永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

ゆきづきよ【雪月夜】

2013年10月20日 | や行
雪のある時の月夜。


 きれいな言葉だ。小説や句集のタイトルにもなっている。

 雪が降りながら月が出るということはあまりなさそうだから、この場合の雪は降り積もったものだろう。一面真っ白になったところに月が浮かんでいる。月が出ているのだから、空気は澄んでいるはず。ということは、気温もかなり低そうだ。

 夜なのに遠くの山が見える。雪のため稜線が白くなり、月明かりだけでもくっきり見えるからだ。

 こういう夜は足もとに気をつけなければいけない。道が凍っていて、よく滑るのだ。しかも昼間に溶けた雪が凍ったので固くなっている。転ぶと痛いし、頭を打つと大変だ。酔っ払っているときは特に気をつけないと。転んで気を失い、そのまま凍死ということもあるだろう。

 ぼくの理想的な逝き方は、これである。雪月夜に酔って転んで凍死。一説によると、凍死は気持ちいいらしい。ほんとうに死んじゃった人から話は聞けないのだから眉唾だけど。好きなお酒を飲んで、いい気分になって、転んで頭を打つのは痛いけど、睡ったまま逝ければいうことなし。死体を発見する人には迷惑をかけてしまうけれども。