Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

4/7(土)望月哲也/シューベルト「美しき水車小屋の娘」全曲をノーブルなテノールと朴 葵姫のギター伴奏で

2018年04月07日 23時30分00秒 | クラシックコンサート
望月哲也プロデュース
シューベルト三大歌曲シリーズ 〜第2回「美しき水車小屋の娘」


2018年4月7日(土)17:00〜 Hakuju Hall 指定席 B列 14番 5,000円
テノール:望月哲也
ギター:朴 葵姫
【曲目】
シューベルト:歌曲集「美しき水車小屋の娘」D.795 Die schöne Müllerin 全曲
       第1曲 さすらい Der Wandern
       第2曲 どこへ? Wohin?
       第3曲 止まれ! Halt!
       第4曲 小川に寄せる感謝の言葉 Danksagung an den Bach
       第5曲 仕事を終えた宵の集いで Am Feierabend
       第6曲 知りたがる男 Der Neugierige
       第7曲 いらだち Ungeduld
       第8曲 朝の挨拶 Morgengruß
       第9曲 水車職人の花 Des Müllers Blumen
       第10曲 涙の雨 Tränenregen
       第11曲 僕のものだ! Mein!
       第12曲 休息 Pause
       第13曲 緑色のリュートのリボンを持って Mit dem grünen Lautenbande
       第14曲 狩人 Der Jäger
       第15曲 嫉妬と誇り Eifersucht und Stolz
       第16曲 好きな色 Die liebe Farbe
       第17曲 邪悪な色 Die böse Farbe
       第18曲 枯れた花 Trockne Blumen
       第19曲 粉ひき職人と小川 Der Müller und der Bach
       第20曲 小川の子守歌 Des Baches Wiegenlied
《アンコール》
 シューベルト:歌曲集「美しき水車小屋の娘」より第10曲「涙の雨」

 テノール歌手の望月哲也さんが、自身のプロデュースによる実施しているシューベルトの三大歌曲のツィクルスの第2回は、歌曲集「美しき水車小屋の娘」の全曲演奏会。このシリーズでは、ギター伴奏を採用している。初回の「冬の旅」では福田進一さんとの共演(2017年2月18日/Hakuju Hall)、今回は朴 葵姫さんが伴奏を務める。もちろん本来はピアノ伴奏だが、コンラート・ラゴスニックが編曲したギター伴奏版というのがあり(ペーター・シュライアーの録音がある)、今回もそれを使用したと思われる(正式なアナウンスはないので正確なところは分からない)。

 望月さんはこの曲が大好きで、若い頃からこの曲を歌うことを目標のひとつにしてきたのだという。また、あえて変わったところのギター伴奏で三大歌曲のツィクルスを行うという辺りにも、この曲に対する思い入れの強さを感じる。他の人がやっていないことに敢えて挑戦するという姿勢なのである。

 演奏は、もちろん20曲を休憩なしで続けて行われた。Hakuju Hallではたびたびギターのコンサートが催されているが、ここは音響に優れているだけでなく、300席というホールのサイズが、音量の小さいギターにはギリギリのサイズということだろう。今日のようにギターの伴奏ということになれば、歌手も大きな声量の必要もなく、ゆとりのある発声でじっくりと歌うことができる。そのことが、望月さんの歌唱にいつも以上の透明感を生み出すことになった。もともと、彼の声質は強いものではないし、端正でクリーンなイメージが強い。オペラ歌手としても二期会のトップ・クラスの人気を誇るテノールのひとりだが、そのキレイな声質故に、オペラの役柄によっては、強いキャラクタを発揮しずらいことも時々感じていた。しかし今日のようなリートの場合は、作品に深く没頭して、描かれている詩の世界観を音楽的に表現するのには、むしろ彼ほど適している人もいない。望月さんのドイツ・リートは一級品である。
 独特ではあるが透明感の高い声質で、ノーブルに切々と語りかけるように歌う。とくに強く押し出すこともなく、しっとりとしで情感豊かな語り口。それがとても心地よく聞こえるのである。ドイツ語の発音も、幽玄な響きが文学的というか、詩的というか、とても美しい。深く秘めた情熱を持ちつつ、理性的で抑制的な感性が見事に表現されている。

 一方、朴 葵姫さんのギターも素敵だ。ギターとえばスペインやラテン系のイメージが圧倒的な楽器だが、スペインを愛しつつもウィーンにも留学した経験のある朴さんのギターは、時として深く沈静したヨーロッパの音楽の古典的な美しさを端正に描き出す。とくに分散和音(アルベッジョ)がバロックのチェンバロにように、宮廷音楽のような優雅さを醸し出す。いや、サロン音楽の雰囲気なのだろう。耳に心地よく、鎮静効果さえ感じさせる。スペインのギターとは対極的な世界。しかも70分に及ぶ大曲をひとりのギタリストが休みなく弾くというのも普段はあまりないことだろう。見事な演奏であった。

 望月さんによる「シューベルト三大歌曲シリーズ」の第3回は「白鳥の歌」D.957 で、来年2019年4月に開催予定とのことである。

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