あっぱれ日本車 / されど日本車

世界に誇る日本のクルマの素晴らしさを感じて欲しーな

トヨタ車のデザインはどこまで良くできるの?

2014-03-10 | トヨタ
  トヨタ車は去年あたりから、デザインに高い付加価値を見出すクルマ作りを上級ラインナップを中心に初めました。この流れが続けば、来年にFMCが予定されているマークXにも大きな期待が持てるでしょう。早くもFF&ダウンサイジングターボ化などの情報が飛び交っていますが、日本では不人気のパサートにそっくりなFF車をそのまま出してくるとは考えにくいです。

  トヨタがレクサスISやMCでフェイスリフトしたSAIなどで見せた、中型セダンのデザインを見ると、改めてトヨタデザインの長所が感じられます。日産やホンダの中型車デザインと比べて、大きくは変わらないのですがトヨタのデザインは意図的に個性を出す部分を抑えて、おとなしくまとめる傾向があります。おそらく不必要な個性は年月の経過とともにデザインの劣化を早めるという考えがあるからでしょう。さすがにISの前身車種であるアルティツァのデザインが今も十分通用するというつもりはありませんが、同時期の日産プリメーラや5ナンバー時代のレガシィ、E46BMW3と比べれば、劣化が少ないと言えます。

  トヨタデザインの見事なところは一定の上級モデルに関しては、アヴァンギャルドさをできるだけ排除して、「抑えて」作る点だと思います。それはまさに日本を代表する自動車メーカーとしての「自覚」が成せる技だと思います。口の悪い評論家は、トヨタはたとえ他のメーカーよりも少し劣っていても、最強の営業ネットワークが十分に仕事をして、台数をしっかり出すなどと罵りますが、長い目で見てみるとトヨタのデザインが他の日本メーカーに劣っていることはないと思います、唯一の例外といえるデザイン番長の「広島系メーカー」以外には負けてないです・・・。

  クルマに先進性とアヴァンギャルドなデザインを要求する「口うるさい」ユーザーは、トヨタ車は個性が薄いと繰り返し主張します。しかし彼らが称賛するクルマもまた大概はトヨタデザインよりも早く朽ち果てていきます。トヨタが確立を急ぐレクサスはアウディを手本にしていると言われています。今のところ評論家の論調は9:1くらいの割合でアウディのデザインが勝っていると断じているようですが、あと10年経ったときにはこの状況はおそらく逆転しているでしょう。2004年の段階ではレクサスはアウディの足元にも及ばなかってですが、10年経って現在のレクサスはアウディを大きく上回る魅力を獲得しているといえます。

  2000年代中盤、アウディデザインが欧州・日本・北米で猛威をふるった「第1期」といえる和田智コンセプトは、自動車史に燦々と輝く金字塔ですが、さすがに10年以上が経過した現在では終焉を迎えつつあります。去年のフランクフルトモーターショーでアウディは次世代の中型車コンセプトを複数出品していますが、まもなく全ラインナップに渡る「第2期」のモデルが次々と登場するようです。先陣を切るのはもちろん、「第1期」を強烈に印象づけたアウディTTで、今年いよいよ3代目が発売されます。

  アウディの第1期は自動車デザインの一つの理想型として、小賢しい意匠を施した日本の高級モデルを貶めるときに、多くのモータージャーナリストが「伝家の宝刀」とばかりに引き合いに出して来ました。もちろん日産出身の日本人デザイナーが作ったと知った上で、堂々と欧州車の正当性を主張する図太さがプロのモータージャーナリストの手口なのですが・・・。

  トヨタがアウディにレクサスの手本を求めた理由はおそらく、アウディのデザインがトヨタのテイストに合っていると感じたからだと思います。いやそうではなく、アウディが具現化した「シンプルな美しさ」を本来の身上としていたのが、歴代のトヨタデザインでありその系譜を受け継いだ結果アウディが成功を収めたと表現するのが自然な気がします。和田智というデザイナーはその著書で日産での仕事のやりにくさを語っていましたが、トヨタに入っていればまた違う展開になったのかもしれません。もちろん彼の才能にブランドの命運を任せたアウディの英断と同じことがトヨタにできるとも思えませんが・・・。

  トヨタデザインが世界へ与えた影響について良く言われるのが、カリーナEDが世界初の4ドアクーペだ!といった言い分だったりしますが、もっと解りやすい例があります。ポルシェがマツダRX-7FC3Sの酷いパクリを「プアマンズ・ポルシェ」と辛辣に批判したことでしられるポルシェ944は、スープラの前身車種として知られるトヨタセリカXX(1981年デビュー)のデザインにそもそも酷似しています。「リッチマン・トヨタ」?

  一時期のトヨタは最終デザインの役員審査が非常に難関で、過激なデザインのクルマが全て不合格になってしまい、デザインがどんどん低調になり評判も悪く、多くのデザイナーがその裏でいじけていたそうです。近年はモリゾー社長のトップダウンでその制度が改められ「高級車を中心に」魅力デザインあるデザインへと回帰しているのだとか・・・。ただしあくまで「高級車」の話です。

  ただ経営戦略上、日本市場でのトヨタの圧倒的なシェアを考えると、北米版カローラのような良いデザインの低価格車はなかなか出せないようです。そのままトヨタの既存の高級モデルのシェアを喰うからです。同様にトヨタ86もレクサスISも絶妙なバランスの中で「部分的な魅力」を売りにしたデザインを施し、それに応じた分だけ車両価格を引き上げています。86もISも高いような安いようなつかみ所のない価格帯になっていますよね・・・。今後トヨタはレクサスブランドの上級車種でマセラティのようなスポーティなラグジュアリーセダンとクーペを企画しているようですが、そこでは「全開」の魅力を誇るデザインが登場するようです。

  400万円以上のクルマで「ちょっと本気」出して、800万円以上のクルマで「全力投球」するという戦略は、そもそも間違ってはいないのですが、トヨタブランドの最大の特徴である、敷居の低さや親しみを感じるイメージを長年にわたって日本で振りまいてきた伝統はなかなか変えられるものではないのも事実です。ドイツプレミアムブランドみたいなクルマを突如として作り始めて、「かっこいいけどやや高いかな」という感想を持ってしまうトヨタ車には一抹の寂しさを感じてしまいます。

2 コメント

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Unknown (Unknown)
2014-09-17 20:24:43
10年経って現在のレクサスはアウディを大きく上回る魅力を獲得しているといえます

いや、あんた以外誰もそう思ってないよ。
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Unknown (Unknown)
2014-10-08 16:37:21
>10年経って現在のレクサスはアウディを大きく上回る魅力を獲得しているといえます

>いや、あんた以外誰もそう思ってないよ。

いくらあんたが外車マンセーの勝手な押し付け論理を言ったって現実は販売台数に現れている。国内の他製品ではアップルがスマホ分野で断トツのトップを駆け出し、タブレットでは台湾のASUSと1.2を取っているのに、ダイソンやケルヒャーがそれぞれの得意分野でかなり受け入れられているのに、車には関税がゼロのこの自由市場で外車は4.5%前後のシェアしか取れてない。これが全てを物語っています。
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