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路上の宝石

日々の道すがら拾い集めた「宝石たち」の採集記録。
青山さんのダンスを原動力に歩き続けています。

◆『ボーイ・フロム・オズ』観劇3回目レポ その1

2006-11-03 02:58:57 | ボーイ・フロム・オズ
いよいよ『ボーイ・フロム・オズ』東京公演も折り返し地点を過ぎ、後半戦に入りました。本日2日、18時30分開演の部に行ってきました。私のOZ観劇はこれで3回目。回を重ねるごとにようやく少し冷静に観られるようになってきたような気がします。今日もいつものように、フィナーレではスタンディング・オベーション。キャストの皆さん、坂本ピーターさんへの拍手は鳴り止みませんでした。ステージの雰囲気も、東京公演中日を過ぎて、笑いのさじ加減がちょうどよくなり、ドラマに集中させる要素が強くなったという印象を持ちました。やはり、何度か通ってみると、日によって、お客さんの層というのも微妙に違います。今日は私の前半2回の観劇に比べて、ちょっと年齢層高めでしたでしょうか。そんな客席の雰囲気を汲んでのことなのか、ステージの展開も前回30日のものより、「笑い」という点においては、ほんの少しあっさりとした感じ。でも、OZ観劇も今日の公演を除けばあと1回となる、私個人の観劇の流れのなかでは、ドラマというものに集中することができてよかったなと思っています。

どの出演者の方も素晴らしくて、たくさん書きたいことがあるのですが、今日特に心に残ったのは、今陽子さんが演じておられる母、マリオン。Don’t Cry Out Loudは、毎回もう涙なくしては聞くことのできないナンバーですが、この曲、前半部分と後半部分では、ちょっと歌の視点がかわります。前半部分は、母マリオンが「泣かないわ」と自分自身に言い聞かせるように歌うような内容で、後半部分は、そんなマリオンが息子のピーターに母として、涙を隠して、前を向いて誇り高く歩いてゆくことを伝えるという内容なのですよね。この曲は、基本的にピーターにとってのつらい過去を、心の奥底に隠して、ということがメインになるような歌に聴こえてくるのですが、何故だか今日は、本当なら断絶したままのはずだったかもしれないピーターと父親ディックの狭間で、その橋渡し役として存在するマリオンの心がすごく迫ってくるように聴こえました。

ディック・ウールノーの自殺という事柄は、この『ボーイ・フロム・オズ』というピーター・アレンのストーリーの根幹に関わってくる出来事なのは明確なことです。まだ大人になっていなかった息子ピーターにとっては、それは自分自身の存在を揺るがすような衝撃的な出来事であり、このストーリーの発端ともいえる出来事であるのは明らかです。しかし、劇中多くは語られてはいませんが、同時にマリオンにとっても、その出来事は想像するには恐ろしいぐらいの衝撃的な出来事であったはず。戦争に行って別人のようになってしまった夫、息子につらくあたる夫、しかしこれからを生きてゆく息子には、自分自身が一番強くなって涙を隠し、「父親」の存在を伝えなければならなかった。マリオンこそがまず微笑みの下にこころを隠さねばならなかった存在なんですよね。劇中ピーターのストーリー・テリングの相手役のように登場することの多い母マリオンですが、このDon’t Cry Outのシーンに至るまでは、割と「肝っ玉母さん」風で、どちらかと言うと、さりげなくアドバイスしていくような印象が強く、観客も、ピーターは勿論、この母マリオンの胸の奥底にある「こころ」について、はっきりと思い描くことはできないように思います。でも、この母の存在がなければ、ピーターは自分の人生を肯定することはできなかったのかもしれない、これまでもわかっていたことではあったのですが、今日の舞台を観ていて、そのことが心に迫るものとして、そう思えてきました。

(ダンスシーンについても、今日の観劇を経て、たくさん言いたいことがあるのですが、ちょっと今日は時間切れです。また明日にでも、観劇3回目レポその2として投稿します。)

◆『ボーイ・フロム・オズ』観劇2回目レポ

2006-10-31 02:36:27 | ボーイ・フロム・オズ
本日30日、18時30分開演の公演に行ってきました。私の観劇は2回目ですが、初日の公演から数えて4回目の公演となりますね。初日の公演に比べて、よい意味で力が抜けていて、アドリブもかなりたくさんあり、ステージと客席がとてもリラックスして一体化していた感じでした。今日は、1幕、2幕ともに、かなり大胆で楽しいアドリブがありまして、とにかく楽しかったです。これぞオズ!というノリでした。

