相棒には時々、最初に出演者ありき、で作られる回があるのではないかと言われるけど、今回はまさにそんな感じだった。
今や二時間ドラマ、サスペンスものの雄(にはまだ遠いかな)、川崎麻世のためのストーリーだったような。
相棒が川崎麻世に出会ったら――こうなりました、という趣向で、たぶん第4話「せんみつ」の平田満の時もそうだったのかもしれないけど、まあ、こういう回もいいんじゃない。
ゲスト俳優とのがちんこ対決、それも相棒の見所の一つだと思うし。
あたし的には内容はいまひとつだと感じたけど(あ、相棒中の秀作と比べてってこと。他のドラマとは比べてません)、それももしかしたら、わざと「川崎麻世的」風合いを出すのを狙って作ったとしたら、これはなかなかすごい。
川崎麻世って、ハンサムでスマートなんだけど、どこかうさんくさい趣きがある。ちょっとワルなんだけど、それも簡単に足がつくという手合い。
二時間ドラマで、彼がこうした役を演じてるのを見たけど、ほんとはまり役だった。
だいたい彼の出るドラマ自体、どうってことのない、すらっと流せる軽いものが多い。
そうした外見と裏腹の(あるいは比例した?)底の浅さ、うさんくささ、ウソっぽさ――を持つ人物を演じさせるとしたら、他にない人材であることは確かだ。
つまり、川崎麻世って・・・例えば今回、あの足の長さを見ましたか?
背は薫ちゃんと変わらないぐらいに見えたけど、足は薫ちゃんの腰のところまで来てた。
40過ぎててあの細身、いまだ少年体型。
そして、あの黒の革ジャンの着こなし。
フツーの人間が彼見て思うのは、「ありえねー」「ウソだろー」でしょ。
男性の場合、なんだあのヤロー、チキショー(ぶつぶつぶつ・・・)と嫉妬交じりの一人言に終わる。
女性の場合は・・・「こんな人があたしなんて真面目に相手するはずないよね・・・」とやっぱり劣等感に襲われてしまう。
そうした不信と反感。「こんなことがあっていいはずがない」という憤り。
トラディショナルな日本人体型を持つ多くの人々の怨嗟の声。
実はアンドロイドに違いない、という疑惑をそらすため、奥さんのカイヤとのあのドタバタ騒ぎも芸能レポーター向けに演出したのでは。
”体型貴族”である自分は、実はダメ夫の恐妻家なんだ、と民草の不満をそらすのが目的。少なくともその効果を出すのに貢献したことは間違いない。
そうやって、自分もみんなと同様、間抜けで腰抜けなところがあるんだ、と人間臭さを必死にアピールしようとした・・・かどうかはしらないが、あたしが思うに、彼はある程度意識的に、こういうキャラをなぞっていると思う。
(だとしたら、なかなかどうして、自他への観察眼と洞察力にたけているではないか)
で、今回の相棒でも、直木賞受賞の流行作家でルックスも抜群なのに、実はのぞきが趣味という変態男、北之口秀一を演じた。
底の浅さを感じさせるためか、結局彼の書いた本には、特に事件と結びつくほど奥行きのある内容もなく。
事件解決のヒントになるかと右京さんが片っ端から読んだものの、十数冊に上る彼の著作は、あっさり古本屋に直行。
しかも全部で菓子折り二箱分の値段しかつかなかった。
饅頭一個二百円として、一箱十個も入ってなかったから、いくら高くても四千円、もしかしたら二千円ぐらいかも。
たまきさんが一晩で読んだ、と言ったことからもわかるように、読み捨ての大量生産作家、といえるかも(一種のハーレクインか)。
しかし、北之口の本の話をするだけで、声がうわずり、はしゃぐたまきさんと美和子さん(しかも、たまきさんがあんなにおどけるなんて!)。
女たちの心をそんな風にハイにさせてしまう力が、やはり川崎麻世のルックスとその手のストーリーにはあるのだ。
そして、あたしは見たぞ・・・・たまきさんを、ちょっと尋常でない目つきでにらんでいた右京さんを。
で、はしゃぐたまきさんと美和子さん、それに調子を合わせてつきあう薫ちゃんをよそに、遠い眼をして考え込む右京さん(そして北之口のトリックを見破る)。
すごく抑えた演技でした。
よかった。
あたしが思うに、熱演/名演家の水沢豊のことだから、こんなキャラの川崎麻世を迎え、ではそれに対して自分はどういう演技で臨むか、きっと考えたに違いない。
