CAFE PACIS

ユルゲンが「カフェで政治が行なわれているんだ」って言う。じゃあ、カフェで平和やるか。

ウクライナ大統領選挙 その2 若者を組織しろ

2004-12-03 15:58:20 | ニュース@海外
 ウクライナ大統領選、やり直しで合意したようです。今回の報道で目に付くのは、与党のデモ参加者はじいさん・ばあさんが多く、野党側のデモは若者が多いということ。与党側はダサ・イモイメージなのにたいし、野党側は非常におしゃれ。オレンジ(特産品)色の旗もったり、ポンチョを着ているので、こうした動きは「オレンジ革命」とも呼ばれているようです。

 まあ色は何色でもいいんですが、このオレンジ青年集団はどうやらあのアメリカ合衆国の政党から支援されているらしい。(ガーディアン11月29日)。

 この青年運動はPORA(ウクライナ語でhigh time。「もうとっくに~すべき時」、「潮時」といった意味)といって、ガーディアンによれば、米の民主・共和両党から、資金のみならず、市民動員・選挙運動のやり方を非常に具体的に伝授してもらっていて、この動員方は、「洗練され見事に考え抜かれた、西側スタイルのブランド化、大衆をターゲットにしたマーケット手法」を駆使している。(支援者は具体的には:民主党のNational Democratic Institute、共和党のInternational Republican Institute、 米国務省のUSAid、NGOでいえばFreedom House、ジョージ・ソロスのOpen Society Institute)

 この選挙戦略は、2000年のセルビアでミロシェビッチが打倒されたときに初めておこなわれ、その後、ベラルーシでルカシェンコ打倒(めざすがこれは失敗)、今年1月グルジアでシュワルナゼを打倒(このときシュワルナゼは「ソロスにやられた」と発言(サーカシヴィリ勝利))、今度はウクライナでクチマ大統領(=ヤヌコビッチ)打倒と続いています。

 で、若者動員に伝授されているとされる技を具体的に見ると、

①運動にキャッチーな一言のネーミングをし(反ミロシェビッチ学生運動はOtpor=「抵抗」、グルジアではKhama、ベラルーシではZubr、ウクライナはPora.)、語呂・リズムがいいチャント(「シュプレヒコーール」じゃなくて)も作る。
②一目で分かるかっこいいシンボルマークを作る(セルビアでは「白黒のこぶし」、ウクライナは、クチマ政権の残りの日数を示す「時計」)。
③ステッカー、スプレーペイント、インターネット、メールを駆使する。
④政権に抑圧されるのではないかという国民の不安をなくすことで動員を促進し、権力者を怒らせるために、ジョーク、お笑い寸劇などを展開する。

 この手法、支援側・主体若者組織の両方が「非暴力と不服従」運動と呼んでいて、いまや、「あまりにも巧妙化し、よその国の選挙を(自分の支持する候補者に)勝たせる定型にまで完成している」とのこと。また、両方が強調するのは、それが「普通の国民が」「草の根で」運動すること、だそうです。まあ、テクニックとしては、日本の運動も大いに学ぶところがあると思いますが。

 こうして焦点階層のひとつである若者(女性層もターゲット)を組織し、戦略練り上げのため選挙データを集積・分析するために、世論調査員、プロのコンサルタントが派遣されていますが、気になるのは、選挙の「出口調査員」の訓練ないし人員派遣というやつです。今回の大統領選、主にヤヌコビッチの勢力圏である東部で大規模な不正があったことが指摘されています、が、「この選挙は不正があった。なぜなら出口調査では野党候補がリードしていたからだ」という論陣をまっさきに張るのが、その後選挙やり直し抵抗運動を展開する上で、決定的に重要な戦略だ、というのです。

 そのほかにも大事な戦略は、対立候補者の絞込み。そのために、上記したような国で、アメリカは、諸野党のリーダーを集め、話し合いをし、候補者統一を成功させてきました。

こうした支援活動に全体に使われたお金は、公式発表では、99年10月のミロシェビッチ打倒には4100万ドル、今回ウクライナでは1400万ドルと言われています。

 もちろん、外部支援だけで、10万人も集まって連日あれだけの運動を続けられるわけではありません。同時に、変革をもとめる真の要求が国民にあることも確かです。

 今後、こうした選挙支援の対象とされている国、つまりまだ市場経済、「民主主義」派じゃない政権の国で選挙が予定されています。モルドバ、中央アジア諸国など。注目しましょう。




