テレビのツボ

テレビ番組の中の面白試聴ポイント(ツボ)を探し出し、それらを面白おかしく紹介するブログですε=┏(; ̄▽ ̄)┛

ファンタジー大河『江』

2011-04-04 15:23:08 | 大河ドラマ
いよいよ本編の始まり始まり~♪♪
何から書き始めようか迷ったが、やはり「国民的ドラマ」と異名を取る?大河ドラマからスタートしたいと思う。カテゴリーを見て頂ければ分かるのだが、大河ドラマだけ唯一、単体で分類している(他はジャンル別に分類)。まぁ良くも悪くも注目される番組ゆえ別格扱いしてるわけだ。


さて、今年の大河『江』についてだが、個別のレビューより、まず総論から…。一言で言えば「ファンタジー大河」! どこがツボかって? ある意味、至るところツボだらけ。こういうのをドツボに嵌まるというのかも…。
少女マンガかライトノベルをそのまま実写化したようやフワフワ感。史実無視(創作?)もここまで来れば大したもの。あまりの甘ったるさに、熱心な大河ファンからは失望落胆の声が挙がっているが、新境地を開拓したと思えば、むしろ素晴らしい!と言えなくもない。

ストーリー展開からしてツッコミどころ満載だが、主要キャストの人物像がこれまた凄い。歴史上の偉人をここまでコミカルに描ける脚本には感心してしまう。
まともな人物像のキャストも居るには居たが、そういうキャストはドラマの序盤でことごとく死んでしまった。浅井長政、織田信長、明智光秀、柴田勝家、お市の方などなど。辛うじて北大路欣也演じる徳川家康が、ベテランらしい重厚な味わいを醸し出してはいるが、あとは演技がオーバー過ぎてコントみたい。
まずは羽柴秀吉。あれでは単なる下卑たエロ親父だ。あんな品格のかけらもない人物が、人望を集め天下統一の大事業を成し遂げたとは到底思えない。千宗易(利休)はまともに描かれてるけど、秀吉と絡むと漫才にしか見えない。

秀吉「利休よ…」

利休「はっ!」

秀吉「…狭くねぇ? この部屋」

利休「超狭いっす~!」

↑津川雅彦が出てるマンション経営のCMと完全にイメージが重なってしまう。ボケあり、ノリツッコミあり、こんな面白い秀吉と利休のツーショットなんて前代未聞だな。

鈴木保奈美のお市の方は当たり役だと思う。鈴木に関しては現代劇しか見たことがなかったので、どうなることかと思ってたが、意外なほど内掛け姿が板に付いていてビックリ! ああいう勝ち気なお姫様役はぴったりだなあと感嘆させられた。イメージとしては、かつての名作昼ドラ『華の嵐』で主演を努めていた高木美保に近い。高木は誇り高い男爵令嬢を演じ「無礼者!」と怒鳴り付けてビンタを張るシーンが話題を呼んだ。お市の方はさすがに暴力を振るったりはしなかったが、高飛車な物言いで男たちをひれ伏させる姿など高木そっくり。ドMの男性なら思わず「女王様!」と叫んでしまいそうなド迫力(゜o゜;;

その鈴木に怒鳴られて震え上がっていたのが石田三成。三成は秀吉に対しても、ひたすら卑屈にへいこらするばかりで切れ者の片鱗すら窺えない。あんな小心者が豊臣家の屋台骨を支え、秀吉亡きあと大大名の家康に天下分け目の決戦を仕掛けるなんて、どう考えても無理があり過ぎ。突然、君子豹変するような設定にでもなっているのかな⁈

