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八丈島の庭 大里集落の玉石垣

2022年01月28日 | 日記
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八丈島の庭園 大里の玉石垣



八丈島では、江戸時代の初めごろから、死罪にするほどでもない罪人を、いわゆる島送りにしてきました。

鬼平の異名で盗賊どもに恐れられた長谷川平蔵から、罪一等を許されて、永代橋から島送りになるのですが、中には悪い人ばかりではなく、幕府に逆らったり、意を唱えたりした人までも島送りになりました。そういう人達の中には、学問もでき、優れた技術を持った人もいて、そのような人たちが、八丈島の人たちにいろいろ教え、文化をつくってきたといわれています。

八丈島に着いた罪人たちは、粗末な宿舎はあっても、牢屋などはなく、島の中を自由に歩き回れました。中には小舟で島を抜け出そうと試みた人もいたそうですが、飛行機の窓から海を見るていると、とてもそんなことができたとも思えません。

島では自由だと書きましたが、食べるものは、自分で何とかしなくてはなりません。魚を捕ったり、木の実を拾ったり、原始人みたいな生活をすればいいと誰もが思いますが、現実には厳しいです。

幸い港の高台に、島役人たちが住んでいる地区があって、そこの石垣を積む仕事が与えられます。



石は、海岸に無数に転がっている、丸い石です。重さ20キロくらいの、その丸い石を、海岸から急な坂道を登って運び上げると、おにぎりが二つもらえます。八丈島は、雨もよく降るので、そのことも計算に入れて、運べるときに、運んでおかないと、空腹で倒れてしまいます。



また、石は、どれでもいいわけではなく、大きさ、形がそろったものだけが、石垣に使われています。

石垣は写真の通り、丁寧に積んであります。あれだけ粒のそろった石なら、私のみならず庭師ならだれでも簡単に造れます。

私たちが田舎で目にする、棚田や、段々畑の石垣は、平べったい石や、長細い石もあり、大きさもまちまちです。丸い石ばかり選んで使っていると、仕事になりません。そこで、私たちは、どんな形の石であろうと、それらを上手に使って石垣を組んでいきます。要は、崩れなければいいのですが、これには相当の技術がいります。

八丈島の場合、人手も時間もたっぷりあるので、おそらく、海岸で石の大きさや形を選別する人がいて、規格に合った石だけを運び上げていたようで、積み手も、これならかなり楽です。

とはいっても、隣接する上下左右6つの石と、真ん中にくる石が嚙んでいないと、強度が落ちるから、それは同じ罪人でも、上手な人が選ばれたと思います。まあ、私の腕だと、一日積んで、おにぎり10個くらいはもらえたのではないでしょうか。

いまでもそれら石垣の上に家屋が立っていて、数少ない八丈島の観光スポットとなっています。





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