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寄り道しながら前へ

 思いつくまま気の向くまま
ゆっくりいろんなことを考えてみよう。

 

アトランティスの暗号

2006-10-27 12:10:47 | 
子どもの頃から古代遺跡や世界の七不思議についてかかれたものが好きだった。

数十年前には、エーリッヒ・フォン・デニケンの本
「未来の記憶」 「星への帰還」 「宇宙人の謎」に夢中になり、
最近では、グラハム・ハンコックの
「神々の指紋」 「神の刻印」 などを読み、

そして今また、コリン・ウィルソンの
「アトランティスの暗号」を読んでいる。



過去1万年の間、3度にわたって人類を洪水や隕石による大破局が襲った。そのとき失われたはずの「高度に発達した科学」、そしてアトランティスの記憶の残滓が、エジプト・マヤ・メソポタミアをはじめとする諸文明の遺物に残されている。
 その「失われた叡智」の起源はどこにあるのか?コリン・ウィルソンが見通す先は10万年前。われわれが考えるよりもはるかに賢かった絶滅人類・ネアンデルタール人の存在だった。人類の意識拡大にかかわるウィルソン流古代文明論の決定版!

どの本にも、何度も同じことが書かれているのはわかっているのに、
また手にとってしまった。
「アトランティス」という言葉が、魔法のように私にささやきかけてくる。

まだ5分の1しか読んでいないが、デニケンやハンコックが宇宙人説だったのに比べ、違う説を出してきたようだ。

ほんとに好きだなあと自分でもあきれてしまう。
ブログを書いている暇があったら、読み進めようと思う。

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 narnia さんが紹介されていた
「宇宙旅行ハンドブック」も借りてきて中をパラパラ見たら、
「無重力の歩き方」
「トイレの使い方」
など、宇宙旅行の心得などが書いてあって、
ほとんどの人にはまだ用がないだろうと思うのに、
こんな本が存在していることが面白い。
宇宙へ行く時には、役に立てようと思う。

両さんと歩く下町

2006-10-06 19:05:25 | 
偶然、書店で見かけて、興味がわいた。
図書館にあり、さっそく借りる。

「両さんと歩く下町」  秋本 治  集英社新書
   『こち亀』の扉絵で綴る東京情景

カバー紹介によると
『こち亀』の愛称で親しまれる、週刊少年ジャンプの人気連載『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の扉を飾った、普段着の下町風景。葛飾区亀有で生まれ育ち、昭和30年代からの下町の変遷を見続けてきた作者が、『こち亀』の舞台となった街を再訪し、その地への思いととっておきの話を綴っていく。
 作者自薦のペン画集にして極私的下町ガイド、そしてメイキング・オブ『こち亀』の三つの顔を持った画期的新書。
山田洋次監督との初対談「葛飾に愛をこめて」を特別収録。


中央区佃。同じアングルから見た景色の比較(2000年、1991年)


少年ジャンプの両さんの思い出話などの巻では大いに昔の町の様子や子ども時代の両津勘吉が描かれ、味わいのある物語になっていた。(息子が家にいたころは、毎週私もジャンプを読んでいた)

作者は毎週のストーリーはもちろん、扉絵にも力を注いでいたそうだから、30年毎週描けば扉絵だけでどのくらい描かれたのか想像もつかない。
新書版では紙面が小さくて、せっかくの絵を見るのにもったいない気がする。


葛飾区柴又・柴又帝釈天参道。正面は帝釈天の山門(1990)

ジャンプ大好き息子に教えたら、この本のことは知らなかったという。
そのかわり最近出版された『超こち亀』は2000円もするのに購入したのだそうだ。
本書は、宣伝もなく地味なのがおしい。昔の東京の下町を懐かしむにはいいのではなかろうか。

私は東京人ではないので読んでもその土地の事がわからないが、
今度、単身赴任中の夫が引越しをする先が
葛飾にある寮だというので夫に薦めてみた次第。

「日米開戦の真実」

2006-09-27 20:37:02 | 
少しばかり時間がかかったけれど、やっと読み終える。

「日米開戦の真実」  佐藤 優    小学館
 ――― 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く―――

