なんかもう本当に久しぶりの、まともな戦闘シーンです。否、作中では半月と経っていないのですが。
長かったなー。そしてフィオレンティーナの影が薄いですね。エルウッドも。書き始めた当初はフィオレンティーナがヒロインのはずだったのに、どうしてこうなった?
今回のテーマは吸血鬼対魔女ですね。
ちなみに前回の対キメラ戦は、実際には俺の中では吸血鬼対獣化兵《ゾアノイド》でした。エイリアンVSプレデター . . . 本文を読む
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アルカードが先にリビングの扉を開けて中に入る――蚊取り線香の灰の匂いが残っているのは、昨夜ここを離れるときにアルカードが買ってきた金鳥の渦巻き状の蚊取り線香を三十本くらい、一気に火をつけて置いていったからだ。
たぶん蚊取り線香が燃えている間は、まるでバルサンでも焚いた様な有様だったに違い無い――せっかくハウスクリーニング業者が突貫作業で清掃してくれたのだし、壁や天井が煤けてい . . . 本文を読む
女はしばらくの間、品定めする様にこちらを眺めていたが、
「……ふむ。潤沢な魔力を持ってるから滋養にはちょうどいいと思って引きずり込んだのだけれど――なるほどね、駆け出しの魔殺しだったのね。道理で――まあ一緒にいた二体の吸血鬼に比べると、たいした力でもないけれど」
地味に失礼なことを言いながら、女が腕組みする。
「それでも、さっきの三人に比べればはるかに強い魔力――貴女たちを喰らっただけでは、あ . . . 本文を読む
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「どうかしました?」
「おかしい」 フィオレンティーナの投げかけた問いに、アルカードがそう返事を返している――視線を向けるとアルカードは険しい表情で周りを見回しながら、
「この洞窟はここが最奥部だ――さっきも言ったが、今来たルート以外の出口は無い。先に入ったという、先客三人はどこだ?」
高度視覚を使って周囲の状況を検索しているのか、吸血鬼の瞳が暗闇の中で金色に輝いている――高度 . . . 本文を読む
「……パオラ? リディア?」 フィオレンティーナが友人ふたりの名前を呼んでも、どこからも答えは返らない。
舌打ちを漏らして、アルカードが蘭と凛に向かって手招きした。彼はかがみこんでふたりに目線を合わせ、
「蘭ちゃん、凛ちゃん――いいかい? すまないが、ふたりでこの洞窟から出てほしい。帰り道はわかるね?」
「うん」 普段とは違う真面目な口調のアルカードの言葉に、子供たちが困惑の表情を浮かべながらも . . . 本文を読む
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「――ここだ」 アルカードがそう言って、ジープの駐車ブレーキのレバーを引く。
アルカードが本条兵衛老から借りたという古い一軒家はお世辞にも真新しくて綺麗とは言えなかったが、まあ築年数の長い空き物件なので仕方が無い――つい数ヶ月前まで転勤族の借り上げ社宅として法人名義で貸し出されていた家で、事前にチェックしたアルカードが言うには雨漏りの痕跡は無いということなので、それで十分だ。
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貸してもらった駐車場にジープを止めて、駐車場から外に出る――ちょうど横手から歩いてきたカップルが、こちらの姿に気づいて表情を引き攣らせた。失礼な反応をする連中だと思いながら視線を向けたところで、思い出す――いつだったかそこの公園で猫を砂場に埋めて石を投げつけて遊んでいた出来損ないのガキどもを締めたときに、見て見ぬふりをしていた腰抜けどもだ。
侮蔑をこめて唇をゆがめ、反対側の歩 . . . 本文を読む
別に毎度毎度感想書く様なガラでもないんですが、今月のアルスラーン戦記。
とうとうアルスラーンが知っちゃいましたね、彼がアンドラゴラス王の落胤ではない事実。まあ原作未読、予備知識ゼロ、好奇心に負けて調べたりもしてなくても、前々回あたりで気づきそうなもんですが。
だって、『国王の資質』でのナルサスとヒルメスの会話が完全に『アルスラーンが英雄王カイ・ホスローの血をひいていないこと』を前提にしてるん . . . 本文を読む
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「――やあ、お若いの」 神城忠信が病院のロビーのところで声をかけてきたのは、ちょうど昼前、アルカードが病院内のコンビニで暇潰しに雑誌を物色していたときのことだった。
ちょうど自動車雑誌を数冊レジに持っていこうとしていたアルカードは、手を止めて雑誌を棚に戻しつつ、
「やあ、どうも――見舞いですか」
「まあそんなところだ」 祝日なので課業外なのか、神城は今日はグレーのブルゾンに黒い . . . 本文を読む
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折から吹き抜けていった潮の匂いのする風が髪を揺らし、頬を優しく撫でてゆく。頭上の小さな屋根が日差しを遮って、まだ緩む気配の無い暑さを多少は和らげている。そんな昼下がり――
「アルカード……笑いすぎです」
簀子状の細い板を座面と背もたれにした、道路の中央分離柵に背中合わせにしつらえられたベンチのひとつに腰かけて、フィオレンティーナは隣に腰を下ろしたアルカードにそう声をかけた―― . . . 本文を読む