三つ子のたましい『ままごと』

『ままごと』…って言うくらいなんだから女の子だけで遊んでりゃいいのに、何でボクの様な男の子を無理矢理入れたがるのだろう？
まぁ～パパ役も必用だからなんだろうけど…。
今にして思えば、ままごとのママ役をやる女の子って強いんだよな。
だからボクの様な従順な子は、直ぐに引っ張り込まれてしまっていた。
他に誰かも引っ張り込めばいいのに…といつも思っていた。
ままごと遊びはだいたいがワンパターンで、ママ役の女の子が料理を作って…と言っても、切られているビニール製の材料に、木の包丁を使って切ったフリをするだけなんだけど、食べる役のボク達はその間待っているだけ。
何と女王様的な遊びなんだ。
しかも食べる時には、「いただきます」を言わされ、言わないと食べる事が出来ない。
食べたくないから言わないでいるんだけど、言わないと今度は叱られる。
二度までも言うが、とんでもない女王様遊びだ。



ママ役の子は大人になったら、ＳＭでは絶対に女王様役なんだろうと思ってしまう。
子供役の女の子は、大人になったら絶対にドＭで間違いない。
既にこの頃に人格形成されてしまっていると思う。
ところでそのままごとでは、ボクは料理が出来上がるまではおとなしくしているのだが、料理が出来て出されそれを食べるように強要されると、今度はだいたいは固まってしまっていた。
…できない。
何で他の女の子は、あんなに食べるフリが上手なんだ。
女優だ。



ボクも、無理矢理食べさせられるので本当に仕方がなくやってはいたが、自分でもあの頃既にわかっていた。
何てボクはこんなに演技が下手なんだ…と。
大根役者だ。



いつだったか、ボク以外の男の子が無理矢理入れられていた事があった。
名前は政昭（まさあき）君と言って、まあちゃんと呼ばれていた子だ。
ボクはまあちゃんの観察に入る。
何て楽しそうなんだ。
ママ役の女の子の作る料理を、楽しそうにしながら覗き込んでいる。
出来たら出来たで、その料理を美味しそうに食べるフリをしている。
あの頃ボクは、「まあちゃん、文化祭のお芝居はキミが主役でいいよ？」と心の中で思っていた。
そして今、もし会う事があったら言ってやりたいね、「オマエ、イメクラに填ってない？」って。
それにしても、ママ役の敢えて名前を出すが、和江ちゃんのご満悦そうな顔と言ったらなかったね。
幸いにもボクはまあちゃんの出現によって、ままごとのメンバーから外される事になった。
お払い箱だ。
ありがとう、まあちゃん。