大川周明氏がNHKラジオの連続講演したものを単行本にまとめたのが「米英東亜侵略史」で、1942年に出された。これを読めば、日本が何故にアメリカ、イギリスとの戦争に至らざるを得なかったかがわかる。

 大川周明氏もA級戦犯容疑者として逮捕され、公判に引き出されたが、精神障害のため免訴になっている。

 日本国民は当時の国家指導者に騙されて戦争に突入したのでもなければ、日本人が集団ヒステリーに陥って世界制覇という夢想に取り憑かれたのでもない。日本は当時の国際社会のルールを守って行動しながら、じりじりと破滅に向けて追い込まれていったのである。あの戦争を避けるためにアメリカと日本が妥協を繰り返せば、日本はアメリカの保護国、準植民地にとなる運命を免れなかったのではないか・・・・・・・。

 佐藤氏は「歴史は反復する。1930年代末から40年代初頭によく似た国際環境が現在日本の周囲に形成されつつある。過去の歴史に学び、崩壊へのシナリオを回避するのだ。・・・・・・」という。
 
 そこで第一部『米英東亜侵略史』(大川周明)をまず掲載し、それに対し第二部で解説(佐藤優)を加える。
 第三部 英国東亜侵略史(大川周明)
 第四部 21世紀日本への遺産(佐藤優)  という構成。

*「国民は政府・軍閥に騙されていた」という神話
* 終戦後、アメリカによって悪者にされた「軍閥」
 私は、てっきり軍閥が悪かったのだと思い込んでいた。これも洗脳だったのか。

生まれる前のことで知らないことが多すぎる。
少しずつでも知っていかねばと思う。

 佐藤優氏は、「国家の罠 外務省のラスプーッチンと呼ばれて」で、鈴木宗男疑惑に関連し背任・偽計業務妨害容疑で逮捕起訴された時の事情を書いている。
 佐藤氏の文章力のなせるわざか、逮捕されるほど悪いことをしたのか疑問を感じる読後感をもった。氏の書く物に興味があり、本書を読むことにした。

「海の底」から怪しいものが

2006-09-13 23:45:19 | 
「図書館戦争」を初めて読んだ時以来、ファンになった有川 浩(ひろ)さんの作品。
作者自身が「真面目くさってホラを吹く」という作風だといっているように、話がどんなふうになってしまうのやら。

今回読んだのは「海の底(から来た奴ら)」の、とんでもない設定は、横須賀が巨大ザリガニに襲われるという。

「海の底」  有川 浩  メディアワークス

 突如、横須賀基地周辺に出現した巨大甲殻類、えびかザリガニか。 なりゆきで潜水艦「きりしお」にとじこもることになった自衛官二人の夏・冬コンビと子供達が、閉鎖された空間で数日間を過ごす。要するに「潜水艦で十五少年漂流記」(作者の弁)。

 軽口をたたきあって会話を楽しませてくれるのは、夏木大和三尉と冬原春臣三尉、海上自衛隊の潜水艦「きりしお」の実習幹部。

 
 艦の外では、海から押し寄せ人を襲って食べる甲殻類の対処をめぐり、警察と防衛庁が貢献度を競い合い、官邸では警察出身者と防衛庁出身者がイニシアチブ争いをしている。その上、内閣出身者の日和見主義も加わり小田原評定をしている。
 救いは、神奈川県警明石警部と、派遣幕僚団の烏丸参事官のはみだし者二人が、的確に指示を出し、意味を含んだ気の利いた会話で楽しませてくれる。

 シャイな男女の不器用な恋あり、親子についてしっとり感じられる場面あり、荒唐無稽な設定の物語でありながら、笑いと涙がある楽しいパニック冒険ものがたり。

 ライトノベルといわれるタイプのものだが、軽いタッチでも面白く読めた。

「図書館戦争」の続編、『図書館内乱」が出版されたという情報を得たので、図書館に入り次第に読みたいと思っている。
 今度は、どんな大騒ぎが書かれていることやら。

うつくしい子ども

2006-08-19 14:15:23 | 
図書館で見かけ、「これって、娘が読んだと言っていたっけ?何が書いてあるんだろう」
それだけのことで読み始めた。

 「うつくしい子ども」  石田 衣良 著

 著者はテレビのコメンテイターとして見かけたことがある。優しそうな語り方とお顔なので、小説の内容も、甘い恋愛小説か・・・・と思っていた。
中学2年の少年幹生と、新聞記者になって3年ばかりの新米のような『少年』とよばれる山崎とが交代で語りべになり進んでいくので、はじめは、軽い読物かと思ってしまった。
 中学生の目を通すと難しい思想や言葉はふさわしくないから当然ね。

