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恋染紅葉

映画のこと、本のこと、日々の些細なことを綴ります。

「小野寺家の弟・小野寺家の姉」西田征史(泰文堂)

2013-01-05 | 本(た~は行の作家)

小野寺家の姉・より子と弟・進は、姉弟ふたり、ときにケンカしながら、ときに仲良く一緒に住んでいる。40代に入った姉と30代中盤の弟、ともに独身。
そんなふたりのおかしくて切なくてあったかい日常を描いたお話。

著者は、ドラマ『妖怪人間ベム』などを手がけた脚本家・演出家だそうです。
どうりで、ドラマを見ているようで面白かったです。
奇跡的な展開があるわけでもないのですが、ところどころ笑いのツボにストレートに入ったり、「いい話だなあ~」とほっこりします。

いいトシして独身で、姉弟ふたりで住んでいるのって、世間のよけいなお節介おばさんから見れば、「それでいいのかよ。なんだかなあ~」ですが、この二人を見ていると「この姉弟に幸あれ!」と願いたくなります。

かなりお薦めです。

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「きみはいい子」中脇初枝(ポプラ社)

2012-09-30 | 本(た~は行の作家)
ある雨の日の夕方、ある同じ町を舞台に、誰かのたったひとことや、ほんの少しの思いやりが生むかもしれない光を描き出した連作短篇集。(出版社あらすじより)

「子供の虐待」をテーマに綴られた5つのお話です。
ひとりひとりとても悲しくやるせない日々を過ごしていますが、
幸いなことにみな、誰かの小さな気づきや声かけに救われ、
生まれ変われるかもしれないと思い始めます。

立場が違う語り手によって、
その心の動きを素直に綴ることで、
「これは特別なことではない。自分にもあることかもしれない」
と気づかされます。
(虐待をしていなくても、母親のちょっとした感情とか)

それと同時に、心を切り替えるチャンスというのは、
自分のまわりに必ずあるということも。

理論理屈で説いてないぶん、
心にまっすぐ響いてきます。



改めて思います。
母親ってなんて大切で大変な仕事なんだと。

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「鍵のない夢を見る」辻村深月(文藝春秋)

2012-08-27 | 本(た~は行の作家)
町の中に、家の中に、犯罪の種は眠っている
普通の町に生きるありふれた人々にふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる5篇。現代の地方の姿を鋭く衝く短篇集【出版社あらすじより】

今年の直木賞受賞作品。
「ごく普通の人でした」という人が犯してしまう罪。
些細な「我」から出た過ちの恐さを感じます。
後味が悪いお話ばかりで、とくに最後の母親の心理なんぞは、
もしかしたらよくあることなのかもしれません。
追い詰められた主人公の気持ちに痛いほど同調し始め、
予想してしまう結果にならなければいいのにと願います。
現実には、自分はそうはならないだろうと信じてはいますが、
魔が差す瞬間は誰にでもあるでしょう。
どれだけ自分も紙一重の中で生きているか、恐くなります。

辻村さんが描く女性って、過去の中高生が主人公のお話もそうですが、
あまり好感持てない子が多いんです。
あーはなりたくないなと思ってるからかな・・・

それでも辻村さんの新作は、必ずといっていいほど読みたくなります。