徒然なるままに修羅の旅路

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悲……大阪ナイフショーは完全中止になりました。滅べ疫病神

Genocider from the Dark 22

2014年11月03日 21時53分23秒 | Nosferatu Blood LDK
 
   †
 
「オーケイ、わかった」 先ほど質問を口にした途端、まるで狂犬の様にうなり声をあげ始めた吸血鬼たちに視線を向け、金髪の青年は笑みを浮かべた――左手の指を軽く鳴らし、一度閉じた瞼を開いたときには、その深紅の瞳が暗闇の中でおのずから輝いている。
「とりあえず、あの女がここにいたことだけはわかった。おまえらからなにか情報を引き出すのは無理だから、もう用は無い」
 言いながら、彼は最初からずっと背後に隠していた右手を前に出した――その手には銃身下部にグレネード・ランチャーを取りつけた、ヘッケラー・アンド・コッホMP5サブマシンガンが握られている。
 本体部分はインテグラルサプレッサーを持たず銃身が切り詰められてもいない標準タイプのMP5Aだが、ストックがついていない――MP5はレシーヴァー形状が違っても各シリーズの製品で部品の流用が効くので、MP5Kあたりから流用しているのだろう。
「あまり時間も無いが、おまえらを放置していくわけにもいかないんでね――寂しいがお別れだ」
 ようやく前奏が終わり、ラジカセから歌詞の部分が流れ出す。それを聞いて、青年の口元に笑みが浮かぶのが見えた。
 青年がストックを取り除かれたサブマシンガンを拳銃の様に片手で据銃する――にやりと笑い、金髪の青年はトリガーを引いた。
「遊ぼうぜ!」
 青年のあげた声は、短い連射の銃声に紛れて掻き消された。
 ロンたちふたりの近くにいた吸血鬼が頭蓋を粉砕され、着弾の衝撃で仰向けに倒れながら――倒れるよりも早くその体が黒く変色し、黒い粉チーズの様なものを撒き散らしながら崩れ始めて、やがてそれすらも残さずに消滅する。
 状況推移についていけずにいるロンたちふたりを無視して、金髪の青年はさらにサブマシンガンを発砲した。MP5Aシリーズのどれかなのは間違い無いが、三点規制射バースト機能の有無まではわからない。
 最初の連射ははずれたらしい――気味の悪い叫び声とともに、吸血鬼が青年に襲い掛かる。
 青年は掴みかかってきた吸血鬼の体を避けて横に廻り込むと、そのまま肩口を力任せに突き飛ばした――大きく体勢を崩して踏鞴を踏んだ吸血鬼の後頭部を、短く区切った一連射が粉砕する。
 ギャァァァッ!
 ひぃぃぃぃッ!
 あぁぁぁぁぁっ!
 青年が左手を振り翳したその瞬間、頭の中にすさまじい絶叫が響いた。青年が左手を振るうと同時、接近しつつあった吸血鬼数体の胴体がまるで見えない剣を振るったかの様に上下に分断され、崩れ落ちるよりも早く塵に変わる。
「キャァァァァッ!」 叫び声をあげて、吸血鬼が床を蹴った。そのまま金髪の青年に背後から襲いかかる。
 危ない――警告の声をあげる間も無かった。
 青年が動く――彼は左腋の下からサブマシンガンの銃口を突き出すと、背後に向かって短い連射を二度放った。
 弾き出された空薬莢が、綺麗に同じラインを通って宙を舞う――最初の連射が脇腹に着弾して体勢を崩した吸血鬼の胸元に二度目の連射が着弾し、その衝撃でのけぞったまま、振り返りざまに繰り出した金髪の青年の不可視の斬撃に首を刎ね飛ばされて、吸血鬼の体は塵と化して消失した。
 足下に崩れ落ち、塵の塊となってわだかまっている吸血鬼の屍を足で蹴飛ばして――青年の口元に笑みが浮かぶ。彼が左腕を振るうと、長い刀剣状のものを振るったかの様にひゅんという風斬り音が聞こえた。
「しまらねぇな、まったく」
 小さな溜め息をついてそうつぶやくと、金髪の青年は無造作にサブマシンガンを真横に突き出した。右手から飛びかかってきていた吸血鬼が、口蓋に銃口を捩じ込まれて動きを止める。
「死ね」 言葉とともに、青年がMP5のトリガーを引いた――フルオートで吐き出された数発の銃弾が吸血鬼の頭部を滅茶苦茶に粉砕し、そのまま吸血鬼の体が塵に変わる。
 そこで銃弾が尽きたのか、MP5の連射が止まった。
 
