線の役割も担っているわけだ。ところがこれでは抵抗が多すぎる、あるいは電気の流れがスムーズにバッテリーへと帰れない、という考えのもとにアーシングは登場してきた。マイナスの配線を増やしてバッテリーのマイナス端子へ直接接続してやれば電気の流れはよりスムーズになる、という理屈である。
 このアーシングに関しては昔から効果がある、ない、という議論があった。そんなことで効果なんてあるわけない、という人や、中にはブラシーボ効果、という難しい言葉を使って完全否定する人もいるほどだ。ブラシーボ効果とは暗示効果、という意味である。つまり効果があると思い込んでいる人は、実際に効果がないものであってもそれを効果があるように感じてしまう、というような意味だ。
 難しい言葉を使う人のことを信用してしまいがちなのは世の常だが、僕はアーシングには効果がある場合が多いと感じている。そして、効果が無い場合はいくつかの原因が考えられるのである。

 僕は裕福でもないのに現在クルマ二台、バイクが二台という生活を送っている。そしてこの合計四台のすべてにアーシングを施しているが、四台とも効果があった(バイク二台のうちの一台は以前乗っていたKLE250のこと)。逆に以前下駄代わりに使用していたワゴンRにはまったく効果なし。ちなみにレガシィのアーシングキットは以前も紹介したとおりシムス製、ユーノス・ロードスターがスプリットファイア製、バイク二台とワゴンRは自作のアーシングである。
 効果があった四台に共通しているのは低速トルクのアップだった。それはブラシーボ効果などというレベルではなくはっきりと体感できるもので、ユーノス・ロードスターではマフラーを交換した時以上の効果が感じられた。さらに劇的だったのがレガシィである。低速トルクがアップしただけではなく低速でのエンジン音にも変化が現れ、おまけに2000回転付近で発生するかすかなノッキングまで見事に改善されたのである。

 この2000回転付近でのノッキングは本当にごく微細なもので、注意して聞き耳を立てていなければわからないようなレベルのものだった。エンジンが軽負荷時、つまりエアコンがオフの時に発生することが多く、おまけに外気温や標高の高低にはいっさい関係なかった。いったん気になり始めるとやたらと気になってしょうがない。とりあえずディーラーに持って行ってみたのだが、
 「ノッキングしているのがよく分かりません」
と言われる始末。しまいにはガソリンを調べられ、
 「ちゃんとハイオクガソリンが入っていました」
と笑顔で報告された。そもそも微細なノッキングを気にするような人間が油種を間違えたりするはずない。
 ノッキングの主たる原因は点火時期が進角しすぎている、混合気が薄い、あるいはカーボンの蓄積によって燃焼室内の圧縮が必要以上に高くなってしまっている、などが考えられる。しかし2000回転付近だけ突然点火時期が進角することなどありえないし、当時はまだ大量のカーボンが蓄積するほど走行距離は伸びていない。怪しいのは混合気の濃度だ、と僕は考えた。現代はクルマの燃費にとてもシビアだから、ガソリンをカツカツの薄さで燃やしていることは容易に想像がつく。
 でも2000回転付近だけ薄いのか?そんなことがありえるか?と考えたのだが、とりあえずアーシングは低速域で効果があることを思い出し、ダメもとで取り付けてみた。
 そして、取り付けてみて大正解。ノッキングは見事に解消したのである。
 具体的に何が原因だったのか、はっきりとはわからないままだ。しかし僕は可変バルブリフトの影響があるのではないかと思っている。レガシィのEZ30エンジンの可変バルブリフトは低速域では片側の吸気バルブだけが小さくリフトし、リフトが大きいもう片方の吸気バルブから主に混合気を送り込んで燃焼室内にスワールを発生させる、という凝ったシステムを持っている。この二本のバルブリフトが同調した時、スワールの発生が止まり、混合気の吸入スピードが落ち、それによって混合気の濃度にムラが生じていたのではないか。そのバルブリフトが同調する回転数がまさに2000回転付近だったのではないかと思うのだ。そしてアーシングをすることによってインジェクターの噴出力が上がり、それによって混合気の濃度のムラが無くなり、結果としてノッキングは解消されたのかもしれないと僕は考えている。
 ややこしい話になってしまったが、とにかくEZ30エンジンにアーシングは必需品であると言える。

