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自動車学

クルマを楽しみ、考え、問題を提起する

湿式エアクリーナーの誤解を解く その2

2012-05-09 04:10:51 | クルマをいじる
 湿式エアクリーナーはエアフロメーター(エアフロ)に悪影響を及ぼす、という意見がある。エアフロという部品はエンジンが吸入する空気の量を計測する装置で、コンピューターがエンジン内部に噴射する燃料の量を判断する決め手のひとつを担っている。このエアフロのセンサー部分に湿式エアクリーナーのオイルが付着してしまい、誤作動を起こしてしまう、と言うのだ。しかし前回にも述べたように僕はK&Nの湿式エアクリーナーを長らく愛用しているのだが、今までそんなトラブルに見舞われたことは一度も無い。エアフロセンサーにオイルが付着していたことなど一度も無いのである。ではなぜこういう意見があるのだろうか。このことについて、僕なりに考え、解説していきたいと思う。

 まず湿式エアクリーナー自体の材質と、これに使用するオイルについて着目していきたい。K&Nの材質はコットンなのだが、他の湿式タイプはたいていスポンジ製かポリウレタン製、またはこのふたつを組み合わせたものとなっている。先ほど述べたような問題は、このスポンジやポリウレタンという素材に原因があるのではないだろうか。コットンであればその繊維一本一本にオイルが染み込んでいくが、スポンジやウレタンという素材では繊維レベルでオイルは染み込んでいかない。微細な穴にオイルが入り込んでいるだけである。入り込んでいるだけのオイルはエンジンの吸気によってしだいにエンジン側へと簡単に移動し、最後はあっけなく吸い込まれて行くことが容易に想像できる。コットンのTシャツとポリエステルのTシャツを想像すれば話が早い。ポリエステル製の吸汗速乾Tシャツというのは汗が繊維に染み込まない。染み込まずに繊維の微細な隙間に入り込んでいるだけだからこそ、早く乾くのである。これに対してコットンのTシャツというのはなかなか乾きにくい。これは汗が繊維に染み込んでしまっているからだ。湿式エアクリーナーも全く同じ理屈である。コットンという素材はTシャツには都合が悪いこともあるかもしれないが、湿式エアクリーナーにはまことに都合がいい、ということになるだろう。
 次にオイルである。K&Nのオイルは粘度が非常に低いもので、もはやオイルというより水に近い。このことから、エンジンが吸い込んでもエアフロセンサーにオイルがベタッ、と張り付き、そこにとどまることができる可能性は非常に低いのである。だが、これが粘度の高いオイルであればエアフロセンサーに張り付いてしまうことは十分に考えられる。さらに、張り付いた状態でエンジンをあまり回すことがなければ、空気の吸入速度が遅いためにエンジンに吸い込まれる可能性も低い。その結果、エアフロセンサーに張り付いたオイルはそこにとどまり続け、しだいに固着していくことが考えられる。粘度の高いオイルを使用する湿式エアクリーナーの場合は注意が必要となってくるだろう。
 湿式エアクリーナーにオイルを含ませ過ぎ、という可能性もあるように思う。例えばスポンジ製の湿式エアクリーナーが純正装着されているバイクなどは、その説明書に『湿式エアクリーナーのオイルは固く絞ってから使用してください』などと書かれてある。湿式とは言ってもオイルはほんのお湿り程度でいいのである。しかしこれが煮物の高野豆腐のようにオイルを含ませていたりすれば、当然問題は発生してくると思う。湿式エアクリーナーはエアフロに悪影響を及ぼすと言っている方が、はたしてどれほどの量のオイルをエアクリーナーに含ませていたのか。残念ながらその程度については、ご本人にしかわからない。

 ただ、ベーン式(フラップ式)のエアフロは確かにトラブルが発生する可能性がある。このベーン式というのは空気通路に設けられた扉の開く角度によって吸入する空気の量を計測する、というものだ。吸入量が少なければ扉は少し開き、多ければ大きく開く。かなり単純な仕掛けでひと昔前に主流だったエアフロなのだが、この扉にオイルが付着する可能性はかなり高い。なにせ扉だから、オイルが付着する的が大きいのである。このため、ベーン式のエアフロを採用しているクルマはK&Nも含めたすべての湿式エアクリーナーの使用を控えたほうがいいだろう。
 現在ではベーン式は抵抗が大きい、ということでホットワイヤー(白金線)式が主流となっている。このホットワイヤー式というのは白金線に電流を流して発熱させ、その温度の冷え具合で吸気量を計測するというもの。僕のユーノス・ロードスターやレガシィもこれである。ちなみに同じユーノス・ロードスターでもNA6CEのほうはベーン式のエアフロになっている。過渡期のクルマはこのユーノス・ロードスターのように前期と後期でエアフロの方式が違っている場合があるので注意が必要だ。

 使用した湿式エアクリーナーでトラブルが発生したからといって、単純にすべての湿式エアクリーナーを全否定するのは間違えている。今までせっせと説明してきたように、トラブルの要因というのは実はこれほどあるのだ。単純に湿式エアクリーナーというだけでK&Nまで否定されてしまっては、K&Nがあまりに哀れである。