   †
 
 トリガーを引くと同時に、手にしたMP5サブマシンガンが派手に火を噴いた――短く区切った二連射が、火薬の燃え滓を撒き散らしながら宙を引き裂く。
 弾き出された空薬莢ケースが薄暗がりの中綺麗に同じラインを通って宙を舞い、それで十分ということなのかポータブル発電機につないだ白熱電球の明かりを照り返してキラキラと輝いた。
 ロンたちふたりの近くにいた噛まれ者ダンパイアがその一斉射で頭蓋を粉砕され、着弾の衝撃で仰向けに倒れながら――倒れるよりも早くその体が黒く変色して黒い塵を撒き散らしながら崩れ始め、やがてそれすらも残さずに消滅する。
 どちらがロンでどちらがリーなのかもアルカードにはわからなかったが、とりあえずはどうでもいい――今の状況で彼にとって重要なのは、彼らがふたりとも床に倒れているために通常の射角では誤射ブルー・オン・ブルーの危険が無いことだけだ。
 状況推移を飲み込めずにいるらしいふたりは無視して、据銃――レシーヴァーを水平に寝かせる様にして、アルカードは短い連射を二度放った。一連射目の発射の反動を利用して銃本体を横薙ぎに振り回し、二体目に照準してそのままトリガーを引く。
 心臓に近い位置に三発撃ち込まれ、四発目が首に喰い込んだのが致命傷になったのだろう、二射目を撃ち込まれた噛まれ者ダンパイアの体が衣装だけを残して黒い塵と化して消失した。
「――ギャァァァァッ!」
 一連射目を撃ち込んだ噛まれ者ダンパイアが、気味の悪い叫び声とともに床を蹴る――はずしたのかとも思ったが、衣服の胸元にはちゃんと着弾痕が残っている。察するに衣服の下に財布かなにかが入っていてそれに衝突して弾頭が砕け散り、弾頭が体内に入り込まなかったのだろう。
 ヴェトナム戦争時代にはちょっと分厚い木の葉に命中した.203口径のNATO準標準弾が砕けたとか、財布に当たって停弾したとかいう話もあるし、古くはZippo、最近ではイラク駐留兵士がiPodに命を救われたという話も聞くから、恐らくそんなところで間違いあるまい――彼の使う弾薬はグレイザー・セイフティー・スラッグという対人殺傷用フランビジリティーの基本構造を踏襲しており、五・五六ミリ弾よりも貫通力ははるかに低い。
 そして彼の弾頭は、体内に入り込まなければ対霊体殺傷効果を発揮しない。
 掴みかかってきた吸血鬼の腕を押しのけ、体を避けて横に廻り込む――目標を失って体勢を崩し、踏鞴を踏んだ吸血鬼の背中を、アルカードは容赦無く左手で突き飛ばした。体勢を崩して宙を泳いでいる吸血鬼の後頭部に銃口を向けてMP5を据銃し、短く区切った一連射を叩き込む。
 頭蓋骨を粉砕して脳にもぐり込んだ弾頭が体内で水銀とベアリングを撒き散らし、伝播した衝撃波で吸血鬼の頭部の皮膚がずたずたに引き裂かれた――噴き出した血で金髪が真っ赤に染まり、飛び出した眼球が黒い塵を撒き散らしながら消滅する。それに続いて吸血鬼の体も、何日も洗濯していない臭い衣服だけを残して崩れ散った。
 とはいえいつまでも銃撃戦ばかりやっていっても、観客にしてみれば面白みもあるまい――胸中でつぶやいて、アルカードは左手を振り翳した。
 ――こいッ!
 ギャァァァッ!
 ひぃぃぃぃッ!
 あぁぁぁぁぁっ!
 次の瞬間、頭の中にすさまじい絶叫が響く。魔力の弱い普通の人間の目には視えないまま手の中に出現した霊体武装・塵灰滅の剣Asher Dustの柄を握り締め、アルカードは床を蹴った。
