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【クリス・ライアンとアンディ・マクナブ以来の良作】ほかの実戦経験者も、もっといろいろ出してほしい

2015年12月10日 23時11分24秒 | キワモノすぎるレビューたち
不屈の弾道 (ハヤカワ文庫 NV)
クリエーター情報なし
早川書房

 射界KILL ZONE
 元海兵隊狙撃手のジャック・ゴグリンが著したフィクション第一弾です。えらく感想が遅い気もしますが、最近まで彼の著作を知らなかったんですね。

 主人公はカイル・スワンソン一等軍曹、米海兵隊所属の狙撃手です。
 本業としての狙撃任務のかたわら軍と提携する民間の兵器産業の新型ライフルの開発にも携わっており、本作冒頭では兵器産業の社長ジェフリー・コーンウェルのヨットに乗り込んで、新型ライフルのデモンストレーションを行っています。
 ライフルの名称はエクスカリバー、GPSやレーザー反射式測距儀レンジファインダー、コンパスその他の電子機器を組み込んだ射撃補助装置を備え、観測手がいなくても単独で任務遂行が可能な.50口径キャリヴァー50対物狙撃銃で、観測手の補助が無くても単独で狙撃に必要な情報を収集できる優れものです。また新素材のおかげで、同口径のライフルに比べてかなり軽量に仕上がっています。
 しかしこの機能性ライフルが当然の様に抱え込む問題のために、終盤において彼は窮地に追い込まれるのですが……

 まあそれはともかく、同時期、米海兵隊の准将ブラッドレイ・ミドルトンがふたり組の傭兵によって中東で拉致されます。さらに、上院軍事委員会委員長トーマス・グレアム・ミラー上院議員が、PSCの台頭を懸念する元空挺隊員たちを集めた講演会の会場となったホテルで変死を装って暗殺されました。

 ミドルトン准将拉致の情報は現地在住のフランス人を通じてアメリカ政府にもたらされ、彼の身柄を救出するための作戦が立案されます。同時にカイルの元にも召集命令が下り、彼は安全保障問題を担当する大統領補佐官ジェラルド・ブキャナンの直接の指示によって不可解な任務を与えられます。
 その命令は軍の命令系統によらないもので、もし救出が不可能な状況に陥った場合にミドルトン准将を射殺する様に、というものでした。
 不可解であると同時に汚名を着せられ抹殺されるリスクも背負うことになるその命令に、カイルは安全策を講じたうえで現地に向かいます。
 しかし、二機のヘリに分乗した救出チームはヘリ同士の接触による大破で全滅、ただひとり生き残ったカイルは単独でミドルトン准将を救出すべく行動を開始します。

 この作品の見どころは、派手さはないものの随所に散りばめられた狙撃手ならではの思考、行動ですね。
 狙撃手が監視所O Pを設置したあと、ターゲットを監視しながらどんなことをしているのかとか、これがSASならほかにすることがないからひたすら話をするところなのでしょうけど、そういったことが詳細に描写されています。
 また、敵の対空砲を無力化するために仕掛けをしたりといったことも書かれており、攻撃そのものよりもその下準備にページを割いています。これがまた、非常に示唆に富んでいます。
 
 話の軸になるのはPSC、PMCに対する業務委託による米軍戦力の空洞化で、ミドルトンやミラー上院議員は軍事戦力の民間委託に反対する急先鋒でした。
 視点はPSCの経営者であるゴードン・ゲイツ、イラクの反フセイン派の実力者レベル・シャイフ、ジェラルド・ブキャナンなどころころ変わりますが、いずれの人物も腹に一物ある反面、皆それぞれに思惑が異なり、それが絶妙に絡み合っています。

 その半面カイルのガールフレンドであるシャリ・タウンの行動の迂闊さが、気にならないでもないです。
 メインヒロインであるはずの彼女は、物語中盤で二輪車暗殺によってログアウトしてしまいます。

 なお、悪役勢は半分くらいは互いに潰し合う格好で消えていきますが、ルース・リード上院議員だけは結末が明確に描かれてませんね。
 ゴードン・ゲイツと面会したとき、ハンドバッグの中の拳銃を触っているので、彼に銃を向けてもおかしくなさそうな話の流れなんですけど。

 それにしても、将校を航空機内で性接待なんてホントにあるのだろうか?

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