 ニュータウンで殺人があった。犯人探しの推理小説か?
まもなく中学一年の少年の犯行とわかる。あれ、さっさと犯人がわかってしまった。

 犯人である少年Aの兄は、両親が離婚したが苗字もそのまま、同じ中学に引き続き通い始める。同級生に無視されたり、自転車の空気を抜かれたり、様々な嫌がらせを受けるが、力になってくれる同級生と一緒に、少年Aがなぜ殺人に至ったかの謎を解明しようとデータを集め始める。ここからが本番だったか。

 植物の分類や名前付けを応用して新聞記事などのデータを分類する方法は感心した。
「自己満足的な・愛情第一主義」
「生化学的な・拡大解釈」

 記者でありながら、報道に疑問を感じる山崎は
「・・・・少年Aの兄も被害者だ。犯罪報道による犯人の家族への報道被害は、いつの時代も深刻なものである。自殺、離婚、退転職、転居、営業不振、破談、登校拒否、いたずら電話等の嫌がらせ。その結果を考えると自分の仕事についても疑いを持たざるを得ない」と考える。
 
 はじめは、神戸の少年Aの事件をモデルに書いているのかと思ったりしたが、一部はそうかもしれないが、そこから、教育の問題(  中学の建物は、バノプチコンという監獄の建築様式と同じで、監視しやすい形態  )
マスコミの興味本位の取り上げ方に対する批判などが書かれてあり、文章の読みやすさとは裏腹にたくさんの要素が込められていた。
 少年Aの兄の素直さや成長ぶり、記者の良心が感じられてよかった。結末はちょっと・・・・・・う~ん、だったけど。

 石田衣良さんは、ちょっと見た印象と違って、なかなか侮れないぞ、と思った次第。

読書会では

2006-08-16 20:16:25 | 
今日の読書会は「司馬遼太郎」だった。

来月9月には読書会のメンバーみんなで、「司馬遼太郎記念館」へ行く予定になっている。
だから、事前のお勉強として、今月のテーマは司馬さんだった。

読書会の構成は男性3人、女性12人。
男性A氏の提案で記念館に行くことにしたが、司馬作品はまだそれほど読み込んでいるわけではないらしい。
男性B氏は、今までも読んできている人で、「燃えよ剣」が一番のお薦めと言っている。

構成員に女性が多く、
「司馬さんの名前はよく知っていたけど、読んだことがないわ」
「読書会のテーマにならなかったら、手に取ることもなかったわ」

と言われる方たちが主流なので、司馬遼太郎ファンとしてたくさん読んできた私は、皆のコメントに口を挟みまくりの定例会だった。

私は、2年越しで「坂の上の雲」を読んでいる。さっさと読めばいいのだが、SFとかミステリーとか、途中で読んではまた戻ることを繰り返している。皆の前であまりえらそうなことはいえないな。読みたい本がありすぎて困っている。

読書会では年に一度、文学散歩に出かけるが、今年は「司馬記念館」なのだ。

名古屋から近鉄特急に乗って、東大阪へ。
最寄り駅からは、記念館まで4時間かかる。

いい年をした大人の遠足、1ヶ月も先なのに、わくわくとして楽しみだ。

シャングリ・ラ

2006-08-11 16:35:41 | 
毎日暑くて、あたまがボーッとして

おまけに「イヌイットも冷房」のニュースを見たら、

地球は温暖化してる~、と思いたくなる。

一番最近読み終わった本は、
地球の温暖化が進み、東京が熱帯雨林化してしまったという未来の話。

「シャングリ・ラ」 池上 永一 著

出版社の紹介によると
  地球温暖化の影響で東京は熱帯の都市へと変貌した。都心の気温を5℃下げるために東京は世界最大の森林都市へと生まれ変わる。しかし地上は難民で溢れ、積層都市アトラスへと居住できる者はごく僅かだった。地上の反政府ゲリラは森林化を阻止するために立ち上がった。

