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永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

ねまちづき【寝待月】

2013年09月18日 | な行
満月から数えて4日目にあたる、陰暦19日の夜の月。また、陰暦20日前後の月。臥待の月。


「月の出る時刻が遅いため寝て待つ意」だそうだ。

「居待月」、「立待月」というのもある。

「居待月」は陰暦18日の月、「立待月」は陰暦17日の月。

「国立天文台天文情報センター暦計算室」というサイトがあって、日の出や月の出、などを調べられる。これによると、2013年の中秋の名月、9月19日の京都の月の出は17時38分、南中するのは23時53分。

 立待月の21日は月の出が18時51分、南中するのは0時42分。

 居待月の22日は月の出が19時30分、南中は1時32分。

 寝待月の23日は、月の出が20時10分、南中は2時21分。

 月の出や月の入り、南中時刻は、たった1日でこんなに変化するのかと驚く。立待月、居待月、寝待月と、1日で40分ぐらい変わっていく。日の出、日の入りが、だいたい1分ぐらいしか変わらないのと対照的だ。

 昔の暦が月の運行を元にしていたのは、変化が大きくわかりやすかったからだろう。ミクロな変化は月で、マクロな変化は太陽で、と使い分けるのは意味があったのだ。


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ネクター【nectar】

2013年09月17日 | な行
(1)ネクタル。
(2)果肉をすりつぶした濃い果汁の商品名。


 ネクタルはギリシア神話の神々が飲む酒。不老不死の酒だそうだ。

 なつかしいと感じるのは、子どものころ好きで、大人になってからは飲まなくなったからだろう。ネクターに限らず、甘いものをあまり飲まなくなった。

 ネクターといえば不二家のものだと思っていたが、調べてみるとそもそもは森永製菓の商標。しかし森永製菓は商標運営を一般社団法人日本果汁協会に任せ、協会がつくる基準を満たせばネクターという名称を使えるようになったのだそうだ。

 不二家のサイトにはネクターの歴史や、どうやってつくるかが載っている。洗浄した果実を砕いて種と皮を取り除き、裏ごしをするだけだが、「桃のピューレー」の場合、3回も裏ごしをしている。殺菌のために加熱も。あの独特のとろみは、こうしてできるのか。また、ネクターは桃だけだと思っていたら、バナナやマンゴーもある。

 ネクターを使ったカクテルもあるが、どうなんだろう。甘くて口当たりのいい、しかしアルコールはしっかり入っているカクテルは、気がつくと酔っぱらっていることが多い。


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にわとりびと【鶏人】

2013年09月16日 | な行
昔、宮中で夜明けを報じた役人。けいじん。


 ニワトリの着ぐるみを着た人がぼうっと立っている姿を連想する。

 どうやって朝を知らせたのだろう。まさか「コケコッコー」と叫びながら御所の中を走り回ったわけではあるまい。

『大辞林』によると、中国の周代にルーツがあるそうだが、正式な官名なのだろうか、それとも通称なのか。

 30年も前のことだけど、ニワトリの着ぐるみ姿でケンタッキー・フライドチキンを襲撃するというパフォーマンスがあった。狭いゲージにとじこめて育てる養鶏への批判をユーモラスに実演したのだった。

『広辞苑』で「鶏人」の隣に載っているのが「鶏は三歩歩くと忘れる」なのだった。だからどうしてもニワトリというと、すぐ忘れてしまう人、というイメージがあり、平安時代の役人の官職名だといわれても笑いが込み上げてくる。

 そういえば、老政治家かがサッカー選手の髪形がニワトリのトサカのようだと文句をつけて失笑を買ったことがあった。ぼくには選手の髪形よりも、老政治家の眉毛のほうが気になった。年を取ると眉毛は伸びるものなのか。


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にふぶか

2013年09月15日 | な行
大風が急に吹くさま。


「ふぶ」という音がすごい。でも、すこしユーモラス。

 子供のころ流行った歌に、ゴゴゴー、風が鳴いている、ゴゴゴー、というのがあった。いや、ドドドーだったかな。もしもこれがフブブーだったら笑ってしまう。

「にふぶか」というのは、いまひとつ切迫感のない響きだ。「にふ」がいけないのか、「ぶか」がいけないのか。

 東京では突風が吹くことが多くなった。気候変動のためともいわれるし、高層ビルが増えたからだともいわれる。特に汐留や銀座あたりを歩いていると、体を飛ばされそうになることがある。これからはそんなとき「にふぶかですなあ」といってみよう。

 高速道路を運転していて横から大風が吹くと怖い。後ろから大型トラックが迫っていて、前にもトレーラーが走っている、なんていう状況のときはドキドキものだ。「にふぶか」なんて呑気なことをいってられない。

「か」を抜いて「にふぶ」になると、「多いに笑うさま」。「一説に、ほほえむさま。にっこり」ともある。「か」ひとつで意味がまったく変わる。


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にちごう【日合】

2013年09月14日 | な行
陰陽道で、一日のうちで吉とされる時刻、すなわち子の日の丑の刻、丑の日の子の刻の類。


 反対に凶の時刻を「日害(にちがい)」といい、子の日の未の刻、丑の日の午の刻だという。

 陰陽道なんて迷信だといいつつ、現代人も婚礼や葬式の日取りでは暦を気にする。大安と日曜日が重なる日はあちこちで結婚式帰りの人を見るし、仏滅の結婚式場は割引がある。友引は火葬場もお休みだ。子の日の丑の刻だとか未の刻だとかというのはわからないが、陰陽道は現代の日本にもしっかり残っている。小説やマンガの世界だけじゃない。

 昔、まだ若かったころ、引っ越し先の大家さんが暦を気にする人だった。引っ越し日の相談をすると「暦を見てあげる」といって高島暦を開き「引っ越しは先負がいいから、この日にしなさい」と決めてくれた。そのとき「結婚式や入籍日も、ちゃんと暦を見なきゃだめよ」とアドバイスされた。

 ところがそんな助言はすぐ忘れ、ある日、区役所で入籍してカレンダーを見ると仏滅だった。当時は会社員で、その日しか時間がとれなかったからしかたない。それでも、銀婚式はとうにすぎ、真珠婚式ももう近い。