常磐ハワイアンセンター

　先般、私の先輩で同郷の落語家、桂幸丸師匠の『心が幸せに丸くなる会』という独演会に招待されて行ってきた。師匠は私より数歳年上になるだが、高校、大学の先輩と言うわけではない。同じ福島県出身ではあるのだが、共通点は単にそれだけで、知り合った切っ掛けは、師匠の奥さんが私の大学時代のインカレのサークルの後輩だったからだ。

　その師匠の持ちネタのひとつに『常磐ハワイアンセンター物語』と言う噺がある。『常磐ハワイアンセンター』と言えば、昭和４０年にできた総合レジャー施設だ。当時としては、非常に画期的な施設だったわけである。しかも、つくられたのは東北地方は福島県という北国だったのだ。これが実は、本州最大の炭鉱会社常磐炭鉱の、斜陽になった炭鉱の危機を救う為の、再生事業だったのである。

　ホテルのフロント、接客係、そしてバンドマンまでが、元炭鉱夫である。炭で汚れた顔を笑顔にかえて、炭鉱人の炭鉱人による炭鉱人のための『常磐ハワイアンセンター』が出来上がったのである。これが、大成功をおさめたのだ。書いてしまうと簡単なことだが、仕事が１８０度ガラリと変わってしまうのである。仕事の内容がまるで違うのだから、並大抵のことではなかったのだ。

　その『常磐ハワイアンセンター』の目玉が、ハワイアンダンサー、いわゆるフラガールである。ダンサーはもちろん炭鉱夫の娘さんが中心で構成されてはいたが、奥さんまでもが入っていたという。昨日、このハワイアンダンサーをモデルにした映画『フラガール』を観てきた。昨秋公開時に見逃していたのだが、師匠の『常磐ハワイアンセンター物語』の噺を訊いて是非観たくなったからだ。

　ネットで調べてみると、東京では今月１６日まで、下高井戸シネマで唯一上映しているではないか。それで、早速昨日足を運んだのである。『いや～面白かった。映画館で観ることができて良かった』という感じである。先日発表された『第８０回（０６年度）キネマ旬報ベスト・テン』でも、日本映画作品賞、助演女優賞（蒼井優）など、３冠を獲得している映画だけのことはあった。

　それにしても、私は子供の頃に、周りから「ハワイに行って来た。日本の中のハワイ、『常磐ハワイアンセンター』だけど」なんてことをよく聞かされていたのが、それでも行ってみたくて仕方がなかった。ウチは両親が教師をしていて共稼ぎで忙しく、更には同じ福島県にありながら、『常磐ハワイアンセンター』までは全くの西と東で、車でも電車でも東京へ行った方が早いくらいだったので、子供の頃は一度も行ったことがなかった。現在は『スパリゾートハワイアンズ』に名前こそ変わってはいるが、『温泉の大陸』そして、『常夏の楽園』に是非行ってみたいと思っている。