ちょっと御紹介しますと、まず1幕のピーターとライザの出会いのシーンで、二人が踊るのですが、最後のほうでライザのカチューシャがダンスの勢いで取れちゃったのです。途中で二人が指をパチンとやって、夢から覚めてどうなるか、試すところがあるのですが、その直前でライザが、このカチューシャを手に持ったままなので、その先の振りに進まないのです。しびれをきらした紫吹さんライザは、「もう、コレ邪魔!」と言って、カチューシャを袖に投げちゃいました。でもですね、これがとっても10代のライザそのまんまという感じで、逆にすごくスパイスが効いて、いい雰囲気になったんです。それで、この話に続きがまだありまして、Continental Americanの後、不機嫌になったライザの顔を覗き込みながら、ピーターが彼女のご機嫌をうかがうシーンがありますよね。あのシーンで、この話題を引き継いで、ピーターが「新しいカチューシャ買わなくちゃね・・・」みたいなことを言って、本気でライザを笑わせていました。これには会場もかなり沸いていましたね~♪

それからまだあるんです、第2幕でも!男性アンサンブルに囲まれてのピーターの「生着替え」シーン!今日は「大・中・小」のパイプの件でかなり盛り上がっていまして、ピーターがアンサンブルをいつにも増して、ものすごくうれしそうに見回すわけです。そうしたら、2階席から「見た~い!」、「見せて~!」の声が相次ぎまして、ピーターは自分だけの特権とばかりに「ダ~メ」と言ってました。そしてこの話にも続きがあるんです。その後、ロケッツのシーンとなり、ラジオ・シティー・ミュージック・ホールの楽屋のシーンへと続くのですが、ショーの成功を喜ぶグレッグが、「何だか随分、客が『大・中・小』って騒いでたよな~」とコメントして、ここでも爆笑!そんな台詞をグレッグが言うからまたおかしいわけなんです!でも、それがショーの大成功の気分に溶け込んでいて、すごく雰囲気よかったんです。元々『オズ』には、笑えるところがかなり多いのですが、今日のノリは話の展開に自然なかたちでアクセントが効いて、初演で見たものも全て含めて、私のなかでは一番楽しいものとなりました。毎回『オズ』は、客席とピーターの楽しいやりとりで、大変盛り上がるのですけれど、特に今日などは、ステージに上げられた方だけではなくて、客席全体が参加しているという感じで、よい雰囲気でしたね~。「バイ・コースタル」のシーンはかなり長くて、終演時間結構オーバーしてたかも・・・。

それから、公演が進むにつれて、やはりテンションが上がってきているのか、昨年の初演のときもそうだったのですけれど、私の場合、回数を重ねるにつれて、ピーターとライザ、ピーターとグレッグの関係で、すごく泣けるようになっていくんです。皆さんはどうでしょうか。また、今日の音響は、バックの音楽と歌のバランスがよくて、とても歌詞が聞き取りやすかったです。『オズ』の歌詞については、BW版の歌詞カードを読めばいいのかもしれませんが、やはり日本版の歌詞、ゆっくり楽しみたいですね。パンフレットなどに掲載してくれたらよいのになあ、と思います。歌詞の内容をつかむのと、細かい言葉遣いを楽しむのとは、やはり違いますから、日本版のサントラが無理でも、せめて歌詞ぐらいはどうにかならないものでしょうか~。

そして、今日の青山さん!!!そりゃ、もうカッコよかったですよ!!!Continental Americanの「グランドピアノ」のシーンをはじめとして、青山さんのダンスも、細かいところは日によって少しずつ変化しているところもあるようですが、そういうところを楽しむのも、『オズ』という作品の魅力という気がします。やっぱり『オズ』は、3週間ぐらいの公演期間のなかで通い詰めたい作品ですね~~~。『オズ』のダンスシーンも、曲ごとにガラリと雰囲気が変わって、結構早替えなどで忙しいシーンもあると思うのですが、青山さんのあの変わり身の早さと、シーン毎の集中力と密度の濃さは、やはり何度観ても本当にスゴイ!観る者は、シーン毎に完全燃焼で、青山さんが踊りだすと、頭のなか真っ白になっちゃいます。そして、青山さん、この作品のなかで、すごく存在感ありますよね。今回の再演では、そのことがより明確にわかる演出になった気がします。あまり書くとネタバレになるので、詳細はまだ書きませんが、メリハリがついて、初演よりさらにいい感じになったと思います。特にLove Crazyなどはそのよい例だと思います。

