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永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

やらずのあめ【遣らずの雨】

2013年04月24日 | や行
人を帰さないためであるかのように降ってくる雨。

「遣らず」にはあまりいいニュアンスがない。

「遣らずぶった手繰り」といえば「与えることをせず、人からとりあげるだけであること」。日本の税制か?

「遣らずもがな」は「やらなければよかったこと。与えなくてもよいこと」。後悔先に立たず。
「遣らせ」は「事前に打ち合わせて自然な振舞いらしく行なわせること。また、その行為」。最近では「ヤラセ」と書く。遣らせと演出の境界線は難しい。

 でも、「遣らずの雨」はちょっといい言葉。

 帰ろうとするタイミングで雨が降ってくることがある。「降ってきたね。やむまで、もうちょっといたら?」なんていわれて長居してしまう。

 これが男女だと、色っぽい感じになったりして。妻問婚の時代なら、男を帰したくないという思いが伝わって雨を降らせたと解釈するのかもしれない。男のほうも、雨を口実に居続けたりして。

 ここで「いや、傘を持ってますから」と、鞄から折り畳み傘を出すのは無粋だ。