国鉄があった時代blog版 鉄道ジャーナリスト加藤好啓

 国鉄当時を知る方に是非思い出話など教えていただければと思っています。
 国会審議議事録を掲載中です。

偉人伝 石田礼助総裁物語 第12話 持たせ切りを止めさせた石田総裁

2021-11-14 19:37:37 | 国鉄総裁

持たせ切を止めさせた、石田総裁

現在は改札へは交通系ICカードをタッチするだけが一般的となり、あの便利さは正直使い出すと癖になりますね。

最近では市中の買い物も交通系ICカードで支払えるので、ついついチャージして、それで買い物をするものですからすぐ無くなるなんてことの繰り返しをしています。

しかし、自動改札が普及するまでは、駅員がいない駅から乗った場合は車掌から補充券を発行して貰う以外は、駅で切符を購入して、改札口で入鋏して貰うことが一般的でした。

駅員が一枚一枚切符を確認して入鋏してくれるわけですが、ラッシュ時などではさばくのが大変と言うことで、長らく乗客に切符を持たせたまま駅員が切符を切るという持たせ切りが横行していました。

これを全面的に止めさせたと石田総裁が幹部に伝えたとして、朝日新聞が特ダネとしてアップした後、各社が後追いしたそうです

石田総裁は就任直後から、ずっと持たせ切り廃止を提唱していた

持たせ切りの開始に関しては石田総裁が就任直後から気にしていたようで、国鉄部内紙、国鉄線1964年6月号の「旅客サービス向上運動について」と言う記事を参照しますと、導入部分から当時の国鉄の様子が窺えます。

当時の様子を、国鉄部内紙の1966年5月号「世論アラカルト」という記事では以下のように書かれています。

利用者の国鉄に対する不満は、大きくわけて特急券、寝台券等がなかなか手に入らないとか通勤電車が殺人的混雑をするとかいう、国鉄の基礎的輸送力不足、投資不足に起因する物的サ
ービス面と、出札係が、つり銭を投げたとか、改札係が不親切であったとかいう人的サービス面、つまりフロントサービスの二つにわけれる。
中略
後者の人的サービスについては目立った改善がなされておらず、旅客の国鉄に対する苦情不満は依然あとを絶たない。

と有りますように、もちろん親切な出札係や改札係がいたとしても、概ね世論の論調はこんな雰囲気でした。

そこで、フロントサービス向上と言うことで、サービス向上運動が発達するわけですが、これによりますと駅での接客、特に乗車券類の販売などに時間が取られがち(当時はマルスは殆ど導入されて居らず)で、長い時間を待たせることになるので、これを改善させたいとしています。

特に改札における持たせ切については総裁からも特に注意されているとして以下のように特に記述しています。

窓口の整備強化、座席予約の自動化等を促進する必要がある。また改札のいわゆる「持たせ切り」については総裁からもとくに注意をうけている。

と有るように、就任直後の頃から特にこうした行為に関しては総裁は意識していたことが窺えます。

世論は、持たせ切廃止よりももっと接客サービスをよくして欲しいと注文

石田総裁は、国鉄運賃の改定を行ったこともあり、更なるサービスの改善と言うことで、特に持たせ切り廃止を強く厳命したのでしょう。
国鉄線1966年5月号に掲載されていましたので、少し長いですが、引用してみたいと思います。

『・・・・・まるでお客を数でこなすような改札態度には、折り目正しい明治人としてハラハラする。ことに大幅値上げ後、サービス向上によけい心をつかう総裁は、気になって仕方がなかったらしい。営業関係の幹部を呼んで注意した。
幹部たちも知らないわけではなかった。しかし現場にも事情がある。
ラッシュ時の駅では、人手の少ない改札係が一人で両側の改札口を受持たねばならない。ハサミを持つ手の側のお客から、いちいち別の手で切符を受取っていたのでは、どうにも間に合わないことがある。
それがクセになって、ついズルズルにーーという説明を問いても、石田さんは承知しなかった。
「事がらは小さいかもしれんが、お客に対する態度の基本に関することじゃないか。人手のやりくりには、まだ工夫の余地があるだろう。」・・・・

国鉄線 1966年5月号 世論アラカルト

と言うことで、それまで慣例となっていた持たせ切りを石田総裁は止めさせようとしたのですが、実際持たせ切りとはどんなイメージなのでしょうか。

簡単にいえば、乗客は切符を手に持って改札が係の駅員の入鋏ハサミの前付近に持っていく、駅員は乗客が持ったままの切符に入鋏するもので、入鋏ハサミが常に動作しているので、誤って乗客の指の怪我をさせると言うこともあり得るわけで、評判としてはあまり良くなかったのも事実ですが、利用客としてもやむを得ないという思いはあったようです。

それが、以下の内容のなるのですが。

接客職員のフロントサービスがいつの場合でもジャーナリズムや国民全般から批判の的となっている。改札掛の持たせ切りは今までも何回か投書などにとりあげられていたが、要員、作業方法などで完全廃止はむつかしいとされていた。
今回の総裁指示の「持たせ切り廃止」は、朝日新聞の特ダネの形で報道されたが、その後、読売・東京新聞のコラムでとりあげられており、産経は国電主要駅に取材して、その効果を調べあげている。

と書かれていますが、世論としては持たせ切りが必ずしも悪いと思っていないようで、

持たせ切りのイラスト、国鉄線 1966年5月号 世論アラカルトから引用

産経新聞の朝刊には、以下のように載っていたと記述されています。

三月二十二日付産経〔朝刊〕の記事によりますと、旅客の多いラッシュアワー時には持たせ切りのほうが早いし、旅客の中も承知の上でキップを切リやすいように差出す人もいるわけで。

『やめてほしいが、混雑するときはムリかもしれない』とか、『急いでいるときは持たせ切りをしやすいようにキップをだしています。問題はそれより駅員の心構えではないですか。キップをいちいち受取る駅員でも横柄な感じの人は多いし』・・・・という言葉をのせている。

とあるように、国民の間では朝ラッシュ時などの持たせ切りはやむを得ないと思うが、それ以上に駅員の態度が横柄であったりするのは何ともならないものかということで、この頃世論としては、真のサービス向上は、国民の望みであったと言えそうです。

そして、国鉄に対しては、明治以降の官設鉄道の頃からの「乗せてやる」「運んでやる」という意識が根強く残っているのではないかという意見も有ったようです。

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