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TPP参加と国益

2013-02-19 20:25:48 | 世界の中の日本

G20は切り抜けたが、急がれる三の矢
 懸念されたG20でのアベノミックスへの各国の批判が表面上は穏やかに通過したことを株式市場は好感しているが、大胆な金融緩和、大型補正予算の一に矢、二の矢につぐ第三の矢が大胆に実施出来るかの疑問が強く残っている。一ノ矢、二の矢はこれまでも幾度か取られてきたが、あくまでも一時しのぎの緊急対策であり、下手をすると、国債の大量発行で、累積債務が更に増加しただけで破滅への道を唯急いだだけという結果にもなりかねない。アベノミックスが日銀におんぶにだっこの金融政策と国の借金を増やすだけの公共投資のセットでは後が怖い。抜本的な成長戦略を早急に明示し、実行することが望まれる。
 
政治経済改革の停滞が             既得権益集団政治への不信に
 成長戦略の焦点は規制緩和を大胆に行い、輸出入の活性化や官の持っている権限を民間に移譲し、あるいは自由化して、民間の知惠と資金を活用することにある。四半世紀に渉り歴代内閣が取り組んできたことであるが、その進捗状況は日本全体で見れば、遅々たるものである。政治経済改革渋滞の原因は政官民それぞれに深く根を下ろしている既得権益集団の抵抗である。その抵抗を打破できるのは国民の支持を受けた政治の力しかないが、これまでは政治家自身が選挙への配慮など自らの利益を優先し、口先だけの改革に終わってることことも多かった。そのような政治家への不信・不満の結果が3年前の民主党政権を誕生させたが、期待に応えた成果も出せない間に事実上の内部分裂もあって、自民党に政権が戻ることになった。

自民党信頼回復のために
 先の衆院選で大勝したとはいえ自民党は有権者の四分の一の支持を得たに過ぎず、国民の支持を十分に受けた結果とは言えない。利権集団との印象も依然強く、国民の信頼を回復したとはとうてい言えない。いわゆる禊ぎは済んでいないということだ。 
 改めて信頼を回復するためには自民党議員が私利私欲、党利党略を捨てて、真の国民政党として、国民の幸せのために国益のために取り組くむ姿勢がはっきりと見せることが必要である。その証しとして(1)中央省庁が持っている許認可権の地方や民間への移管,(2)農家対策から農業政策への転換、(3)世襲の制限の三つの実行を昨年12月18日のこのブログに書いた。残念ながら、3件ともかけ声ばかりが目立つ。補正予算に見られるがごとく、あいも変わらず国家予算にぶら下がる族議員の姿が噂される。経済政策としても外交政策としても重要課題であるTPPへの参加も夏に控えた参院選への配慮から明確の動きは見せないように苦心しているようである。

TPP反対で盛り上がる自民党議員連盟
  TPPを巡る自民党内の動きは選挙前の民主党の動きと同じであり、混乱を極めている。衆院選で圧倒的勝利を収めたことで参院選の勝利に対する願望は更に強まっており、有力支援者である農業団体のご意向を損ねることは極力避けたいというのが本音であろう。日経紙によると先の衆院選でJAグループがTPP反対を条件に推した自公候補の内約170名が当選したというから、当選者数自民党294、公明党31合計325議席の5割以上が、TPPに反対が条件で当選したことになる。自民党内の農林関係議員らでつくる「TPP参加の即時撤廃を求める会」の加入者が200名にも達する勢いと言うのもわかる。参院選や次ぎの選挙を考えれば当然の動きであるが、一般国民から見れば、国会議員とは言いながら、我が身可愛さの私的行動に他ならないが、『国益を損なう』と言う言葉がそれを覆い隠し正当化している。
 

TPP参加は国益を損なう 
 TPPに関わる国益について考えてみよう。国益として第一に挙げられのは貿易の自由化の促進である。関係国への貿易が円滑に行えるようになれば、輸出に多くを頼る日本のメリットは大きい。逆にTPPに参加しなかったとすると主要輸出先である米国などへの輸出競争は不利になることが多くなる。反対運動の最大の論拠になっているのは「農業など競争力のない産業に与える貿易の自由化の影響は大きい。安いコメが海外からで自由に入ってくると日本のコメ農家は大きな被害を受ける。コメ作り農家が経営不振となれば、日本の食料自給の大きく影響する。農家、畜産業、それぞれ似た立場にあり、貿易の自由化は輸出企業にはプラスでも食料安保上は大問題であり、国益を損なうこと可能性大である。」という論理の展開である。

