ヴィアン著の「うたかたの日々」を読みました
題名の通り泡のように短い若者の青春時代の栄枯盛衰を描いたもので、奇想天外な恋愛物語でした。
最近映画も上映されていたので概要をつかむために最初は映画を見ました。
この物語は本当に奇想天外な世界でして、例えば、
・彼女の肺に睡蓮が咲き体を蝕む謎の病気
・ピアノの鍵盤を叩くことで様々なカクテルができあがるカクテルピアノ
・ありえないくらいのハイジャンプ
・腰を通じ腕は考えられないくらい回すダンス
などギャグマンガにあるような設定が現実世界に盛り込まれていました。
映画では原作にあるような殺人描写がほとんどなく純粋な恋愛を強調しているように感じました。
続いて小説を読みました。
映画と同様不思議な世界観でして(元々の原作なので当たり前ですが)、映画を見ておいたおかげで描写を想像しやすくなり、面食らうことなく物語にすんなりと入り込めました。
さて、私がこの物語で一番印象に残ったのは作品のテーマの一つであるサルトルの実存主義への警鐘でした。
この物語に出てくる登場人物はとにかく自分の思うがままに好き勝手に行動しました。金を散財したりする者もいれば、哲学者の思想にのめり込んでしまう者もいたりして最終的には皆不幸な人生になりました。
これら登場人物の生き方はまさに実存主義者のサルトルが崇拝する個人主義に則ったものです。作中にもサルトルを模した”パルトル”という人物が出てきていましたが、皮肉の意味を含めて書いたのかなぁと思いました(ただし、サルトル自身は自分に模した人物が作品に出ていることをむしろ喜んだようです)。
実存主義とは人間が自らで考え行動することに重要性を見出す考え方ですが、この物語のようにこれを徹底しすぎると破滅するという負の側面もあるということを示しているように感じられました。実際過去に考え方を曲解して悪用された歴史もありましたし、ヴィアンはこのような事態を予想した上で警鐘を鳴らしたのかもしれません。
全体として謎が多く不思議な物語でしたが、カミュの「異邦人」を読んだときにも出てきた実存主義について再度考え直すこともできましたし、総じて面白かったです。
一応恋愛小説ですが、私はあまり恋愛ものとしては読めませんでした。
一つの物語に恋愛、哲学などいくつかのテーマが散りばめられていて読み手によって読み方が幾通りも存在する奥行きがある小説としてこれは一読する価値があると感じられました。

題名の通り泡のように短い若者の青春時代の栄枯盛衰を描いたもので、奇想天外な恋愛物語でした。
最近映画も上映されていたので概要をつかむために最初は映画を見ました。
この物語は本当に奇想天外な世界でして、例えば、
・彼女の肺に睡蓮が咲き体を蝕む謎の病気
・ピアノの鍵盤を叩くことで様々なカクテルができあがるカクテルピアノ
・ありえないくらいのハイジャンプ
・腰を通じ腕は考えられないくらい回すダンス
などギャグマンガにあるような設定が現実世界に盛り込まれていました。
映画では原作にあるような殺人描写がほとんどなく純粋な恋愛を強調しているように感じました。
続いて小説を読みました。
映画と同様不思議な世界観でして(元々の原作なので当たり前ですが)、映画を見ておいたおかげで描写を想像しやすくなり、面食らうことなく物語にすんなりと入り込めました。
さて、私がこの物語で一番印象に残ったのは作品のテーマの一つであるサルトルの実存主義への警鐘でした。
この物語に出てくる登場人物はとにかく自分の思うがままに好き勝手に行動しました。金を散財したりする者もいれば、哲学者の思想にのめり込んでしまう者もいたりして最終的には皆不幸な人生になりました。
これら登場人物の生き方はまさに実存主義者のサルトルが崇拝する個人主義に則ったものです。作中にもサルトルを模した”パルトル”という人物が出てきていましたが、皮肉の意味を含めて書いたのかなぁと思いました(ただし、サルトル自身は自分に模した人物が作品に出ていることをむしろ喜んだようです)。
実存主義とは人間が自らで考え行動することに重要性を見出す考え方ですが、この物語のようにこれを徹底しすぎると破滅するという負の側面もあるということを示しているように感じられました。実際過去に考え方を曲解して悪用された歴史もありましたし、ヴィアンはこのような事態を予想した上で警鐘を鳴らしたのかもしれません。
全体として謎が多く不思議な物語でしたが、カミュの「異邦人」を読んだときにも出てきた実存主義について再度考え直すこともできましたし、総じて面白かったです。
一応恋愛小説ですが、私はあまり恋愛ものとしては読めませんでした。
一つの物語に恋愛、哲学などいくつかのテーマが散りばめられていて読み手によって読み方が幾通りも存在する奥行きがある小説としてこれは一読する価値があると感じられました。