Wooaaaraaaaaaaaaaaaaオォォォォアァァラァァァァァァァァッ!」
 接近しつつあった三人の噛まれ者ダンパイアに向かって、滑る様な動きで間合いを詰める――耳元で空気が逆巻いて音を立て、金髪が視界の端で揺れた。
 噛まれ者ダンパイアたちがこちらの動きに気づいて、急ブレーキをかけようとしている――こちらが元の場所にいるものという考えのもとで攻撃準備を整えていたから、こちらから接近し始めると対応出来なくなったのだろう。
 今の彼らの至上目的はアルカードを殺すことで、上位個体の命令が有効になっている間はそれ以外のことはなにも考えられない――が、かといってただ突っかかってくるわけではない。目的を果たすために必要な知能はちゃんと残っている――知能が足りているかどうかは別問題だが。
 一応残ってはいるが、どうやら知恵は足りていないらしい――素人め!
 必死で制動をかけ、後退動作に移ろうとしている三人の噛まれ者ダンパイアたちに向かって、アルカードは容赦無く攻撃を仕掛けた――間合いの変化が予想と違ったところで、それでもたつくほどアルカードは甘くない。むしろ全力疾走で近づこうとしていたぶん、彼らはその慣性を殺して挙動を変えるのに時間を喰っている。
 そのまま散開して脇を駆け抜けることで遣り過ごしていれば、目標が散って生き残る目も出てきたというのに――状況の予想外の変化に対応出来なかったために、その運命は潰えた。
Aaaaaalieeeeeeeeee――アァァァァァラァィィィィィィィィィィ――ッ!」
 三人の噛まれ者ダンパイアたちが間合いに入ったところで、咆哮とともに塵灰滅の剣Asher Dustを振るう――斬撃の軌道に巻き込まれて切断された腕や指がぼとぼとと音を立てて床の上に落下し、胴体を上下に分断された噛まれ者ダンパイアたちがその場に崩れ落ちるよりも早く塵に変わった。
「キャァァァァッ!」 背後から金切り声が聞こえてくる――こちらが部屋の中央附近に出たために、背後に廻り込んで攻撃を仕掛けてきたのだろう。結構、さっきの間抜けな案山子三人よりはいくらか知恵が回るらしい。
 アルカードは若干左足を引いて半身を作り、MP5サブマシンガンの銃口を左腋の下から突き出した。魔力の気配を頼りに敵の位置を大雑把に特定し、そちらに銃口を向けてほんの一瞬トリガーを引き、放す。
 耳元に近い位置で銃声が鼓膜を叩き、彼はわずかに顔を顰めた。意図的に聴力を落としていなければ、とうの昔に難聴になっているところだ。
 別に急所に命中させる必要は無いのだ――とにかく動きが止められればいい。
 さらに銃口の角度をわずかに変えて、短い連射を放つ――短く区切った銃声が部屋の中に響き渡り、背後で悲鳴があがった。
 排莢口から次々と弾き出された空薬莢ケースが、床の上で音を立てて跳ね回る。それを聞きながら、アルカードは背後を振り返った。
 最初の連射を脇腹に喰らって動きが止まったところに二度目の連射を胸元に叩き込まれ、着弾の衝撃でのけぞった体勢のままの噛まれ者ダンパイアの首元目がけて剣を振るう――わずかな手首の動きで鋒の描く軌道に微調整を加えた斬撃は、狙い違わず噛まれ者ダンパイアの首を刎ね飛ばした。

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