ところで、She Loves to Hear the Musicの出に関してですが、う~ん、今日もはっきりしませんでした。初日のレポで、「何となく下手からのような気がする」と書いて、今日も下手グループに注目してみたのですが、やっぱり下手からではない気もするんです。あと2回の観劇のなかで判別できるでしょうか・・・。そもそも出のところから、私は真っ赤に燃えて、判別不可能な精神状態なので、諦めたほうがよいのかしら・・・。どのシーンも素敵で、書きたいことがたくさんあるのですが、ちょっとネタバレになりすぎる気もするので、控えます。それにしても、ロケッツの青山さんを観てると、本当に幸せになります。ピーターの真っ白い燕尾服姿もものすごく眩しいのだけれど、私には青山さんのキュートな笑顔がその100倍眩しいです!今日も一段と素敵なロケッツでした!それから、へーまさんも寄せていただいたコメントで書いてくださったのですが、最後のリオ、あの雰囲気の中で手拍子するハッピーな感じは、体験していただくしかない、と私も思います。どうぞ、迷っておられる青山ファンの方は、この機会をどうぞお見逃しなく!テレビの青山さんも最高ですが、劇場の青山さんはまたテレビとは違う魅力で輝いていて、とにかく最高!人生変わりますよ!


◆『ボーイ・フロム・オズ』初日レポ

2006-10-29 03:13:06 | ボーイ・フロム・オズ
行って参りました!待ちに待った、『オズ』初日!
劇場は初日から大盛り上がり、最高の雰囲気でしたよ~~~!!!
それで、青山さん!!!もぉ~~~、カッコイイんですよ!!!
「再演」なのに、「初見!」っていう感動ですねぇ~~~、スミマセン、もう今日は「ファンモード全開!」ということで、よろしくお願いします。
青山さん、最初から最後まで、もう素晴らしいの一言。
すべてにおいてバージョンアップ、もう最高です!

今回の『オズ』は再演なので、「詳細レポ」もそれなりにバージョンアップしたものをお届けしようと思っているのですが、多分私このままだと『オズ』再演に関しての、バージョンアップした詳細レポは書けないかもしれません・・・。
ダンスシーンが始まると、もう脳内の記憶の回路がブチッと音を立てて切れる感じがするんです。参りましたね~~~。
しかも、Love Crazy , She Loves to Hear the Music , Everything Old is New Again , I Go to Rioに至っては、身体で激しくリズムをとらないように、記憶の回路が飛んでいるなかで、理性を働かせなくてはならないわけなんです。(←そうは言っても、座席で微妙に揺れている私・・・。でも『オズ』のお客さんは皆様それぞれにかなりの興奮モードなので、多少揺れていても大丈夫かも・・・。)

・・・ということで、興奮冷めやらぬ状態ですが、青山さんご登場のシーンについて、ネタバレしない程度に、少しだけですが、レポを試みます。

第1幕第1場 50年代。オーストラリア、テンターフィールド
When I Get My Name in Lights(俺の名前にライトを)は、リトルピーターが酒場で歌と踊りを披露するシーンですが、青山さんは舞台中央少し上手よりのカウンター(テーブルだったかしら?)の左側、椅子のそばにおられます。スローモーションの表現、お見逃しなく。途中で場が盛り上がってくると、この椅子の上に乗ります。

第1幕第2場 60年代初め。テレビ番組「オーストラリア・バンドスタンド」の収録

Love Crazy(ラブ・クレイジー)では、皆様より一足遅れて、上手からご登場。このシーンは、最初から最後まで少しも見逃しちゃあいけませんよ~。んんん~~、ネタバレしないように書くのが大変なのですけれど、とにかくこのシーンでは、ファンは青山さんに「ラブ・クレイジー」です。(←意味不明?)カメラがまわり始めてダンスが始まるときは、ダンサー陣の正面中央に、まさに「リーディング・ダンサー」としておられます。作品最初のダンスシーンからもう最高です、青山さん!!!

