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永江朗のオハヨー!日本語 ~広辞苑の中の花鳥風月

短期集中web連載! 手だれの文章家・永江朗が広辞苑を読んで見つけた自然を表す言葉の数々をエッセイに綴ります。

かいせい【魁星】

2012年10月18日 | か行
(1)北斗七星の第一星。魁。二十八宿の奎星(けいせい)と混同して、文運をつかさどるとされた。
(2)科挙の試験で進士主席合格者。状元。魁選。



 天文が苦手でも、月と金星と北斗七星と北極星ぐらいならなんとかなるだろうか。北の空に、柄杓のように7つの星が並ぶのが北斗七星。魁星は柄杓の合(器)の部分の端にある。天枢、天魁、貪狼ともいうそうだ。もっと専門的にいうと、おおぐま座のアルファ星(いちばん明るい星)。ドゥーベという名前もある。

 子どものころ、夜道に迷ったら北極星を探せ、北極星が見つからなかったら北斗七星を探せ、と教えられた。18歳の春に上京して、友だちと新宿で飲んだ(未成年なのに)。道がわからなくなって北斗七星を探したが、街灯やビルの照明が明るすぎて星なんかひとつも見えなかった。

 中国と日本のいちばんの違いは科挙の有無だろう。中国では前科者など一部を除いて誰でも科挙を受けられたし、科挙に合格すると超高級官僚になって一族は栄えた。科挙に合格できるのは頭がいいだけでなく徳も備わった人だと考えられた。徹底的な能力主義であり、徹底的な競争社会でもある。進士の主席合格者ということは、トップエリート中のトップ。まさに北斗七星の第一星にふさわしい。