葉室麟、
あの作家が生きていたら。
文芸誌に連載中ではありましたが、未完のままとなりました。その早すぎる死が残念でなりません。
不平等条約改正のために命を懸けた陸奥宗光の生涯。作品「暁天の星」(『文蔵』誌)。
日本を世界に認めさせたという意味で、もし作品の完結をみていれば、
作品の今日的意味も味わえたかもしれないなあと、
思うことがあります。
それまでと違って、珍しく近代明治に焦点をあわせて取り組んだその内容に期待していました。
葉室さんは多分に政治的なことはおっしゃらず、歴史の人物を介しながら、
俯瞰してそのくみ取るべき何ものかを提示されていかれたのではないかと想像しています。
葉室麟作品、全てよく知っているわけでもないのですが、以前に読んだ『銀漢の賦』は強烈に印象に残しています。
江戸期の内容が多いように思われますが、それぞれの時代背景をキャンバスにしながら、
生命さえ賭していく作中の日下部源吾のような生き方から、他方世間をうまく立ち回る生き方も対比させ、読み進むほどに考えさせられていきます。
生前の作者の言葉から抜き書きしておきます。
「若い時はサクセスストーリーだけが人生だと思いがちですが、私らの年齢になると、むしろ人生は負けた後から始まるのではないかと思えてくる。落ちた花は二度と咲くことはないけれども、咲かそうとする努力は美しい」
「社会というのは一人の英雄とか豪傑がつくっているのではなく、普通の人が寄り集まって、なんとかかんとか支えている。目立たなくても自分のやるべきことをきちんとやる。結局私は、普通の人が普通に努力して生きていくことが一番大切なんだというごく単純なことが言いたくて書いているんですね」
(中日新聞夕刊)
たしかに作者のこの言葉を裏付けるような作品世界が『銀漢の賦』でした。
あの作家が生きていたら。
文芸誌に連載中ではありましたが、未完のままとなりました。その早すぎる死が残念でなりません。
不平等条約改正のために命を懸けた陸奥宗光の生涯。作品「暁天の星」(『文蔵』誌)。
日本を世界に認めさせたという意味で、もし作品の完結をみていれば、
作品の今日的意味も味わえたかもしれないなあと、
思うことがあります。
それまでと違って、珍しく近代明治に焦点をあわせて取り組んだその内容に期待していました。
葉室さんは多分に政治的なことはおっしゃらず、歴史の人物を介しながら、
俯瞰してそのくみ取るべき何ものかを提示されていかれたのではないかと想像しています。
葉室麟作品、全てよく知っているわけでもないのですが、以前に読んだ『銀漢の賦』は強烈に印象に残しています。
江戸期の内容が多いように思われますが、それぞれの時代背景をキャンバスにしながら、
生命さえ賭していく作中の日下部源吾のような生き方から、他方世間をうまく立ち回る生き方も対比させ、読み進むほどに考えさせられていきます。
生前の作者の言葉から抜き書きしておきます。
「若い時はサクセスストーリーだけが人生だと思いがちですが、私らの年齢になると、むしろ人生は負けた後から始まるのではないかと思えてくる。落ちた花は二度と咲くことはないけれども、咲かそうとする努力は美しい」
「社会というのは一人の英雄とか豪傑がつくっているのではなく、普通の人が寄り集まって、なんとかかんとか支えている。目立たなくても自分のやるべきことをきちんとやる。結局私は、普通の人が普通に努力して生きていくことが一番大切なんだというごく単純なことが言いたくて書いているんですね」
(中日新聞夕刊)
たしかに作者のこの言葉を裏付けるような作品世界が『銀漢の賦』でした。