そして水沢豊の選択は、川崎麻世をひきたたせて、自分は地に溶け込むこと。
平田満さん出演の時、ものすごい形相の刑事顔を見せた時の演技とは正反対。
やっぱり、いい俳優は、自分に与えられた役柄や全体の筋を見渡すだけでなく、他の役者さん、特にメインでくる役者さん(相棒の場合、だいたい容疑者)と自分との対比も常に考えながらやっているんだなあ、と気づかされる。
ところで、あたしがぜひぜひ相棒に呼んでほしいと思っているのは、天海祐希さん。
超シビアな顔も出来れば、ひょうきんな味も出せる、魅力あふれる人だから、水谷さんと絡んだらどんなものができるのか見てみたい。
あとは黒木瞳かな。大物過ぎて無理かもしれないけど、たぶんすごいことになりそうで。
演じ方といえば、もう一人印象に残ったのが、あたしにとっては伊丹ンこと川原和久。
やっぱり川崎麻世と同じぐらいの身長なんだけど、あの、妖怪というか死人というか怨霊というか、なんとも形容しがたい前髪で、インパクトのあるしかめっつらをしてみせ、甘い川崎麻世のルックスとすごい対比を作ってた。
でも、この人がそうした見せ場を作るのは、一回の放送でだいたい一度だけ(前回、取調室で大げさにのけぞる演技もそうだったけど)。
番組中、何度か出番があっても、他はそうやって流した方がより印象的になること、そうした強弱のつけ方をよく知っている。
この人の舞台を一度見に行ってみたいな、と思わせる。
この人なら、きっと観客を心から楽しませ、もてなしてくれそうだ。
ところで、今回の相棒では、作家北之口は完璧なアリバイを用意、右京さんも最初そう思った、ということになっているが、あたしは異義あり!
というのは、写真を撮ったあの三田二丁目の交差点って、慶應の前の桜田通りだよね。
おおっ、東京タワーがこんなに大きく見える、とのけぞるスポットで有名。
そこから殺人現場の白金七丁目まで、車で二十分で行くのは無理、と番組では確か言っていたと思うけど。
ウソでしょー!もちろん白金七丁目なんて住所はない(白金六丁目まで)。
でも恵比寿寄りの付近だとして、目黒通りに出て、夜だったら、下手したら十分もしないで車で行けるんじゃない?
十分犯行可能ではないか。
二十分じゃ無理っていうなら、犯行現場を白金じゃなくて山手線外側の方にしないと。
でも、そうしたら北之口は、なぜそんな遠くのスポーツセンターにわざわざ通っているのかということになって、つじつまあわせの説明をしなければならず面倒なので、近場にしといたのだろうけど。
えー”細かいことがいつも気になって、それが私の悪い癖”ですが、右京さんが、なぜ真っ先にその矛盾を突かなかったか、不思議。
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今や二時間ドラマ、サスペンスものの雄(にはまだ遠いかな)、川崎麻世のためのストーリーだったような。
相棒が川崎麻世に出会ったら――こうなりました、という趣向で、たぶん第4話「せんみつ」の平田満の時もそうだったのかもしれないけど、まあ、こういう回もいいんじゃない。
ゲスト俳優とのがちんこ対決、それも相棒の見所の一つだと思うし。
あたし的には内容はいまひとつだと感じたけど(あ、相棒中の秀作と比べてってこと。他のドラマとは比べてません)、それももしかしたら、わざと「川崎麻世的」風合いを出すのを狙って作ったとしたら、これはなかなかすごい。
川崎麻世って、ハンサムでスマートなんだけど、どこかうさんくさい趣きがある。ちょっとワルなんだけど、それも簡単に足がつくという手合い。
二時間ドラマで、彼がこうした役を演じてるのを見たけど、ほんとはまり役だった。
だいたい彼の出るドラマ自体、どうってことのない、すらっと流せる軽いものが多い。
そうした外見と裏腹の(あるいは比例した?)底の浅さ、うさんくささ、ウソっぽさ――を持つ人物を演じさせるとしたら、他にない人材であることは確かだ。
つまり、川崎麻世って・・・例えば今回、あの足の長さを見ましたか?
