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【伏見さんと手を切ったんだね】翻訳のクォリティが変わらなければいいけど。

2015年11月22日 09時06分37秒 | キワモノすぎるレビューたち
戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦 上 (竹書房文庫)
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竹書房

戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦 上 (竹書房文庫)
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(Kindle版)
戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦 下 (竹書房文庫)
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竹書房

戦場の支配者 SAS部隊シリア特命作戦 下 (竹書房文庫)
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 最近クリス・ライアンによる新作が発表されました。
 Masters of War、邦題戦場の支配者。
 現役のSAS隊員ダニー・ブラックと元SAS隊員であり現在はPMCに所属して活動する傭兵タフ・ディヴィスの因縁を描く作品です。あとこれは作者の意向なのか出版社の大人の事情なのか知りませんが、初の上下巻です。
 クリス・ライアンはアンディ・マクナブに続いて世に出た元SAS隊員の作家で、アンディ・マクナブ同様イラクでブラヴォー・ツー・ゼロのコールサインを与えられて『砂漠の嵐』作戦に参加しています。
 その任務はイラク軍がテルアビブに向かってスカッドを発射するのを阻止するため、通信ケーブルを破壊することでした。
 当時イスラエルは湾岸に参戦しておらず、アラブ諸国も静観の構えを見せていました。しかしテルアビブへのミサイル攻撃によってイスラエルが参戦を決定すれば、イスラエルに反感を抱くアラブ諸国がイラクについて参戦するのは必至で、それを阻止するのが目的です。
 そのため、米英軍はスカッドの発射を阻止するために砲台を順次潰していく必要があったのです。
 彼らの目標はトラック等で移動しない固定式発射台を潰すために、それらとバグダッドを結ぶ通信ケーブルを破壊することでした。
 結果として作戦は失敗に終わり――ブラヴォー・ツー・ゼロは多数の死傷者を出して壊滅状態に陥り、アンディ・マクナブはイラク軍の捕虜として敵の手に落ちます。対してクリス・ライアンは数々の幸運に恵まれたこともあり、シリア領内への脱出に成功しました。
 事前情報を元に砂地だと聞かされて持っていった偽装道具は実際は岩だらけの地形だったためにまったく役に立たず、TACBE(戦術ビーコン通信機)は周波数の設定ミスで使い物にならず、また三十年に一度という大寒波に襲われたこともあって、ブラヴォー・ツーゼロは窮地に立たされました(ここらへんのことはライアンの第二作弾道衝撃 SAS隊員ジョーディ・シャープ (ハヤカワ文庫NV)にわかりやすく書かれています)。
 ブラヴォー・ツーゼロの現地での行動の詳細についてはブラヴォー・ツー・ゼロ―SAS兵士が語る湾岸戦争の壮絶な記録 (ハヤカワ文庫NF)ブラヴォー・ツー・ゼロ 孤独の脱出行に詳しく書かれているので、ぜひ手に取ってごらんください。なお、マクナブはともかくライアンの手記は高価なので図書館で探すのも手です。
 俺のマクナブとの出会いは図書館で、SASに関連する本とかを探していて偶然これを見つけました。面白かったですよ。お勧めです。
 その流れでああ、こういうのもあるんだと思って探すうちにライアンとも出会いました。

 話を戻すと、物語はふたりめの赤ちゃんが生まれたばかりのサイモンとスーザンという夫婦の病室から始まります。
 サイモン・ブラックはRUC、ウルスター警察軍の警察官で、スーザンは北アイルランド出身のアイルランド人です。
 ベルファストでは到底暮らし向きが立たないでしょうが、ふたりはイングランド南部にオルダーショットで暮らしていました。
 しかし、ふたりは病院で何者かに襲撃され、奥さんのスーザンは死亡、旦那さんのサイモンは現場が病院だったのが幸いして一命は取りとめたものの、脳に重大な損傷を負って一生車椅子の身になってしまいました。
 そこに現れたのがタフ・ディヴィス、サイモンの友人です。彼は意識不明のサイモンに向かって彼の受けた仕打ちの報復を誓いますが、全部読んでからだとこれほど白々しいセリフも無いですね。