 空中炭素固定技術を確立した日本は世界最大の炭素削減国となった。
 空中炭素固定技術はC02を削減するのと同時にグラファイトのペレットを生み出す。
 このペレットから鋼鉄よりも遥かに軽くて丈夫なカーボンナノチューブが生まれる。アトラスのような巨大建築を可能にしたのは、新素材があってのこと
 地球温暖化で水没の危機にあるマーシャル諸島は堤防がなければ水没するゼロメートル国家だ。もっとも被害が大きいゆえに、炭素税が無税である。
 世界中が経済炭素削減にはげんでいる。

 温暖化防止のため、二酸化炭素を多く排出する国は炭素税が課せられるという世界経済が石油ではなく炭素を中心に回るという設定が面白い。

 炭素本位制経済を利用して儲けるビジネスモデルも出てくる。(私には、仕組みはよくわからない)

 登場人物は、ブーメランを操る美少女、脅威の戦闘力を持つ美貌のニューハーフ、十二単衣に身を包み牛車に乗る少女、感情のない殺人マシーンと化した女医など、強烈な個性を持つ女性たち(?)が縦横無尽に暴れまわる。

 時代背景の構成はずいぶん考えられていると思うが、人物はアニメ的で、戦闘場面でも不死身で何度も出てくるなどの違和感がある。アニメ雑誌月刊Newtype に連載していたと聞けば納得できるかも。
 小説よりアニメに向いているかな。

 「SFがよみたい」2005年度第3位に入っている。
長さが多少しんどさを感じせるが楽しめるSF。

 暑くてなにもできない午後、扇風機をかけて、
それでも汗をかきながら、温暖化を何とかしなきゃと思いながら、
ひたすら読みふけった作品。

「老楽力」

2006-08-08 12:44:33 | 
定年が近くなってくると、こういう本に手が伸びるのかな。
夫が図書館から借りて、珍しく 内容に触れて面白かったよというので、
私も読んでみた。面白がるところは違うけど。

「老楽力」(おいらく力) 外山 慈比古 

読者の年齢に考慮したつくりで、活字が大きい。
私は、めがねを使わずに読めた。(もちろん老眼鏡です)

内容は、
どうせ、年老いたのだから、いまさら面倒なことはごめんこうむりたい。どうせ退職したのだから、これからは、悠々自適で余生をすごす・・・・・・・
 こんなことを言ってちゃいかん。ぎりぎり最後まで、わが身をいとい、美しく、明るく生きることにつとめる、のがいいという。

 人間は、目指すものがなければ弱くなる。
 たのしいことを期待できないと、命力を支えることが難しくなるらしい。
 たのしみのあとが危ない。
 ストレスがおそろしい。
 いつも、行く手に、明るい希望、楽しみを用意するのが、生き生き生きる老年の心がけというものである。


 電車など動く物は、動き出す時にもっとも大きくエネルギーが消費される。
 新しいものをつくる、始める、というのは、電車の出だしよりも大きな力が要り、大変な苦労があるが、快感がある。
 六十の手習いというが、どんどん新しいことに挑戦するべきだ。著者の場合は、趣味をはじめても、それを大成させることなく、中途半端で放り出し、次のことに心をうつす。よく言えば、たえず初心に立ち返っているのだそうだ。

大成する前に興味を失うというのは、私も同じ、「うまくできないうちが花だった」という言葉にうなずいてしまう。

 器用貧乏ということばもある。なんでもやるくせに、なにひとつ徹底せず、熟練に達しないで大成しないということだが、いろいろなことをするのは、器用だからではない。進取の気性に富んでいるからで・・・・・・。 

