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まほまほろば

まほろばのように日々の思いを書き綴った日記

うたかたの日々

2013-11-07 18:04:48 | 本(漫画、小説)
ヴィアン著の「うたかたの日々」を読みました

題名の通り泡のように短い若者の青春時代の栄枯盛衰を描いたもので、奇想天外な恋愛物語でした。



最近映画も上映されていたので概要をつかむために最初は映画を見ました。
この物語は本当に奇想天外な世界でして、例えば、

・彼女の肺に睡蓮が咲き体を蝕む謎の病気
・ピアノの鍵盤を叩くことで様々なカクテルができあがるカクテルピアノ
・ありえないくらいのハイジャンプ
・腰を通じ腕は考えられないくらい回すダンス

などギャグマンガにあるような設定が現実世界に盛り込まれていました。
映画では原作にあるような殺人描写がほとんどなく純粋な恋愛を強調しているように感じました。



続いて小説を読みました。
映画と同様不思議な世界観でして(元々の原作なので当たり前ですが)、映画を見ておいたおかげで描写を想像しやすくなり、面食らうことなく物語にすんなりと入り込めました。


さて、私がこの物語で一番印象に残ったのは作品のテーマの一つであるサルトルの実存主義への警鐘でした。
この物語に出てくる登場人物はとにかく自分の思うがままに好き勝手に行動しました。金を散財したりする者もいれば、哲学者の思想にのめり込んでしまう者もいたりして最終的には皆不幸な人生になりました。

これら登場人物の生き方はまさに実存主義者のサルトルが崇拝する個人主義に則ったものです。作中にもサルトルを模した”パルトル”という人物が出てきていましたが、皮肉の意味を含めて書いたのかなぁと思いました(ただし、サルトル自身は自分に模した人物が作品に出ていることをむしろ喜んだようです)。

実存主義とは人間が自らで考え行動することに重要性を見出す考え方ですが、この物語のようにこれを徹底しすぎると破滅するという負の側面もあるということを示しているように感じられました。実際過去に考え方を曲解して悪用された歴史もありましたし、ヴィアンはこのような事態を予想した上で警鐘を鳴らしたのかもしれません。


全体として謎が多く不思議な物語でしたが、カミュの「異邦人」を読んだときにも出てきた実存主義について再度考え直すこともできましたし、総じて面白かったです。
一応恋愛小説ですが、私はあまり恋愛ものとしては読めませんでした。
一つの物語に恋愛、哲学などいくつかのテーマが散りばめられていて読み手によって読み方が幾通りも存在する奥行きがある小説としてこれは一読する価値があると感じられました。

朗読コンサート

2013-10-21 20:46:14 | 本(漫画、小説)
朗読のコンサートに行ってきました
今回は朗読だけでなく、ピアノの伴奏付きというお得感のあるコンサートでした。

毎週「花もて語れ」という朗読の漫画を読んでいますが、実際に朗読を聞きに行くのは初めてでした。
漫画の中では話し手が自分なりの解釈を聞き手にうまく伝わるように「視点の変換」、「間の取り方」、「トーン」などをうまく工夫しながら朗読していくのですが、実際のところどうなんだろうというのを知りたいと思っていました。
また、聞き手が物語の世界にうまく引き込まれるといのはどういった感覚なのかということも理解したいと思っていました。


今回の朗読のコンサートでは三つの短編小説が扱われました。
その中でも印象的だったのが「美しい墓」という作品でした。
これは原田マハ著「ジヴェルニーの食卓」という小説の中の一篇でして、この小説は美の巨匠(マティス、ドガ、ベルナール、モネ)の渾身の絵の背景に潜む出来事を史実に基づいて物語化したものです。

美しい墓はマティスの絵の物語でした。庭に咲くマグノリアという花を介して通じ合うマティスと使用人との友情、恋愛の物語でしたが、切なさを感じさせる話で物語が終わった時には周りですすり泣く人が結構いました。
私も聞いている間に完全に物語の世界に没頭していたので聴き終えた時にはジーンと胸が詰まる思いでいっぱいでした。
是非この小説は買って読みたいと思って早速買って今読んでいます
読み終えたらほかの作品も一緒にレビューを書きたいと思います。


