失踪

１０日前に入院し、直ぐに退院は出来たものの相変わらず体調不良が続いている。
今日も椅子に座っているのがやっとだ。
私は年間通してほとんど夢は見ないのだが、先日は夢に魘されて夜中に目が覚めた。
普段夢など見ないからか、見る夢と言えばインパクトの強い悪夢が多い。

「ドーン」と言う凄い轟音と共に夢が始まった。
近くで、「飛行機が落ちたぞ」と言う声がして、その声の方を振り向くと不気味な灰煙が上がっている。
近くまで行くと、目を背けたくなる様な惨状が広がっていた。
鼻を突く様な、嫌な臭いを夢の中で感じたのも初めてかも知れない。

機内から放り出された人々からは、「助けて」の声すらない。
皆、即死の状態だ。
「生きている人はいないのか？」と、辺りを見渡すと座っている人を見つけた。
近寄ると、その人には腰から下が無い。
視線だけは合うので、私の身体も凍り付く。

目が覚めた。
夢の中のパニックがまだ続いている。
椅子に座り、机の上に置いたままになっていたペットボトルの水を飲み干す。
ネットで飛行機事故のニュースはなかったか調べてみる。
…ない。

ただ、その日の夜のネットでは、『チリ沖で２１人乗り空軍機墜落』と言うのを、トピックスで目にして衝撃を受けた。
チリの人気司会者の死亡も伝えられていた。
状況こそ違うが、これが、『予知夢』と言うやつか？
まぁ～こうした事の、一切を信じない私ではあるが…！？

体調が悪いせいか昨夜も夢を見た。
もちろん、よろしくない夢だ。
デスクから、「会社で失踪者が出ました」と言う連絡が携帯に入った。
思わず、「誰が？」と声を張り上げるとデスクは、「代表です」と言っている。
「だ、代表？私じゃないか？」と言ったら、電話は既に切られていた。

目が覚めて考え込んだ。
夢は潜在意識の現れとも言うから、私の中にそうした願望が無いわけでもないのだろう？
「こ、これも予知夢か？」と思ってしまう。
でも現実逃避は、男の最後の夢なのかも知れない。
少なからず、そう思う人もいるはず。

例年、警察へ届けが出されている失踪者数は１０万人を超えている。
届けを出さない家族もいるので、失踪者はその倍はいるだろうとも言われている。
もちろん、この中には事件や事故に巻き込まれた人もいるだろうが、いずれにしても凄い失踪者数である事に違いはない。
残念でならないが、北朝鮮の拉致被害者の事も思い起こす。

体調が悪いせいか、このネガティブな、『失踪』を真剣に考える私がいる。
それでも、仕事、友人、家族を全て捨ててしまう事になるのだから、その重さは尋常ではない。
私には、『失踪』をした友人が二人いる。
一人は所在はわかったのだが、友人、知人、縁故者までと全ての人とのコンタクトを拒んでいる。
もう一人は行方不明のまま。

ところで私だ。
「『失踪』はこんな感じでしてみたいな？」と思ったのが、タイトルのイラストの様な雰囲気。
「お金はあってもなくてもいいけど、あった方がやっぱりいいのかな？」なんて事も考える。
「野垂れ死にも考えなくてはならないから、せめてお洒落して出よう」と考えたりもする。
でも、何を持って行ったらいいのか考えたが思い浮かばない。
やっと思いついたのが、キャディーバッグ（困笑）。
結局私の、『失踪』って遊びに行くレベル（苦笑）！？