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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/23(土)東京ニューシティ管定期/三舩優子のベートーヴェンP協3番と現田茂夫のブラームス交響曲第3番

2016年01月23日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
東京ニューシティ管弦楽団/第103回定期演奏会
~ふたりのBシリーズ 第3回~


2016年1月23日(土)14:00~ 東京芸術劇場コンサートホール A席 1階 A列 17番 5,000円
指 揮:現田茂夫
ピアノ:三舩優子*
管弦楽:東京ニューシティ管弦楽団
コンサートマスター:執行恒宏
【曲目】
ベートーヴェン:「レオノーレ」序曲 第3番 作品72b
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
ブラームス:交響曲 第3番 ヘ長調 作品90

 東京ニューシティ管弦楽団の第103回定期演奏会を聴く。今シーズン(2015/2016)は定期会員になっているのだが、年間6回しかない定期演奏会の内、今日が5回目なのに聴くのは3回目。けっこう良いプログラムが組まれていたのだが、何しろ毎回土曜日の午後なので、他のコンサートと重なったり、所用があったりして、すべてに来られないのが現状だ。今日はピアノの三舩優子さんがゲスト・ソリストとして登場するので、優先的にスケジュールを確保しておいた次第。三舩さんはこれまであまり聴いたことがなかったので、この機会を逃さないようにしたのである。
 指揮者も今回は客演で、現田茂夫さん。昔から知ってはいるし、過去には2012年3月に錦織健プロデュース・オペラ「セビリアの理髪師」などを聴いているが、あまり数多く聴いていないので、具体的にはイメージしにくい指揮者だ。
 東京ニューシティ管の今シーズンには、「ふたりのBシリーズ」という企画が組まれていて、ベートーヴェンとブラームスを採り上げるというもの。4回のコンサートでブラームスの交響曲を全曲演奏する。第3回の今日は第3番である。そして今日のプログラムには「3つの第3番」という隠しテーマもあって、演奏される曲目はすべて「第3番」である。もっともこれに深い意味は求められないと思うが・・・・。

 1曲目はベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番。ベートーヴェンが作曲した唯一のオペラ『フィデリオ』は初演時のタイトルが『レオノーレ』であったが、公演が成功しなかったために改訂が繰り返され序曲が第3番まである。最終的な改訂版となる『フィデリオ』が成功を納め、現在に残る名作オペラのひとつになったわけだが、『フィデリオ』の序曲はオペラ本編とは関連しない独立した序曲として完成度が高い一方で、『レオノーレ』序曲第3番はオペラの内容を強く反映したものになっていて、人気が高い。ソナタ形式の再現部の前に登場するバンダのトランペットによるファンファーレはオペラの内容を知っていないと意味が分からないはずである。
 まあ楽曲の説明は別にして、現田さんの指揮による演奏は、かなり遅めのテンポによる重厚な仕上がりで、序曲の概念が持つオペラ(やコンサート)への導入、あるいは期待感を高めるという目的論からはややはずれる印象で、非常にシンフォニックな造型で重々しく、フィナーレを飾るようなドラマティックな演奏だ。ちょっと気合いが入りすぎている(?)という気がしないでもない。個人的には、こうした序曲は軽快なテンポでオペラ(やコンサート)へ誘い、ワクワクするような期待感を煽るような演奏の方が好きである。

 2曲目は三舩さんを迎えてのベートーヴェンの「ピアノ協奏曲 第3番」。ベートーヴェンが好んだ「運命の調」であるハ短調で書かれているが、曲想はそれほど悲愴感が漂うものではなく、むしろ雄壮で力強い。
 第1楽章。協奏風ソナタ形式の主題提示部が始まる。これが意外なくらいに遅いテンポで、重厚でシンフォニックに、堂々たる佇まい。どうやら現田さんのお好みの解釈らしい。最近ではあまりこの手の演奏は流行らず、もっと緻密で引き締まったアンサンブルが好まれる傾向が強いと思うのだが・・・・。三舩さんのピアノが入って来るが、出だしの部分はかなり強めにガツンと来て、オーケストラから浮きすぎていたようにも思えたが、しばらく曲が進むとやや抑制的になり、オーケストラとのバランスがぐっと良くなった。ただ、曲のテンポが遅いために、ピアノも重々しくて煌びやかさに欠ける。第2主題なども弾むような軽快さが不足してしまっていた。経過部の流れも重々しく、あまりリズミカルとは言えなかったように思う。カデンツァはベートーヴェン自身によるものが演奏された。オーケストラから解放された三舩さんのピアノが急に輝きを増して華やかな音色とリズムがホールに響き渡った。テンポ感が良く豪快でドラマティックなカデンツァである。やはりオーケストラの方に問題があったのでは・・・・??
 第2楽章はピアノのソロから始まる。三舩さんのピアノは過度な感傷に浸るようなところがなく、芯のしっかりとしたタッチで比較的強めに押し出して来る。ここでもオーケストラとの協奏になれば、遅めのテンポになり全体が重厚な雰囲気に覆われていく。三舩さんのピアノもかなり濃厚な音色で抒情性の表現も厚く重めである。
 第3楽章はロンド。主題を提示するピアノは幾分リズム感が弾むようになってきたものの、オーケストラの方は、拍のアタマが半拍おくれてくるような感じの重厚な仕上げで、リズム感は重々しい。オーケストラとピアノがどこかチグハグで、両者のキレ味がちょっと違いすぎる。ピアノに対してオーケストラが一瞬遅れて聞こえて来る。実際に遅れているわけではないが、オーケストラ側の立ち上がりが遅いためにそう聞こえるのだろう。最後まで何となくしっくり来ない感じであった。

