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永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

そらのかがみ【空の鏡】

2013年07月19日 | さ行
澄んだ月を鏡に見立てていう語。

 湿度が低い夜の満月は、銀色に輝いている。鏡にたとえる気持ちもよく分かる。

 古代の鏡は丸い。技術的には四角い鏡だってつくれたと思うが、古代の人びとは丸い鏡にした。裏には装飾がほどこされている。丸い鏡は太陽を模したのだろう。晴れた日、太陽を映し出せば、その輝きは太陽そのものだ。まるで太陽の一部を切り取ったもののように古代の人は感じただろう。鏡が三種の神器のひとつである意味もわかる。そういえば藤原道長の『御堂関白記』に、御所が火事になって鏡が焼けてしまう件がある。

 しかし、丸い鏡があらわすのは太陽だけだろうか。満月もまた丸い鏡ではないのか。

 西洋の絵で、月に顔が描かれているものがある。あの絵には、「月に見られている」「月から監視されている」という気分が込められているのではないか。悪いことをして人間にはバレなくても、月にはバレているぞ、とか。ルナティックという言葉もあるように、月の満ち欠けが人間の精神状態に影響すると考えられてきた。そりゃあ、いつも見つめられていれば、おかしくもなるよ。

 
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