背は薫ちゃんと変わらないぐらいに見えたけど、足は薫ちゃんの腰のところまで来てた。
40過ぎててあの細身、いまだ少年体型。
そして、あの黒の革ジャンの着こなし。
フツーの人間が彼見て思うのは、「ありえねー」「ウソだろー」でしょ。
男性の場合、なんだあのヤロー、チキショー(ぶつぶつぶつ・・・)と嫉妬交じりの一人言に終わる。
女性の場合は・・・「こんな人があたしなんて真面目に相手するはずないよね・・・」とやっぱり劣等感に襲われてしまう。
そうした不信と反感。「こんなことがあっていいはずがない」という憤り。
トラディショナルな日本人体型を持つ多くの人々の怨嗟の声。
実はアンドロイドに違いない、という疑惑をそらすため、奥さんのカイヤとのあのドタバタ騒ぎも芸能レポーター向けに演出したのでは。
”体型貴族”である自分は、実はダメ夫の恐妻家なんだ、と民草の不満をそらすのが目的。少なくともその効果を出すのに貢献したことは間違いない。
そうやって、自分もみんなと同様、間抜けで腰抜けなところがあるんだ、と人間臭さを必死にアピールしようとした・・・かどうかはしらないが、あたしが思うに、彼はある程度意識的に、こういうキャラをなぞっていると思う。
(だとしたら、なかなかどうして、自他への観察眼と洞察力にたけているではないか)
で、今回の相棒でも、直木賞受賞の流行作家でルックスも抜群なのに、実はのぞきが趣味という変態男、北之口秀一を演じた。
底の浅さを感じさせるためか、結局彼の書いた本には、特に事件と結びつくほど奥行きのある内容もなく。
事件解決のヒントになるかと右京さんが片っ端から読んだものの、十数冊に上る彼の著作は、あっさり古本屋に直行。
しかも全部で菓子折り二箱分の値段しかつかなかった。
饅頭一個二百円として、一箱十個も入ってなかったから、いくら高くても四千円、もしかしたら二千円ぐらいかも。
たまきさんが一晩で読んだ、と言ったことからもわかるように、読み捨ての大量生産作家、といえるかも(一種のハーレクインか)。
しかし、北之口の本の話をするだけで、声がうわずり、はしゃぐたまきさんと美和子さん(しかも、たまきさんがあんなにおどけるなんて!)。
女たちの心をそんな風にハイにさせてしまう力が、やはり川崎麻世のルックスとその手のストーリーにはあるのだ。
そして、あたしは見たぞ・・・・たまきさんを、ちょっと尋常でない目つきでにらんでいた右京さんを。
で、はしゃぐたまきさんと美和子さん、それに調子を合わせてつきあう薫ちゃんをよそに、遠い眼をして考え込む右京さん(そして北之口のトリックを見破る)。
すごく抑えた演技でした。
よかった。
あたしが思うに、熱演/名演家の水沢豊のことだから、こんなキャラの川崎麻世を迎え、ではそれに対して自分はどういう演技で臨むか、きっと考えたに違いない。
そして水沢豊の選択は、川崎麻世をひきたたせて、自分は地に溶け込むこと。
平田満さん出演の時、ものすごい形相の刑事顔を見せた時の演技とは正反対。
やっぱり、いい俳優は、自分に与えられた役柄や全体の筋を見渡すだけでなく、他の役者さん、特にメインでくる役者さん(相棒の場合、だいたい容疑者)と自分との対比も常に考えながらやっているんだなあ、と気づかされる。
ところで、あたしがぜひぜひ相棒に呼んでほしいと思っているのは、天海祐希さん。
超シビアな顔も出来れば、ひょうきんな味も出せる、魅力あふれる人だから、水谷さんと絡んだらどんなものができるのか見てみたい。
あとは黒木瞳かな。大物過ぎて無理かもしれないけど、たぶんすごいことになりそうで。
演じ方といえば、もう一人印象に残ったのが、あたしにとっては伊丹ンこと川原和久。
やっぱり川崎麻世と同じぐらいの身長なんだけど、あの、妖怪というか死人というか怨霊というか、なんとも形容しがたい前髪で、インパクトのあるしかめっつらをしてみせ、甘い川崎麻世のルックスとすごい対比を作ってた。
でも、この人がそうした見せ場を作るのは、一回の放送でだいたい一度だけ(前回、取調室で大げさにのけぞる演技もそうだったけど)。
番組中、何度か出番があっても、他はそうやって流した方がより印象的になること、そうした強弱のつけ方をよく知っている。
この人の舞台を一度見に行ってみたいな、と思わせる。
この人なら、きっと観客を心から楽しませ、もてなしてくれそうだ。
ところで、今回の相棒では、作家北之口は完璧なアリバイを用意、右京さんも最初そう思った、ということになっているが、あたしは異義あり!