また、今回のコンサートで特徴的だったのは生のピアノの伴奏があったことです。
導入、場面が切り替わるところなどに展開にピッタリの曲が弾かれ、より一層朗読を通じた物語の世界に魅了されました。


実際朗読を聴きに行ったことで漫画で描かれていた通りのことが実感できました
朗読って身振り手振りもなく、また衣装もなく、声だけで伝えるということでシンプルではありますが、逆に難しさや奥深さがあって改めて面白い世界だと思いました。
たまにはこういう機会を作るのもいいですね~

To be or not to be

2013-10-11 22:50:01 | 本(漫画、小説)
先日参加した読書会の課題本はシェイクスピア著の「ハムレット」でした

物語の内容は、城に現れた父王の亡霊から、その死因が叔父の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットが復讐を行うといったものです。

ハムレットは何年か前に一回読んだことはあったのですが、そのときの感想はハムレットはいつになったら復讐をするのだろう、ぐずぐずしているなぁといったものでした。今回はそれを踏まえ、ハムレットの心情に着目して読んでみました。


今回読んでみてハムレットの面白さはこのハムレットの謎を秘めた人間性にあるのではないかと思いました。復讐を誓ったもののどうするべきか迷っている独白のシーンが最大の見所です。小説の読み方で読んでしまうと淡白になりがちな物語ですが、元々は演劇用に作られた話ですので劇としての視点で読むとこの独白のシーンは迫力があるのではないかと思われます。実際、参加者の中に演劇をやっていた人がいて、劇として見るとそこのシーンはかっこいいと言っていました。
有名なセリフ「To be or not to be, that is the question.」(生きるか死ぬか、それが問題だ)もこの独白のシーンの中で出てきます。
ハムレットはは「To be」、つまり復讐をするべきか、あるいは「not to be」、つまり復讐をせず心の内に留めておいて生きていくかどうかを迷っていましたが、フォーティンブラス率いるノルウェーの軍団が野心にとりつかれ未知の世界に飛び込み、大した価値のない土地を手に入れようとしている姿をみて結局吹っ切れて復讐をする決意をしました。


読書会で話題に挙がったことで意外だと思ったのがハムレットの人気のなさでした。
計算高く、何を考えているのかよくわからない、うじうじしている、優柔不断など特に女性陣からは不評でした

私は個人的にハムレットのような人間は結構好きです。
謎が多いですが、奥行を感じさせますし、悩みながらも信念に従って行動する実直さも持ち合わせているからです。こういう人って話をすると結構面白いので現実世界にいたらうまく友達になれる気がします。


戯曲を扱った読書会に参加するのは初めてでしたが、意外と面白かったです。あくまで戯曲なので心理描写は書かれていませんでしたが、そこがまた奥深さを醸し出していて議論が盛り上がるところでした。
ハムレットの劇ならよく上演していると思いますので今度見に行ってみたいと思いました。

また余談ですが、太宰治著の「新ハムレット」はハムレットのパロディ版でして、太宰なりの解釈で色づけられた登場人物が思いをぶちまけているのでこれはこれで面白かったです。両方合わせて読むのがオススメです

センセイの鞄

2013-10-10 17:21:47 | 本(漫画、小説)
川上弘美著の「センセイの鞄」を読みました

先日参加した読書会の課題本でして、内容はアラフォー独身女性の主人公と定年退職したセンセイ(先生)とのほのぼのとした恋愛物語です。

主人公は独身一人暮らしの干物系おてんば娘です。どこか人生に諦めなようなものを感じながら周りの目を気にし、割り切れずにだらだらとした生活を送ってきており、楽しみは趣味である居酒屋で酒を飲みながらつまみを食べるということでした。

