マヌケ便り

テレビ番組リサーチ会社の代表をしています。

自主規制

2006-04-24 00:17:48 | Weblog
 前項で私は『異人さん』と言う表現は自主規制の対象になるのかな?…と自問自答してしまった。実は、こんなことがあったからなのである。

 番組のナレーション原稿の中で、私は『インディアン』という表現を使ったのである。そしたらMA(音声編集作業)の時に、番組の女性プロデューサーから「『インディアン』という表現は使っちゃダメよ」と言われてしまったのだ。私は『えーっ、何で?』と思ってしまったのである。メジャーリーグには『インディアンズ』というチームもあるし、昔はCMでも 『インディアン嘘つかない』とか言っていたはずだ。私は「それじゃあ、どんな表現に代えたらいいんですかね?」と言うと、その女性プロデューサーは「『ネイティブアメリカン』にして下さい」と言うのだ。それでは、この番組を見る子供なんかは、理解ができないだろうと思うのだが、ダメなものダメなのだ。それが放送媒体の中にある自主規制なのだから仕方がない。
 
 だが、例えば『キチガイ』と言う表現だが、雑誌の中ではバシバシ使われているし、先日観劇した劇団○○の舞台の中でも、誰かがその言葉の入った台詞を言っていた。何故に放送媒体だけが、特化して規制されてしまうのであろう。しかも、年々厳しくなっている。   

 私が小学生の頃に放送していた、アニメの『巨人の星』では、主人公星飛雄馬が高校入試の面接の中で「俺の父ちゃんは、日本一の『日雇人夫』です」という台詞があった。それが、数年後に再放送された時には「俺の父ちゃんは日本一の『プー』です」に代わっていたのである。星飛雄馬の父、一徹は大酒飲みである。これでは、ただの飲んだくれになってしまう。

 そもそも自主規制とは、差別用語を撤廃するためのものだが、その締め付けが、かえって逆差別になってしまうのではと私は懸念してしまう。

 私が、番組の中で使ってはいけない不適切な表現がある、と言うのを知ったのは高校生の時だ。プロ野球中継の時である。ゲスト解説は、あの400勝投手の金田さんだった。その試合中に、三塁手が、滑り込んできたランナーのスパイクで、足を怪我してしまったのである。その三塁手が、怪我をした足を引きずってベンチに戻っている時である。解説の金田さんが「痛そうやねぇ、ビッコ引いているもんねぇ」と言ってしまったのだ。それでアナウンサーが金田さんに、無言のダメ出しをしたのである。そしたら、あの金田さんである。「えっ、ビッコって言っちゃダメなの?ビッコはダメなのかぁ、じゃあ何て言えばいいんだろうね?ビッコはビッコだもの」と更に連呼しているのだ。番組は突然CMに変わったのである。

 そのCMの間、私は思い出した事があった。子供の頃に見た番組の中で、出演していた沢山の子供の中に、1人だけ番組中に『オチンチン』を連発していた子供がいた。その子供はCMが開けた時にはいなくなっていて、その子供が座っていたところには、代わりに熊のぬいぐるみがおかれていたのだ。金田さんも、もしやと思ったのだが、当然そんなことはなかった。解説がいなくなったのでは番組にならない。

 その後も、相変わらずの金田節で解説を続けている。ランナーが一塁に出ていて、投手が一塁手に牽制球を送ったのだ。アナウンサーが「おっと、ピッチャー一塁に牽制、ボールは大きく逸れて、一塁手がジャンプしてキャッチ」金田さんがそのアナウンサーの後に続けて言ったのだ。「ボールやね」牽制球にストライクもボールもない。アナウンサーが、その言葉を打ち消すかのように、大慌てで言ったのである。「セーフ。一塁ランナー、セーフです」とにかく、この日の金田さん、いやカネヤンは最高だった。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