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恋染紅葉

映画のこと、本のこと、日々の些細なことを綴ります。

「この君なくば」葉室麟(朝日新聞出版)

2013-04-02 | 本(た~は行の作家)
激動の幕末維新を背景に、己の思いに忠実に生きた男女の清冽な姿を描く長編時代小説。


大河の影響か、最近やたらと幕末の物語を見たり読んだりします。

そんな世の中で、自分の進む道を聡明なる判断で進む武家の男と、彼をひたすら慕う女性のお話です。
ヒロインの栞はまことに清楚で頭もよく、彼を信じきる、女性の鏡とも言えそうな女性です。
彼女がずっと思いを寄せる男・譲も、人格的にも全てにおいて頼れる立派な人。
そんな完璧な、絵にかいたような組み合わせで、いろいろ紆余曲折もありますが、静かで正統な愛を貫きます。
二人はあまりに完璧で、かえって、最初に譲との縁談話があった五十鈴の物語のほうが気になりました。
二人の間に入る嫌な役回りかと思ってたら、彼女が一番潔くかっこいいキャラクターでした。

初めて読んだ「蜩ノ記」にすばらしく感動したので、こちらも予約を入れ、待ち望んで読みましたが、私は「蜩ノ記」が好きです。

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八月の鯨(1987年アメリカ)

2013-03-05 | 本(た~は行の作家)
リビーとセーラの老姉妹は、毎年夏になるとメイン州の小さな島にある別荘にやってくる。そこの入り江にはかつて鯨がやってきて、8月になると鯨を見るのを楽しみにしていた。
目が不自由になった姉のリビーはセーラに世話をしてもらって暮らしているが、他人に頼らざるを得ない自分に苛立ち、ついとげのある言葉を吐いてしまったりする。
セーラも姉の世話に自信を失くしかけるが、この思い出多い家で、また鯨を見られるのを期待し、手を取り合って暮らしていくことに・・・。

岩波モール創立45周年記念、ニュープリントのフィルム上映です。

何年も前、レンタルビデオで観て、私のベスト5に入った作品です。
それが、スクリーンで再び観られると知り、絶対逃すまいと決めていました。

やっぱりいいですね。
静かで、海がキラキラ眩しくて、リビーの見事な白髪もきらめいて・・・。
二人でつつましく暮らしているのですが、ゲストを招いての夕食には、キャンドルに花、ちゃんとテーブルセッティングをして、おそらく何年も前のであろうドレスに着替え、髪を結い、アクセサリーを着け・・・。
老いてもなお、淑女のたしなみを忘れない小奇麗なあの生き方を見習いたい。
ほんと素敵な光景でした。

老いて姉妹で暮らすというのは、一番理想的な人生の最後なんじゃないかなと羨ましい限りです。
ただし、お互いの伴侶がいなくなったあとのことですが。


鑑賞後にチラシを見て驚いたのですが、この撮影当時、リビー役のリリアン・ギッシュは91歳、妹役のベティ・デイヴィス79歳だったそうです。
改めてこの作品に拍手です。

上映してくれてありがとう~♪

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「猫の神様」東良美季(講談社文庫)

2013-02-06 | 本(た~は行の作家)

二匹の猫とひとりの男の、命のドラマ
雨の中、途切れなく泣く二匹の猫を一人暮らしのアパートに連れてきた孤独なライター。しかし、猫との幸せな日々は永く続かなかった。猫たちは病いに倒れ、相次ぎ逝ってしまう。人間の世界に神様がいるとは思えない、でも猫の寿命はきっと「猫の神様」が決めている。猫との静かな日々の移ろいを綴る心の物語。(出版社内容紹介より)

「猫」と「神様」続きの1冊。

猫好きには読むのが辛くなる場面もありますが、ペットと暮らしていく現実の中でいろいろ考えさせられてしまうお話(ドキュメント)です。
闘病のところは、猫でもこんなに苦しい思いをして生きなきゃならないのか・・とほんとに辛くなります。

本文の中に、
・・・みャ太は決して僕のために生きてるわけではない、ということだ。猫は世界の摂理と共に生きている。生きるのが辛くなれば静かに死んでいくだろう。ぎじゅ太もそうだった。僕は彼らを勝手に拾い、勝手に育て、勝手に一緒に生きていただけだ。
大切なのは判断を誤らないこと。自分がやるべき行為だけを考えよう。それはみャ太を出来るだけ悪に生きられるようにしてやることであり、もし彼が死に向かっているとしたら、出来るだけ苦しまずに死なせてやることだ。・・・


というのがあります。
昔実家で飼っていた猫は、その最後を見せることはありませんでした。
2匹ともいつのまにかいなくなってました。
猫は自分の死期が迫ってくると、自ら姿を消すとか。
昔の田舎のことだから猫もそんな生き方を選べたんでしょうが、今のペット事情では猫も自らの進退を選べる環境にないのかもしれません。
昔はペットに癌だの成人病などという死の原因はなかったように思います。(田舎だけ?)
今は獣医さんがちゃんと診てくれるから、この子はどういう病気でどうやって治療すればよいか、至れり尽くせりしてやれます。
それが猫にとって本当に幸せなのかどうか・・・。

