瀬戸内寂聴さんは、言った。
愛とは許すことだと。
私は、それを聞いて、やっぱりそうなんだと、確信した。
昔、ある映画を見て、感じていたことだったから。
夫のいない早朝に、
彼を感じたくて、LINEを開いた。
けど、迷惑にならないのか、自分の中で何度も葛藤した。
それでもやっぱり、我慢できずに送った言葉は、
起きてる? だった。
何事もなく時間が過ぎて、私は、犬の散歩に出た。
とても冷えた朝だった。
まだ、街灯の灯りが頼りで、空の色もわからない。
スマホで天気予報を見て、雨が降らないか確認する。
良し!傘はいらないな。
今日も、いつものように始まった。
帰る途中で、白い犬を連れた女に会った。
彼女とは、会いたくないのに、しょっちゅうタイミングが合う。
遠くから、お互い意識して動かない。
向こうは、犬を操れないのだ。
犬同士も、睨みを効かす。
道は、細いから、少しそこの脇道に入ってもらえば、私は、リードを短く持って、通り抜けることができるのに、
それすらもできなさそう。
しばらく待って、私は、来た道を引き返した。
毎回こうなる。
アホな女は嫌いだ。そう思った。
今日は何故か、いつになく腹が立った。
そして…アホな女は、ここにもいると思った。
彼は、私のそんな気持ちを察したみたいに、
朝からLINEをくれた。
このイライラとした気分は、すぐに晴れた。
私の行動は、いちいち誤解を生む。
話したければ、話したいと言えばいい。
LINEしたければ、そう伝えればいい。
消去したくなっても、見てもらえばいい。
彼がどう受け止めるのか、わからないなら、ぶつけたらいい。
周りが見えないアホな女でも、
コミュニケーションを取ってあげればいい。
迷惑かけるのが嫌なら、
許し合えばいい。
でないと、相手に気を使いすぎて、何もできなくなる。
そして、未熟で、完璧でない自分も、許せばいい。
私は、
愛は許すこと。という本来の意味に、気づけば、いい。
朝の時間は、刻々とすぎる。
娘が、そろそろ行くね。と言うので、私は、母親に戻った。