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おまけ

ウクライナの青年運動PORAのサイトに行ってみました。

 すごいよくできています。英語もしっかり充実。よく聞かれる質問コーナーを見ると、
Q.PORAとは?
A.「PORAとは、無党派の市民運動による情報、教育キャンペーンで、2004年大統領選(ウクライナの)の公正な選挙をおこなうことをめざしている」。
Q.「だれがPORAを創ったのですか?」
A.「多数の青年・学生組織が主導したもので、母体は、80年代後半90年代前半にかけ、ウクライナおよび中欧・東欧諸国それぞれの国で民主化を目指し創られた市民運動です。」
それでは気になるQ6.「資金源は?」
A.「協力関係にあるNGOからの寄付金、ウクライナおよび国際組織、慈善募金から成り立ってます」。
最後に、これも気になるQ.「政党との関係はありますか?」
A.「いいえ。PORAキャンペーンは独立した市民運動で、どの候補者も政治勢力も応援していません」。なぜならQ.「PORAの目的は?」、「選挙・候補者の客観的情報をすべての国民に提供すること/選挙に参加する重要性を有権者に広めること/選挙の合法性を確保し、不正行為をさせないこと」にあるから、ということだそうです。

 でもこれだと現実とは違わない?だって、抵抗勢力は確実にユーシェンコ支持でしょう。資金に関してはいろいろ探しても、「協力関係NGO」の名前がでてこないので、いまメールで問い合わせ中。

PORA、OTPORZUBR のサイトを見て共通して受ける印象は、民主化、独裁政権を倒す、公正な選挙といったスローガンはあるのだが、情勢をどう見るのかとか、どういう風に変革ができるのか、という分析があまりない、という点。誰これが不当逮捕された!とかいう記事は結構あるんだが(なぜ不当なのかという説明が無かったり。)選挙運動組織だからしょうがないのかな。

 資金スポンサー・テクニック提供先である、アメリカの民主・共和両党の機関のウェブサイトに行って見ました。

 まず、民主党のNational Democratic Institute for International Affaires(以下NDI)のサイト 

  NDIの目的は、世界の市場経済・民主化をすすめることだそうです。

「NDIは長年、ウクライナ政治の民主化を支援してきた。1992年以来、民主主義をめざす政党、政府関係者、市民活動家に援助プログラムを提供してきた。ウクライナにおけるNDIのプログラムは、米国開発局(USAid。アメリカの政府機関)、全米民主主義基金(the National Endowment for Democracy)...の財政支援により進められている」

 「市民組織」支援の項目をみると、「NDIは、1994年に設立された無党派選挙監視グループであるウクライナ有権者委員会(the Committee of Voters of Ukraine, CVU)に助言・援助をおこなってきた。」

「おもに青年が主体となっている、こうした(NDI支援をうけた市民)組織は、数百ときには数千規模で、投票所内で、投票および投票集計手続きをモニターする市民をリクルートし、訓練し、配備する活動をおこなってきた」。

ようするに、民主党は(ウクライナを含む先の4カ国などの)中欧・東欧諸国の民主化と市場経済への移行を目的に、選挙も含め、細かく・具体的に、人・金両方の支援をおこなってきており、この主体は青年である、ということらしいですね。

(そこでまた疑問。なんで民主党は、ほかの国の「選挙の公正」にはそんなに真剣なんか?自分の国では、2000年は言わずもがな、今回も、選挙前から大規模かつ組織的な不正行為の事実がはっきりしていたのに、民主党はあっさり敗北を認めたくせに。(現在、オハイオ州はじめ選挙結果を決定的とした州の選挙区で、不正をめぐる訴訟が起こっており、ケリーは一部訴訟を支援)。主流マスコミも、自分の国の不正はほとんど無視するくせに、ほかの国の不正は大いに書き立てるのはなぜ。)

では次、共和党International Republican Institute (以下IRI)のサイト。(「無党派機関」だそうですが。)
 
IRIは、「国民の責任、公職者向けの立法プロセス、政党組織のメカニズム、選挙運動といった問題で人材を養成するプログラム」を提供している。

2003年2月には、(一説によるとロシア秘密機関に毒を盛られて)顔が腫れてしまう前のユーシェンコがワシントンを訪問して、ディック・チェイニー副大統領、リーチャード・アーミテージ国務省次官補、国会議員、IRIの役員などに会っています。「これらの会合で、ユーシェンコは、具体的にどのようにアメリカがウクライナの発展を支援できるかという問題を取り上げ、アメリカの支援継続が必要であることを強調した。」露骨...。

 ウクライナの選挙支援としては、 「IRIは92年よりウクライナの民主化を支援しており、政党、女性、青年組織と協力してきた。」「2003年、2004年には、14の州で数千人の政党活動家を育成し、政党の法律家の育成も行ってきた。」「投票日の2ヶ月まえから、9つの州に全面的事前調査をするためにスタッフを派遣。」中央政府の介入、選挙法順守、偏った報道の問題を阻止するために活動している、ということ。
 
 民主・共和両方に、ウクライナ青年組織に資金を提供しているか、現在問い合わせ中。

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1 コメント

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ダイオキシン (akiyo)
2004-12-14 15:11:07
いやー、与党陣営によるユシチェンコ毒殺未遂も怖い。ダイオキシンって、あんなに人相変わるくらい毒性あるのねー。全然違う分野で、食品に入ってるダイオキシンの恐ろしさを痛感させられましたわ。
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