熟睡したい

『ソラリスの陽のもとに』という名作古典SFがあります。二度映画化された有名な小説です。登場人物は宇宙ステーションで働く学者たちで、人類の代表として選ばれた心身共に健康で屈強なエリートのはずですが、そんな彼らでさえ地球から遠くはなれて暮らすうち、極度のホームシックのため不眠におちいります。

そんなときひとりの学者が画期的な大発明をします。レポート用紙に切れ込みを入れて短冊状のビラビラにしたものをエアコンの吹き出し口に取り付けるのです。すると風に吹かれた短冊がサワサワと音を立てます。部屋を真っ暗にしてベッドの上で耳をすませていると、これがまるで木の葉のこすれる音のように聞こえるというのです。そしてなつかしい故郷、地球の森の中で昼寝をしている気分になって熟睡できるのだそうです。

小説では、こんなことをする同僚を「弱い人間ども」と見下していた天才学者までもがやがて自分の部屋にこの「安眠装置」を取り付けてしまう様が描かれ、宇宙ステーション内にただよう閉塞感や絶望感を表現する小道具として効果を上げています。

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私は一時期これにハマリまして、いろいろな紙や切り方でいかにもそれらしい音が出るように工夫していました。実は今も私の寝室のエアコンには付いています。でも本当は一度でいいから本物の森の中で眠ってみたいものですね。大量の酸素とフィトンなんとかを吸って、ひと晩で十歳くらい若返りそうな気がします（あちこちからツッコミが入りそうなのでマイナスイオンとは書かないよ）。目の細かいメッシュ素材の棺桶みたいな完全防護の虫よけ網がいるかな？

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