 後半はブラームスの「交響曲 第3番」。ブラームスの4つの交響曲の中では、一番演奏される機会が少ないようだが、私はこの曲が一番好きだ。コンサート後半のメイン曲としてなかなか採り上げられないのは、すべての楽章がフェイドアウトするように静かに終わるために、盛り上がりに欠けるからなどとも言われている。
 第1楽章はAllegro con brio。・・・・の割りには、テンポはかなり遅めで、重厚に進めるばかりか、全般的にまったりとしてメリハリがない。そしてアンサンブルは分厚く、大河の流れのごとく、堂々たる佇まい。どちらかというと、交響曲第1番ならピッタリかなという描き方である。まったりとしているというのはレガートが効いていてという意味で、それで分厚いアンサンブルになると、残響音の長く豊かな芸劇のホールだと、全体がモヤモヤして締まりがなく聞こえてしまうのである。この曲は、内省的な憂いを秘めたロマンティシズムに彩られていると思うのだが、これだとやけに堂々としていて、さすがにこの曲の解釈としては如何なものかと思った。演奏の方は、もちろん指揮者に寄り添ってシッカリしたバランスでアンサンブルもまとまっていたが、オーケストラ側はもっと速く進めたそうなのに指揮者が押さえているようにも見て取れた。
 第2楽章は緩徐楽章。クラリネットによる主題はのんびりとした雰囲気が素敵だが、弦楽が絡んでくると音楽が急に重くなる。弦楽は、拍のアタマがふわりとしていて、わずかに立ち上がりが遅れるような感じのため、全体が重く、けだるい雰囲気になってしまうのである。その効果を狙っているのなら、それはそれで尊重せざるを得ないが、私にはどうみキレが悪いようにしか思えなかった。
 第3楽章は、映画音楽にもなった抒情性溢れる名旋律。この楽章もテンポは遅めだ。別に映画に使われたからというわけではないが、あまり遅いとロマンティックに聞こえてこないようである。何だかスコアの音符が見えてしまうような演奏で、名旋律があまり歌っていない、つまり抒情的な感情表現が感じられないような気がした。純音楽なのだから、勝手な思い入れをするな、といわれればそれまでなのであるが・・・・。再現部で帰ってくる主題を吹くホルンやオーボエなど、演奏自体は質感も高く上手いと思う。
 第4楽章はAllegro ~ un poco sostenuto。ソナタ形式の主要部分はAllegroなのだが、ここでもテンポは遅い。そして揺るぎない確信に満ちた様子で、堂々たる造型を見せる。執拗にドラマティックに仕上げようとしているようにも思えてくる。しかしこの曲は、それほど劇的な曲でも主張の強い曲でもなく、むしろ心の内面に向かって語りかけるような、心理的な表現の曲だと思うのである。それ自体は私の個人的な好み(解釈)なのかもしれないので、このことを理由に今日の演奏について批判的な論評をするのは本意ではないが・・・・それでも各楽章ともこれだけテンポが遅いのは如何なものかと。

 結局、今日の東京ニューシティ管のコンサートでは、すべての曲のテンポが遅く、重厚で、堂々とした作りになっていた。明らかに現田さんの音楽作りの方向性なのだろう。確かに、それはそれで1本筋が通っているので、尊重すべき音楽的アプローチなのだとは思う。結果的には、東京ニューシティ管からかなり質の高い演奏を引き出していたのも確かなので、好みの問題を別とすれば、素晴らしい指揮と演奏だったということになるだろう。・・・・しかし、まあ、個人的には今日の演奏はいただけない。ちょうど今、定期会員の来期への更新期間なので、どうした者かと迷っているのだが・・・・悩みはより一層深まってしまったようだ。

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