というのは、写真を撮ったあの三田二丁目の交差点って、慶應の前の桜田通りだよね。
おおっ、東京タワーがこんなに大きく見える、とのけぞるスポットで有名。
そこから殺人現場の白金七丁目まで、車で二十分で行くのは無理、と番組では確か言っていたと思うけど。
ウソでしょー!もちろん白金七丁目なんて住所はない(白金六丁目まで)。
でも恵比寿寄りの付近だとして、目黒通りに出て、夜だったら、下手したら十分もしないで車で行けるんじゃない?
十分犯行可能ではないか。
二十分じゃ無理っていうなら、犯行現場を白金じゃなくて山手線外側の方にしないと。
でも、そうしたら北之口は、なぜそんな遠くのスポーツセンターにわざわざ通っているのかということになって、つじつまあわせの説明をしなければならず面倒なので、近場にしといたのだろうけど。
えー”細かいことがいつも気になって、それが私の悪い癖”ですが、右京さんが、なぜ真っ先にその矛盾を突かなかったか、不思議。
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他のところでも言われてて
あぁ~世間ではそういう印象なんだなぁと
ちょっと笑ってしまいました。
大量生産作家
なるほど、そういう考えもあるのですね。
右京さんも読むのが早いように
たまきさんも読むのが早いんだなぁと思ってました。
2人なら一度読んだだけで細かな所まで把握できてそうです。
インパクトのあるいい役者さんでした。
客演だったので、メインの役じゃないから相棒と同じですね。ガツンと決めるところと、流してしまって大丈夫なところと。
見ていて安心していられる役者さんです。
…相棒って、比較的そういう役者さん多いですよね?
殺人者なら順当ですが川崎麻世にノゾキっていうのは意外性が高くて面白かった。
あの最後の「罪名は決められない」っていうセリフがよりリアルです。
普通ノゾキっていうとサエナイ男って相場が決まってますから。
あんな足長で堀の深いノゾキっていうのは思い切った発想だと思います。
あといまやイタミンの見せ場はこのシリーズのもう一つの見所ですね。
今回はどこで?と期待してしまいます。
beginnersさんの地理的な感想は、さすが地元と思うもので興味深く読ませてもらいました。
川崎麻世さんって、私が子供の頃から見ているんですが、ほんと、変わらないんですよね。
その辺がうさんくさいって感じます(笑)。
たまきさんは、あの右京さんと伴侶だった(今も心の中では?)人だし。
二人で本を読んだら、たまきさんがポイントになるところを突っ込んで、右京さんにヒントを与えるとか、ですかね。
感想を教えていただいて、ありがとうございました!
やっぱり客演でも(客演だからこそ)、光る演技をされる方なんですね。
>見ていて安心していられる役者さんです。
…相棒って、比較的そういう役者さん多いですよね?
ほんとですー。
だれか、相棒に出ているサブの役者さんの所属団体や近日公開の舞台の一覧とか作ってないですかね。
って、他人頼みで、すみません・・・
あんな足長で堀の深いノゾキっていうのは思い切った発想だと思います。
そうですか、そういうことをするのは、一般的にさえないタイプの人たちに多いんですね。
北之口は小説家なので、人の裏面とか繕っていない部分を見るのが好き、ということなのでしょうけど、のぞきということになると、たぶん誰もが「まさか」と思ってしまうような、見場のいいタイプなので、ばれずにここまで来たんですかね。
>地理的な感想は、さすが地元と思うもので興味深く読ませてもらいました。
ローカルですみません・・・