 二十五年後、パリにハキムとファティマというアルジェリア人の夫婦が住んでいました。
 しかし、ふたりはふたり組の気違い謎の傭兵によって利用され、殺されてしまいます。
 彼らは父親のハキムを脅迫してとある老人の抹殺のための鉄砲玉にしますが、実際はハキムに持たせた報酬のユーロの札束(カラーコピー)と一緒にバックパックの中に入っていた大量の爆薬の爆発によって爆殺しています。奥さんのファティマはこれまた強姦された揚句に殺害され、双子の子供たちは浴槽に沈められて殺害されています。
 彼らの名はヘクターとスキナー。とあるPMCの隷下で動く傭兵です。

 そしてそれから数日後、ヘリフォードからクレデンヒル空軍基地内に本拠を移転した特殊空挺任務部隊、通称SAS本部基地にふたりの外務省官僚が訪れます。
 ひとりはオリヴァー・キャリントン、もうひとりはヒューゴ・バッキンガム。
 彼らはSAS連隊長であるジム・カートライトの元を訪れ、現在シリアで分裂しつつある反政府勢力の最大派閥について意見を交換します。実際にそうである様にシリアでは政府に抵抗する反政府勢力が多数存在しており、そのうちの最大の勢力の長が最近になってパリで殺害されました。そう、ヘクターとスキナーがハキムに爆弾を持たせて爆殺したのはその反政府勢力のリーダーだったのです。
 彼には息子がふたりいますが、この息子ふたりが犬猿の中で、部下たちがどちらにつくかによって反政府勢力は分裂の危機に曝されていたのです。
 反政府勢力を支援するイギリスとしては自分たちがより大きな影響を与えられる側にシリアの新たな政権を担わせたい。出来れば両者を結託させて、その立役者としてシリアに影響力を残したい。そこでソーゲンとアシューという息子ふたりを懐柔するためにSAS隊員四名を護衛につけて、ソーゲンと親交のあったバッキンガムを送り込む算段でした。
 その人選の際、キャリントンはなぜかブラックという隊員を組み込む事を強硬に主張します。
 彼の名はダニー。ダニー・ブラック、父親はサイモン・ブラック。母親はスーザン・ブラック。そう、二十五年前に病院で襲撃された夫婦の、当時赤ちゃんだった次男です。

 呼び戻されたダニーはPMCインターナショナル・ソリューションズのマックス・ソーンダーズと接触したのち、バッキンガムと三人の仲間とともに現地入りします。
 しかし、シリアに潜入した直後にふたりの仲間は敵の手に落ち、残るひとりも逃避行の最中に死亡。ダニーはバッキンガムとともに現地で孤立しました。
 打開策として、ダニーはソーンダーズの用意した現地の傭兵と接触します。
 姿を現したのは父親の友人であり、彼に様々なことを教えて彼のSAS入りのきっかけを作ったタフ・ディヴィスとその部下三人。
 その中にはあの男たち、ヘクターとスキナーの姿がありました。

 と、まあここまでで上巻の大雑把なあらすじですね。
 いつも通りのリアル系描写に加えて今まではあまり無かった系の強姦や赤ん坊の殺害等残虐描写スプラッターゴアが登場します。最初に読んだときはびっくりしました。
 個人的にはThe Watchman、暗殺工作員ウォッチマンが一番好きなんですけど、それとは傾向がまるで違います。でも個人的には嫌いではないです。
 ちなみに下巻になると、バッキンガムのヘタレっぷりが際立っていきます。最後の展開はちょっと強引な気がしますね。

 でもいつも通り、読み始めると止まらなくなる面白さです。

 あと出版社が竹書房に変更されており、それに伴ってか翻訳者も変わりました。
 個人的には文庫本用のカバーが使える様になったので、早川書房から離れてくれたのはありがたいです。なんであんな不格好なサイズ変更したんだか。文庫本用のクリアカバーは使えないし専用のカバーも無いし、言うほど読みやすくなったわけでもないし、いいことなんかなにも無いのに。

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