 嬉しくなるほど、都合のいい解釈だが、老人は、

 つぎつぎ、新しいことを試みる。そのたびに、年を忘れ、年を逆にとるようになる。そうだとすれば、熟練、練達の域に達する
 よりも

 つぎつぎ、食いかけをこしらえて生きていくのが老人の心意気である


こういう本を読んで夫が影響を受けて、何かを始めてくれると嬉しい。
定年になったら、もう仕事はしないぞ。
そういうくせに、趣味がなく、私とのテニスばかりじゃ、ボケそうで心配だったのだ。


母から電話で、父が同窓会へ出席するのが心配だ。少し前のことを忘れてしまうので、同窓会で何かをしゃべっても忘れてしまって人に迷惑をかけないかしら、出席しない方がいいのじゃないか、というもの。

 この本を読んだ後だったので、

話の内容を忘れても、約束を忘れても、皆同じ年のおじいさんだし、お互い様だし、わかってくれるよ、外へ出ると緊張感もあって、ちゃんとしようとすることがいい影響をもたらすよと言って大いに出かけていくように勧めておいた。

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外山先生の本は久しぶりに読んだ。
「女のライフワーク論」などを昔読んだことがあったが、
このような本を書かれる年齢なのかと思ったら83才だそうだ。
相変わらずユーモアがあり、読みやすい文章だった。

本に熱中していて

2006-08-07 19:20:08 | 
本を読み終わったー。
「容疑者Xの献身」 東野 圭吾  

ずうっと本を読んでいて、ふとわれに返ったら、
なんと、もう午後7時、夕食の時間だ。

今朝は10時過ぎからいつものテニスに行って、
2時まできっちりやって、汗をダラダラ流し、
へとへとになって帰って、菓子パンを2個かじり、牛乳を飲んだら、
そのあとずっと本を読み続けていた。

身体は疲れ果てていたが、ミステリーは途中でうたた寝もせず読めるもんだ。
直木賞を取った時の作品、面白かったが、後味がよくなかったかな。

とりあえず、今からは、夕飯を食べるので、
感想は後ほど。

「わたしを離さないで」を読み終わる

2006-08-04 17:45:55 | 
 「わたしを離さないで」  カズオ・イシグロ著  土屋政雄訳

ききみみずきんさんのところで紹介されていて、

 主人公たちは自らの生い立ち・人生をだんだんに知っていく。
はっきりと知るのではなく、どこかで既に知っていたような感じで知っていく。
そういう知り方を読者に共感してもらいたい工夫がされているので、・・・・
 

 無性に気になる紹介だったので、図書館で見つけたときはすぐに借り出して来た。
 読み始めると、紹介されていた通りだ。
 
  介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムでルースとトミーらと共に青春の日々を送った。
 図画工作に極端に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、施設での奇妙な日々。
 読むにつれ子供達の将来に待っているものが何となく察しられる。でも、ほんとうにそうなのか半信半疑で読み進む。
 彼女達の特別な境遇さえなければ、思い違いのケンカや、恋や嫉妬やあたり前の青春ドラマなんだけど。
 
 解説にあるように「細部まで抑制が効いた」「入念に構成された」静かで端正な語り口で、奇怪な世界が語られていく。あわてず、急がず、じわじわと物語の切迫感を募らせていく。



 臓器を提供する為にクローンとしてこの世に生を受け、世間とは隔絶した特別な環境で臓器提供の必要があるまで生きていくのが彼女達だ。臓器を提供した後は施設で介護人の世話を受け、回復し、そして何度か提供して使命を終える。
 喜びも悲しみもあるふつうの若者達だ。こんなに普通の人間なのに・・・・クローンは人間ではないとでもいうのだろうか。
 主人公達は静かに運命を受け容れている。こんな運命が受け容れられるのだろうか。たとえそのために作られた命だとしても。

 臓器提供を扱った小説はいくつもあるが、このような描き方は他にはなかった。
 提供する命、提供される命、どこに違いがあるのだろう。

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 クローン技術は、必要な臓器だけを再生できるようになれば、人の臓器を使わなくても済み、脳死の人を待たなくてもよくなるのではないか。

 脳死については、このような記事がある。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/kenko/archive/news/2006/07/20060726dde001100022000c.html
ちょっと考えさせられた。