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Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

10/28(金)ユリアンナ・アヴデーエワ/ピアノ・リサイタル/瑞々しく躍動する煌びやかな音楽世界

2016年10月28日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
ユリアンナ・アヴデーエワ プロジェクト2016
[第1回]リサイタル


2016年10月29日(金)19:00〜 すみだトリフォニーホール S席 1階 3列 24番 6,000円
ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ
【曲目】
J.S.バッハ:イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807
ショパン:バラード 第2番 ヘ長調 作品38
ショパン:4つのマズルカ 作品7(ナショナル・エディション)
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53「英雄」
リスト:悲しみのゴンドラ
リスト:凶星!
リスト:リヒャルト・ワーグナー-ヴェネツィア
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
《アンコール》
 ショパン:ノクターン 第20番 嬰ハ短調(遺作)
 リスト:「リゴレット」の主題による演奏会用パラフレーズ S.434
 ショパン:ワルツ 第2番 変イ長調 作品34-1「華麗なる円舞曲」

 すみだトリフォニーホール主催・企画による「ロシア・ピアニズムの継承者たち 第12回」は、「ユリアンナ・アヴデーエワ プロジェクト2016」と銘打って、第1回が本日10月28日のピアノ・リサイタル、第2回が11月6日の協奏曲(チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番/カチュン・ウォン指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団)という構成になっている。

 アヴデーエワさんは2010年のショパン国際コンクールで優勝して以来、ショパン弾きとしてのイメージが強く鳴ってしまった。本国ではどうか知らないが、日本に呼ばれるとどうしてもプログラムはショパンを中心に求められることになる。ところが本日のリサイタルでは、ショパンはもちろん弾くものの後半はリストのみという、重厚かつ意外性の高いプログラムだ。日本のファンの前に、今までとはちょっと違うアヴデーエワ像を見せてくれそうである。リサイタルではロシアものも含まれていない。

 1曲目はJ.S.バッハの「イギリス組曲 第2番 イ短調 BWV807」。アヴデーエワさんの研ぎ澄まされたピアノが対位法の多声構造をクッキリ鮮やかに描き出してくる。バロックの落ち着いた佇まいの中にロマン性豊かに流れるような美しい演奏だ。

 ここからはショパン。まずは「バラード 第2番 ヘ長調 作品38」。アヴデーエワさんのショパンは、過度なロマンティシズムに陥ることなく、引き締まったタッチの音色で、豊かなダイナミックレンジの表現。独特の冷めた熱情のようなエネルギー感があり、抒情的ではあるが感傷的ではない。

 続いて「4つのマズルカ 作品7」。お馴染みの弾むようなリズム感に乗せて、主題を自由度高く歌わせていく。踊るようにというよりは、歌うように。優しいタッチの繊細な音色も、力感溢れる大らかな音色も、とても美しい。

 前半の最後は「ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53『英雄』」。速めのテンポで躍動感いっぱいの演奏だ。余分な感傷は排して、楽曲には力強い生命力を与える。この推進力から来るイメージは、ポーランド風ではなくロシア風なのかもしれない。大きな腕の動きからは広いダイナミックレンジを叩き出し、力感溢れる演奏であった。

 後半はリストのみ。晩年のワーグナー絡みの標題音楽的な曲が続く。前半のショパンとは好対照をなす選曲だ。まず「悲しみのゴンドラ」。陰鬱な舟歌である。アヴデーエワさんのピアノから体温が失われるような、冷たい音色がうめくように溢れてくる。

 続く「凶星!」も、もはや音楽を超えた「表現」の塊のようになる。悪魔に魅入られたような、暗く、尖った音楽が迫ってくる。機能的で冷徹なスタインウェイの音が怖いくらい。

 続いて「リヒャルト・ワーグナー-ヴェネツィア」。ワーグナーの死後に書かれた追悼の曲。聴いていつも辛くなるような曲だ。あまりにも悲しみが強すぎる。アヴデーエワさんは何でこんな曲ばかりを選んだのだろう。

 最後は「ピアノ・ソナタ ロ短調」。あまり好みの曲ではないが、名曲の中に数えられている。一月ほど前に、アリス=紗良・オットさんの鬼気迫る演奏を聴いたばかりだが、鬼気迫るという点では今日のアヴデーエワさんの方が上を行ったかもしれない。これまでの3曲とは作曲された時代が違い30歳くらい若いので、演奏の雰囲気もまったく違う。
 過激な超絶技巧的な表現の合間に浮かび上がる甘美でロマンティックな主題に対しては、音が澄みきっていて際立つ美しさを見せる。それ以外の全体を占める、ピアノの技巧の限界に挑むかごときの激しく過激な曲想に対して、アヴデーエワデーさんは遠慮なしの冷徹さで楽曲を丸裸にしてしまう。そしてその楽曲の中から意識化に埋め込まれたロマン性を浮き彫りにする。超絶技巧と最大級のダイナミックレンジ。そして甘美なロマンティシズム。これこそロシアのピアニズムなのかもしれない。

 アンコールは3曲。
 まずはショパンの「ノクターン 第20番 嬰ハ短調(遺作)」というお決まりの曲。この抒情性溢れる曲に対して、アヴデーエワさんはかなり大胆に広いダイナミックレンジでメリハリの強い演奏で押し出して来る。・・・・スゴイ。
 続いてリストの「『リゴレット』の主題による演奏会用パラフレーズ S.434」。鮮やかすぎる超絶技巧を煌びやかに振り回し、これぞロマン派のピアニズムといった雰囲気を漂わせる。自由度が高く、変化に富んでいて、ロマンティックで、ダイナミックで、派手で、感動的。もう何もいうことはない。Brava!!(こういう超絶技巧の曲をアンコールで演奏するとウケルことは決定的??)
 最後の最後はショパンの「ワルツ 第2番 変イ長調 作品34-1『華麗なる円舞曲』」。会場の拍手に押されて急遽追加したのか、終演後に張り出されたアンコール曲の掲示は「ワルツ 作品42」となっていたがこれは間違い。通りかかった人が「アレはワルツの5番(作品42)だよ」などと知ったかぶってのたまわっているのを耳にしたので「違うだろ!!」とツッコミたくなった(笑)。本日の流れのままにダイナミックな演奏で、かなり陽気で、派手で、煌びやかで美しい。まさに「華麗なるワルツ」というべき演奏であった。

 終演後は恒例のサイン会があった。ホールに出た時には既に長蛇の列が2階に上る階段の上までズラリ。早々に諦めて帰宅することに。本日のアヴデーエワさんの演奏は、瑞々しくダイナミックで、とても鮮やかであった。ショパン国際コンクールから6年。もはやライジング・スターではなく、ある種の貫禄を身につけて、強いオーラを発している。11/6の協奏曲のチケットを取っていなかったのが悔やまれてならない。

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【お勧めCDのご紹介】
 ユリアンナ・アヴデーエワさんの一番新しいCDは、「CHOPIN/MOZART/LISZT」。とくにタイトルらしいタイトルが付いていないアルバムです。ショパンの「幻想曲 ヘ短調 作品49」、モーツァルトの「ピアノ・ソナタ 第6番 ニ長調 K.284」、リストの「ダンテを読んで 〜ソナタ風幻想曲」、「ヴェルディ『アイーダ』より 神前の踊りと終幕の二重唱 S.436」が収録されています。

YULIANNA AVDEEVA
MIRARE-ITA
MIRARE-ITA



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