その居酒屋でよく出会っていたのが自分が高校生の時のセンセイ(先生)でして、元先生-元生徒という距離を保ちながら親交を深めていきました。


私がこの小説で一番面白かった点はこのつかず離れずという距離感でした。
どこか落ち着きの無い主人公と、退職をして残りの人生を静かにゆったりと生きているセンセイ。年の差30歳以上も離れている二人の関係でしたが、互いに絶妙に噛み合っており、読み手にもその感じがうまく伝わって来るように書かれていました。


読書会で話題に上がったのが以下のことでした。

・現実世界ではこの年齢差をどう思うか(何歳差まで可能か)

・女性目線、男性目線でこの主人公、センセイはアリかナシか

・世の中には多数派、少数派といるが、この話に出てくる人たちのような少数派をどう思うか


詳しくは書きませんが、人生経験豊富な人たちの意見はなるほどなと思うことがしばしばでした。



私はアマノジャクなところがあるので少数派には憧れていますが、しかしついつい多数派に流されることがあります。
ここで言う多数派とは所謂世間一般普通のことを指していますが、正直多数派にいたほうが楽です。道しるべがある程度示されていて安全ですし。

この物語の主人公のように少数派であれとは思っていても多数派の目が気になり、割り切れずぶれてしまうといったような人って意外といるんじゃないのかと思いました。

また、一番少ないのは少数派として貫いてる人たちです。そして、世の中で新しいことを成し遂げている人たちの多くはこのような人たちです。
先日TVであるお店の経営者がこう語っていました。

「一旗揚げたい。雇いたい人は門外漢で思い切りのいい人。なぜならば、専門の人だと知らず知らずのうちに限界を決めてしまうが、専門外の人だと限界を決めずに革命を起こせる力を秘めているからだ。」


どこか迷いを抱えながら生きている私もこのような人たちの姿勢を見習いたいものです

短歌にふれる

2013-09-26 22:32:10 | 本(漫画、小説)
引越しが無事に終了し、少し時間ができたので早速読書会に参加してきました

課題本は「石川くん」という短歌の本でした。
有名な歌人である石川啄木の短歌の超訳を試みた一冊でして、これでもかというくらい彼の裏の姿(プライドが高い、たかり症、金グセ悪い、女癖悪いなど)をこき下ろす内容でした。とは言っても、馬鹿にしているわけではなく、あくまで尊敬した上で歌の真意に迫りたいとのことでした。

本を読む前に私が石川啄木について覚えていたことといえば、中学の国語の授業で「啄」という漢字の読み方、及び書き方が難しかったなぁということだけでした(情けないです)。

今回課題本を読み、読書会に参加してみて印象に残ったことは、彼が短歌において新たに試みた数々のこと(例:三行に分けて書く、段落をつける、「!」を多用するなど)は当時は斬新で受け入れられなかったということでした。もちろん、評価していた人もいましたが、早すぎた天才だったのかもしれません。

彼の短歌に対するモットーは現在話している言葉を使ってわかりやすく作るということでした。つまり、古い言葉を使ったりすることはせず、あくまで日常的なこと、日々思ったことを書いていくスタイルでした。それ故、彼の短歌は死後100年経った今でもわかりやすいものです。

本で紹介されていた短歌の中で私が一番気に入ったのは


不来方のお城の草に寝ころびて
空に吸はれし
十五の心


というものでした。
これは故郷である盛岡の城の草の上で寝っ転がって物思いに耽っていた15歳の頃を回想したものです。
私も城ではないですが、丘や山など小高い場所で似たようなことをときどきやるので親近感が湧きました。



今回初めて参加した新しい場所での読書会ですが、規模が大きくてびっくりしましたヽ(・∀・)ノ
人数も100人を超え、作者がゲストとして参加したり、二次会では実際に短歌を一人一首書いて批評しあったり(中学以来でした)とイベントも盛り沢山でした
今まで10人くらいの少人数のところでアットホームな感じで読書会をやっていたのでかなりギャップがありました。

規模の大小含めてこの読書会以外にも他の読書会も色々とあるようなので、まずは面白そうなところに片っ端から参加してみてから参加していく所を決めようかと思います。