怒られた

　夕方、中学１年の息子から、「お父さん、ボレーの練習をしたいから公園に付き合ってよ」と言われた。息子は中学でテニス部に入っている。

　「いいよ」とは返事をしたのだが、公園まで行くのはかったるいので、「マンションの敷地内にある、駐輪場の脇のところのスペースでやろう」と言ったのである。すると息子から「マンションの敷地内で、ボール遊びはしちゃいけないでしょう？」と咎められた。

　「大丈夫、大丈夫、遊びじゃないんだから。これは練習」と何の理屈にもなっていないのだが、こう言うと息子は渋々「………わかった」と言って了承した。

　…と言うことで、早速ボレーの“練習”を始めたのだが、いきなりボールが駐輪場の屋根の上まで飛んでしまった。ボールは落ちてくる気配がない。どうやら屋根の上のストッパーに引っかかってしまったらしい。

　仕方がないので、私が駐輪場の屋根まで登ったのである。ところがそこに、管理人のおじさんがやってきたのだ。そして息子に声をかけた。「ラケットを持っているようだけど、ボール遊びはしていないだろうね？」息子はバカ正直にも「いえ、していました。すみません」と謝っている。

　私は、屋根の上で息を殺して、『あっ、バカだな～あいつ、ボールがないんだから素振りでもしているって言えばいいのに』と思っていたら、管理人さんが息子に「ボールはどうしたの？」と更に突っ込んでいる。

　息子は正直者だ。しかも、正直の上にバカがつく。躊躇うことなく私の方を指さした。管理人さんは、振り向いて私の方を見て驚いている。驚くのも無理はない。ボールを取るのに、駐輪場の屋根の上に登る大人など普通はいない。そして怒られた。「お父さん、危ないですから直ぐに降りて下さい」と言って目をつり上げている。

　降りると更に追い打ちをかけられた。「子供の見本にならなくてはいけない大人が、いったい何をやっているんですか？」と、鼻息が荒い。私は「いえね、ボールが屋根の上にいってしまったものですから取りに…」と言っている先から、「そんな事はわかっています。そもそも敷地内でのボール遊び自体が禁止なんですよ」

　私は素直に「すみませんでした。もうしません」と言うやいなや、管理人さんは「当たり前です。今後は、息子さんの見本となれるような、責任ある行動をとって下さい」と言って去っていった。

　管理人さんがいなくなった後で、私は息子に「何で指なんか差しているんだよ、…ったく」と言うと、息子は「自分が悪いんじゃないか？それに公園でやろうって言っているのに、ここでいいってきかないし」と言って息子も怒っている。

　もっともだ。これでは、どっちが親でどっちが子供かわからない。それにしても、管理人さんと息子に怒られて、反省できない私は問題あり？何せ、見つかってしまったタイミングの悪さに、舌打ちをしているのだから。