彼のトークルームは、
これからすぐに消されることとなった。
それは、私が決めたルール。
だから、その日その日、繋がった時の思いは、ここに残そうと思う。
これは、私の日記だから。
大切な時間を過ごした証を記そう。
仕事が終わって、外に出たら、冷たい雨が降っていた。
自転車を猛スピードで漕ぎながら、
どうしてそんなに必死に家に帰るんだろ?
って思った。
家に帰りたいんじゃない。
濡れたくないだけ。
そんな時に限って、目の前で遮断機が降り、私は、じっと雨に降られていた。
家に帰ったら、お嫁ちゃんがキッチンを使っていた。
私が散歩から帰るまでに、
どうか、終わらせていてほしい。
そう願いながら、LINEを開いたら、
数分前に、彼も散歩に出たとあった。
私もすぐに後を追った。
ジャンバーを交換して、濡れたネッグウォーマーは、
ただ冷たいだけで、機能を果たしてないので、外した。
早く彼と繋がりたかった。
でも、彼の姿はもう、どこにもなかった。
何度か、LINEを送ったけど、既読にならない。
きっと何かあったんだ。
そう思って、諦めた。
私は、スマホにイヤホンをつけて、
斎藤ひとりさんの公演を聴き始めた。
1時間近く、散歩に費やす時間を無駄にしたくない。
ちょうどその時、彼からLINEがあった。
あの後、土砂降りの雨が降ってきて、傘を持ってないから、慌てて引き返したのだそう。
びしょびしょなのに、とりあえず、連絡をくれたんだ。
さっきの私と同じ。
冷たいよね。私も、髪の毛が冷たいよ。
彼と私は同じだって思った。
LINEなんて、もうしなくていいから、はやく着替えて、温まってもらいたい。
私は、斎藤一人さんを聞いて歩くから、大丈夫だよ。
そしたら、彼はこう言った。
タイミングを合わせられなくてごめんね。って。
充分、タイミングを合わせてくれていたでしょ。
雨さえ降らなければ、きっと話せた。
何を謝ってるんだろうって、彼の優しさが、さっきの雨より身に染みていた。
幸せを感じるって、そんな些細なことでいいんだ。
帰ったら、キッチンは、ちゃんと片付けられていた。
私はすぐ、晩御飯の準備に取り掛かることができた。
良かったとホッとした。