ぼくにとっては捜査はいつも苦しいものです――通り魔によって幼い娘を植物状態にされた夏目が選んだのは刑事の道だった。
虐待された子、ホームレス殺人、非行犯罪。社会の歪みで苦しむ人間たちを温かく、時に厳しく見つめながら真実を探り出す夏目。
何度読んでも涙がこぼれる著者真骨頂の連作ミステリ。(出版社あらすじより)
涙は出ませんでしたが、しずかにじんとくるものはありました。
人を殺めることはどんな理由があろうと絶対にやっちゃいけないこと。
そこに至るまでの感情を止められないほどの苦しみを思うと、やるせない。
世の中には、あまりにも理不尽で、そんなの人間じゃないと罵倒したくなるほどの犯罪もありますが、
人情で情状酌量的な犯罪もあります(老老介護の果てにとか)。
でも、それをやってしまえばおしまいです。
苦しいけど生きなくちゃいけない。
苦しいけど闘わなくちゃいけない。
そして、人間の手というのは、人を殺めるためにあるのではなく、
「助けて」と差し出し、それを掴むためにあるものではないでしょうか。
人間という生き物はいつも試されながら生かされているのだなあとつくづく思います。
ちょっと人生哲学的になってしまいましたが、読了してそんなことを思いました。