核家族化する社会の中で、ペットも家族の一員として、相棒として、大切な存在として、人間と同じように愛情を注ぐのが「当然」と認められるようになった今、私たちは彼らの本能を尊重しながらも、どうすれば彼らにとっていいことなのかと模索しながら共に歩んでいかねばならないと思います。

この世のどこかに猫の神様というのがいて、
これは他のブログで書いたことですが、「今、この人のところには必要かもしれないという時に、どこからか『みゃあおん』とやってくるのです」
それは本文中にも人間の赤ちゃんのことを書いているところと同じです。
「・・・これは授かりもんちゃうわ。・・・神様がある一時期俺たちに預けてくれたもんやろと。だから親には義務があるねん。預かったものやから、子供をしっかりと育てて社会に出してやる義務がな」

神様が私たちに「仕事」を与えるためによこした天使なのかもしれません。

実家の父のところにやってきた猫もきっと神様がよこした子なのでしょうね。
小さくても、短い命でも、ちゃんとその役割はあるんです。

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「新月譚」貫井徳郎(文藝春秋)

2013-01-28 | 本(た~は行の作家)
美人ベストセラー作家は、なぜ突然絶筆したのか?
突然筆を折ったベストセラー作家・咲良怜花。執筆復活を願う編集者に対し怜花が告白した衝撃の物語。甘美で残酷な究極のラブストーリー(出版社あらすじより)


平凡で目立たない女性が初めて本気で人を愛することを知って、その人が喜ぶなら・・と、一生懸命がんばって、普通じゃ考えられないことまでして、そして、あげくどん底に落ち、奮起するため小説家になる・・・
簡単に言えばそういうお話です。
でも一言では済まないほどの人生を歩むことになります。

この主人公のネガティブな心は、以前に読んだ「モンスター」(百田尚樹さん著)のようです。
あれも〇〇して、人生を変えた女性のお話。
どちらにも感じたことですが、完璧な〇〇って、結局は完璧で満足な人生を手に入れるものじゃないんだなあと。
「内面が大事だよ」というのは確かにキレイ事かもしれないけど、一度に10段階アップするのでなく、ほんの1段だけでもそれをステップに、あとは自分の努力次第で運命は変わりそうな気がしないでもないのだけど~

完璧な〇〇をしても、一番になれなかった彼女は、小説を書くことでまた相手を繋ぎとめようとします。
よく小説家の方が「キャラクターが勝手に動いていく」と言うのを聞きますが、「そんなのただの比喩でしょ?」と思う私ですが、どうやら本当なのかしら?(笑)
彼女もそういう状態になり、ものすごい小説を書くようになります。
しかし、あることを境にペンを置く・・・。
それが一番ショックなことだなんて・・・、そうかなあ~、いっそ褒めてくれる人がいなくなって書けなくなるというのなら分かるけど~
純愛は純愛だけど、歪んだ純愛ですね。

タイトルの「新月譚」とはどういうことかなと思ったのですが、
「新月」は見えない、「譚」はおはなしかな?
誰にも言えないお話。
誰にも言えないことを抱えているというのは幸せではないと思います。
語れる人が現れてよかったけど、その理由というのもなんだか侘しいね。

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「キネマの神様」原田マハ(文藝春秋)

2013-01-11 | 本(た~は行の作家)

四十を前に、突然会社を辞めた娘。映画とギャンブルに依存するダメな父。二人に舞い降りた奇跡とは―。壊れかけた家族を映画が救う、奇跡の物語。 (「BOOK」データベースより)

「映画好きなら是非」と薦められて読んだ小説。

あちこちにシネコンが出来、レンタルDVDもネットで簡単に借りられ、それも面倒ならネットで観ることもできる。なんとまあ便利な世の中になったもんです。
でも、いくら大画面のテレビだったとしても、あの映画館で味わうスクリーンと自分との1対1の空気感は、ご家庭にいて味わうことは出来ません。
ましてやPC画面で観るなんぞ、邪道もいいとこ(笑)それならあらすじだけ読めばよい。
な~んて反旗を翻す人には共感しまくりの「キネマの神様」でした(笑)

一つの映画を観て、人それぞれの感想を持つのは当たり前。
年代だったり性別だったり住む環境だったり。
でもそこから生まれる絆もある。
それは純粋に映画が好きだから。

そんな「奇跡」も盛り込んだとても心温まるお話です。
ここに出てくる数々の作品を、もう一度じっくり観たくなりました。


・・・ということで、偶然にも上映されていた「ニュー・シネマ・パラダイズ」を観てきた私でした^^

名画座万歳!!
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