 さて、効果が全く無かったワゴンRについてである。先ほども述べたようにこちらは自作のアーシングだった。キットはホームセンターで購入した汎用品。デスビ、インジェクター、ヘッドカバー、リレー、などひととおりの箇所にアーシングを施したのだが、悲しいほど効果は無し。これによって僕は、アーシングというのはきちんとテスターなどで計測しながら詳細にアーシングポイントを決めていかなければだめなのだということがわかった。シムス製のアーシングもスプリットファイア製のアーシングもけっこうな値段がするのだが、それは綿密なテストを重ねて商品化したがゆえの値段なのである。シムスのものはなんとサスペンションのアッパーマウント部分、なんていう一見不可思議なところにアーシングポイントが設定されているが、これなどはまさにその証拠であると言えよう。そういう意味では、汎用品でテキトーにやって効果があった僕の二台のバイクは奇跡に近かったのだ。

 アーシングキットは信頼できる有名なメーカーのものを選ぶこと。これが鉄則である。そしてもし自分のクルマのアーシングキットがどの有名メーカーにも無かったとしたら、それはそのクルマがアーシングをしても効果がない、という意味だと捉えていい。それから、間違っても見知らぬメーカーの安い商品には手を出さないように。効果が出ないことが容易に想像できる。
 

僕のレガシィ3.0R

2012-01-18 12:20:54 | クルマをいじる
 3リッターレガシィいじる、という検索語で僕のブログを訪問してくれた方がいらっしゃいました。どんないじりかたをしている人がいるのかいろいろ検索されていたのだと思います。
 確かにレガシィと言えばターボ、という感じで3リッターは少数派ですから情報量は非常に少ないものです。それどころか以前2ちゃんねるでは3リッター6速MT仕様のレガシィのことを『変態車』と紹介されていました・・・。
 このブログで自分のクルマの仕様についてあれこれ語ることは避けようと思っていたのですが、もし検索された方のお役に立てるのであれば、僭越ながら紹介させていただきます。クルマいじりに興味の無い方、レガシィが嫌いという方、ごめんなさい。

 外観ではまずホイールはプロドライブのGC010Eの17インチにしています。鍛造でとても軽く、タイヤ館の店長も驚いていました。ホイールはルックス重視なら18インチですが、フットワークと乗り心地のバランスを求めるなら17インチがおすすめです。17インチのほうが断然軽いですから。タイヤが18インチと比べて安いというのも魅力です。
 フロントにはSTIの黒いリップスポイラーを付けています。子供の頃に黒いフロントスポイラーを付けたTS仕様の310サニーを見て以来、ボディカラーが何色であってもフロントスポイラーは黒、と決めています。ユーノス・ロードスターのほうも黒いリップスポイラーが付いています。
 マフラーは湾岸にしています。このマフラーは内部にグラスウールを使用していないので、経年劣化によって音がしだいにうるさくなることがありません。
 タワーバーとスプリングはSTI。ショックはずっと純正ビルシュタインだったのですが、最近同じ純正ビルシュタインでもD型2.0GTスペックB用のものに替えました。STIのスプリングとともに乗り心地は当然固くはなりますが、ホイールが軽い分、D型のスペックB18インチ仕様よりはフラットな乗り心地です。しかも僕のC型3.0Rのビルシュタインよりもステアリングレスポンスがアップ。もしC型3.0Rに乗られている方がいたら、この流用チューンはおすすめです。BP/BLのEZ30のエンジン重量は154キロで、EJ20ターボのインタークーラー込の重量とほぼ同じですので重量面でもなんの問題もありません。もちろんアッパーマウントもD型スペックB用のものにしています。
 エアフィルターはK&Nの湿式タイプにしています。形は純正交換タイプ。レガシィのフィルターはまるで砂漠を走ることでも想定しているのか、と思うくらい分厚い物が付いています。砂漠を走ることが無ければ(あるわけないか)、フィルター交換はおすすめ。フィルターは純正交換タイプとキノコ型タイプとがありますが、3リッターエンジンは発熱量がすごいので純正交換タイプのほうがいいと思います。
 その他にはブレーキパッドがエンドレス、HKSのVACを取り付けてスピードリミッターをカット、エンジンルームにはシムスのアーシングキットを取り付けています。アーシングは3リッターレガシィには必需品とも言えるもの。2000回転弱で発生するかすかなノッキングが見事に解消されます。その詳細はアーシングの話とともに後日詳しく説明したいと思います。
 
 以上が僕のレガシィです。新車で購入してもう九万キロを走っていますが、いたって元気。反対に僕は最近クルマやバイクをいじるとすぐに腰が痛くなります・・・