「さて、いよいよトンデモ設定ダントツのキャストを取り上げる時がやって参りました」と、松平アナ風の口上でご登場願うのは、皆さん予想通り?の「江」その人! 主演の上野樹里こそ、紛れもなくツボ中のツボだ。何がとんでもないかって、まず年齢設定が滅茶苦茶。史実の江は、本能寺の変の時点でようやく9歳。ところが、上野樹里はその3年前、江6歳の時から演じている。23歳の女優が6歳の幼女を演じるのは何故?と誰しも不思議に思う筈。が、見てるうちに脚本家の意図が何とな~く分かってきた。もし史実に沿って幼い子役が演じたりしたらおかしな光景になってしまう。江は信長や秀吉、光秀といった武将たちと対等に渡り合っているのだ。あのやり取りを幼女がやったら「名探偵コナン」みたいになってしまうこと間違いナシ。実写では不自然極まる。で、誰かいないかぁぁ~、大人でありながら幼女を演じても不自然に見えない女優は~~、あっ! いた! のだめ女優が! てなわけで…天然女優と噂される上野に白羽の矢が立ったのじゃなかろうか? 確かに、江を幼女時代から演じられる成人女優と
いえば、上野が最適かもしれない。そう、上野の天然キャラあってこその江の脚本だったのだ! では何故、そんな無理な脚本にしたのか? それは、史実の江が一次資料で登場するのは、秀吉の天下が定まったあとだから。そこから江の物語が本格的にスタートしたのでは、前半の美味しい部分(信長や光秀との絡み)が完全になくなってしまう。史実に忠実ではドラマとしてつまらなくなる。上野に年齢不詳の江を演じさせ、思いっきりファンタジー仕立てに物語を膨らませたのは、必然と言うかやむを得ない選択だったと言えそうだ。
ではでは、そもそも、それほど無理に無理を重ねないと成り立たないような歴史上の人物を主役に据えたのはどうして?との疑問が生じてくる。

理由はやはり、大河ドラマにふさわしい人物は既に大半が登場し尽くしてるから、ではないかなあ…
知名度・人気ともに高く、馴染みのある時代に活躍し、ドラマチックな展開もあり、なんていう人物像・時代背景・ドラマ性の三拍子が完璧に揃った「王道パターン」は、もう見飽きるほど見てる。新規開拓の余地は殆どない。信長・秀吉・家康の戦国三英傑然り、源平合戦然り、忠臣蔵然り、幕末~維新に至る動乱劇然り…。これらの時代を描きながら新味を出そうと思ったら、劇中の人物像を通説とは全く異なる形にしたり(『敦姫』の徳川家定)、一次資料の殆どない人物を主役に据え、創作で埋め尽くしたり(『黄金の日日』の呂宋助左衛門)するような手段しかなさそう。さもなければ、異聞や外伝を基にしたキワものっぽい脚本にするか…。
王道パターン以外を描こうとしたらなお難しい。今の時点でまだ取り上げられていない人物や時代は、よほど馴染みがないか、よほどタブー視されているかのどちらかだから。前者だと視聴率が期待できないし、後者だと批判を覚悟しなくてはならない。例えば、天皇家が割れた南北朝時代を描いた『太平記』や、強度の言語障害を持った家重を真っ正面から描いた『八代将軍吉宗』なんかは後者の典型。こういったタブーに挑戦できるのは、スポンサーのないNHKの特権だねぇ! 天皇家絡みのタブーといえば他には、孫の嫁を寝取って子供を産ませた白河上皇の逸話なんかもある。小説『華麗なる一族』のモチーフともなっている。ドロドロの愛憎渦巻く王朝劇なんて見応えあると思うけどドラマ化は無理なのかな? 後は、我が子を皇位に就けようと画策した、との説がある足利義満も大河には全く登場していない。

白河上皇や足利義満が登場しないのは、単に人気がないからなのか、タブーに配慮したためか、それは分からない。どちらにせよ、NHKなら臆せず挑戦してほしいものだ。最近の傾向を見ていると、批判覚悟の本格路線は『坂の上の雲』や『TAROの塔』などのサブに任せ、大河はひたすら最大公約数的で無難な路線を歩んでいるように見えてちょっと残念。岡本太郎の台詞じゃないけど「二つの道があれば、私はより危険な方、破滅する恐れのある方を選ぶ」というくらいの気概を持ってほしいけどね( ̄ー ̄)