日本の食料自給率40%                 エネルギー自給率4% 
 日本の食料自給率は農水省によるとロリーベースで40%であり、アメリカの食料自給率(カロリーベース)130%、フランス113%、ドイツ93%、イギリス65%、イタリア59%、韓国50%などと先進国の中でも極めて低い。食糧自給率の向上はその意味で優先課題になるが、食料自給率100%の実現は不可能とも言える厳しい話であり、不足の部分は輸入に頼らざるを得ない。さらに厳しいのはエネルギーである。我が国のエネルギー自給率は水力発電メインで4%、原子力を入れて20%である。大方は輸入に頼っている。今後、太陽光発電や風力、波力などを積極的に取り入れるとしても、輸入に頼らざるを得ない部分はかなり多い。
 

上昇傾向の食料・エネルギー資源          の調達資金は
 BRICsを始め、新興国が経済力をつけてきたことから、世界の食料資源やエネルギー資源は全体に上昇傾向にあり、その多くを輸入に頼っている日本にとっては国民の死活問題として、価格上昇が続くエネルギー、食料資源の確保はもっとも優先度の高い重要な課題になる。

TPPは輸出振興に不可欠
 食料にしろ、エネルギーにしろ、現段階では輸入に頼らざるを得ないとなれば、その購入資金が必要になるが、その資金は海外投資による収益、特許料などの技術収益などもあるが、大宗は企業の活躍により輸出で稼がざるを得ない。つまり、貿易の自由化は我が国の死活問題であり、その促進策の一環としてTPPは国益に叶うものとなる。TPP参加は食料安保を担保するものでもある訳だ

TPPを安全保障の面でも
 TPPを国の防衛、安全保障の観点で捉える事も必要である。尖閣問題がきっかけになって中国との友好関係の維持への配慮と共に、アジア太平洋地域で拡大しつつある中国の軍事力への配慮も欠かせない。その脅威から守るのは日米安保であることは言うまでもない。TPPはその一環として位置づされ、安全保障面で国益に叶うものである。

TPP参加は国益にプラス2,マイナス1
 このように考えると、TPP参加は“国益にプラス2,マイナス1”という勘定になり、
参加しないことで国益が損なわれる可能性も大きい。さきほどの国会中継で安倍首相が「自動車産業のために農業を犠牲にしない。TPPについてはあくまでも国益を再優先に考え交渉する」と答弁しているが、その国益とは、何を指すのか。話の脈絡からは“農業を守る”ことを言っているよう聞こえる。

断固反対の国会議員も考えるべきこと
 首相の足下でも自民党の議員連盟「TPP参加の即時撤回を求める会」が22日に予定する日米首脳会談での交渉参加表明に反対する決議案をまとめるなど、交渉に参加する事さえ反対するという。国会議員には支持基盤への配慮からTPP参加に反対する議員も少なくないが、選挙対策という私の利益ではなく、国会議員として国益を考えるなら、参加しないことによって失われる国益とのバランスを十分に考慮し結論を出すべきであり、その上でなお反対というなら、不足分の食糧やエネルギー資源の購入資金の調達法も提示するべきではないか。選挙対策として、ただ反対するだけなら議員報酬を受け取る資格はない。

重要課題は農業改革               問われる首相の本気度
 参加反対派も考えねばならない最も大事なことがある。それは、TPPに参加しなければ日本の農業が守れるか?という疑問であり、日本の農業をどう改革していくか!という課題である。農業経営が国の補助金で何とか運営できている現状はどう考えても不自然・不公平であり、持続性のあるものとは思えない。農業が事業として魅力あるものになれば、若者の参加も増え、農業従事者の減少や高齢化が問題もなくなる。18日の日経紙トップに、産業競争力会議で首相は「農業を成長分野に位置づけて産業として伸ばしたい」と強調したと伝えているが、本当にやる気なら農地に関わる諸々の制約を排除するなどのかなりの荒技が必要になろう。国会議員も加わって、むしろ旗が国会前で林立するような事態も想定して、それと闘う覚悟をしておかなければならない。首相の本当の腹が問われるところである。


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