goo blog サービス終了のお知らせ 

永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

こうじゃくふう【黄雀風】

2013年05月26日 | か行
陰暦5月に吹く南東風。この風のふくころ、海魚が変じて黄雀になるという。


「黄雀」を引くと「スズメの異称」とある。ならば素直に「雀」とだけいえばいいのに。「黄雀」の「黄」はなんだろう。スズメの頭の部分が黄色く見えるのか。ほんとうに黄色いスズメがいたらかわいいのに(それじゃカナリアだ)。

 魚がスズメになるという発想が不思議だ。中国の俗信らしいけれども。

 どうして陰暦5月なのだろう。スズメは年中、どこにでもいるのに、この季節に限って魚からスズメになるのか。

 発生のメカニズムがよくわからないものについて、昔の人は何かが変化してそうなると考えた。たとえば草が腐ってホタルになる、というように。現代のぼくたちも「虫がわく」などと、まるで何もないところから虫が出てくるかのようにいう。もちろん目の届かないところで虫が卵を産んでいるわけだ。

 だがスズメはちょっと違うだろう。巣を作り、卵がかえって雛が生まれる様子を昔の人は見ていたはずだ。それなのに海の魚がスズメになると考えた。なぜだろう。

「黄雀雨」という言葉もあって、陰暦5月の雨のことなのだが、「一説に9月」とも書いてある。これもちょっと不思議。