第1幕第3場 60年代。小さな中国のバー
Waltzin’ Matilda(ワルツィング・マチルダ)は、ピーターとクリスが中国語なまりで歌う曲なのですが、その音楽に合わせて、男女のペアがダンスをしながら入ってきます。男性は皆さんスーツ姿でパッと見で判別しにくいので、ペアの女性の衣裳に注目すると、わかりやすいです。青山さんは、紫色のふんわりとしたドレスを着た女性(柳田ようこさん)と、上手から(おそらく)ご登場、まもなく中央付近の立ち位置になり、その後、ジュディーのAll I Wanted was the Dream(夢だけでいい)に聞き入るシーンでは、中央前方におられるので、わかりやすいです。女性とオーソドックスなペアダンスを踊る青山さん、ますます素敵になっています。

第1幕第6場 60年代。ピーターとライザのマンション
Contitental American(コンチネンタル・アメリカン)では、上手から一列になって登場してくるアンサンブルの一番最後尾でご登場。今年は、サングラス姿の後藤宏行さんとのペアです。ピーターと女性(紀元由有さん)をアンサンブルがリフトするところでは、向かって右側後方になりますので、席によっては見えにくいかもしれません。後は中央左よりの立ち位置で踊られることが多いです。それでもって、「伝説」のグランドピアノのシーンですけれど、これはもう昨年も「完璧!」すぎたのですけれど、今年はもうその上をいく完成度でして、へーまさんも昨年Plateaの記事で書かれていましたが、ホントこのシーンの青山さんは、「アルマーニかなにかのポスターのよう」なスタイリッシュさです。おそらく初演版にはなかった、振りの細部にどうぞご注目を!そしてこのシーン最後では、上野聖太さん(ブルーのシャツを着て、ピーターと絡んでおられました)とともに消えてゆくような感じだったと思います。

第1幕第7場 ライザのステージ
She Loves to Hear the Music(音楽を聴くのが大好き)では、ライザのソロの後、曲の中盤からダンサーたちが両袖から一斉に飛び出してきます。このシーンのダンサーたちの出なのですけれど、ものすごいスピードでもって展開するので、何度観ても、青山さんがどこにいるのか見つけられないのです。(←ファン失格だあ~~~)どなたかおわかりの方いらっしゃいましたら、教えてください。気がついたら、中央付近向かって左よりにいらっしゃるという感じで、私個人としては、何となく下手から?という気がしているのですけれど、う~~ん、わかりません。それ以降は、このシーンでもばっちり「リーディング・ダンサー」としてライザの向かって左側で踊っておられることが多いです。最後のフィニッシュ・ポーズのライザのリフトでは向かって右側だったような・・・。このシーンはもう最高の「見せ場」で、今日も大盛り上がり!フォッシー的な細部を感じさせつつも、やはりフォッシーのダンスとは違う迫力と、エネルギーのうねりが感じられるダンス、青山さんは、マクニーリーさんの振付を最も優れた形で具現化して見せてくれるパフォーマーなのでしょうね。私も、ものすごくステージに集中しているのですけれど、このシーンでは周りのお客さんもすごく前のめりに身を乗り出してる雰囲気がわかります。紫吹さんライザの美しさといったら、もうスゴイですね~~~。

第2幕第3場 80年代。クラブ・コパカバーナ
Peter’s Sure Thing , Baby(ピーターの確かだぜ、ベイビー)は、クラブ・コパカバーナのにぎやかなショーのシーンで歌われます。ピーターは赤いグランドピアノに乗ってご登場です。青山さんは下手から、一番最後の列でご登場ですが、列の一番前なので、一番最後に出てくる一番左端と思っていれば、見つけられると思います。途中膝をついてカクカクと頭をさせる振りのところでは、中央のグループ、一番左端におられます。このシーンは、次のシーンのために、ロケッツ仕様のつけまつげなどのメイクをしておられるために、帽子を目深に被ってのご登場で、お顔はほとんど見えません。しかし、青山さんの動きの精巧さを満喫できるシーンでもあります。ショーのシーンの後は、ピーターの「生着替え」。(←なんだか変な言い回しでスミマセン~)着替えをするピーターを男性アンサンブルが囲みますが、青山さんは向かって右側、ピーターの前で、背中を客席に向けておられます。

第2幕第4場 80年代。ラジオ・シティー・ミュージック・ホール
Everything Old is New Again(歴史は繰り返される)では、ロケッツでご登場。アンサンブルは、上手から一列になって、ステップを踏みながら出てきますが、青山さんは最後から(右から)2番目です。今回も、ロケッツの青山さんはお綺麗です~♪遠くからだったのですけれど、メイクも昨年よりさらにお似合いで、とても眩しかったです。このシーンは幸せになれるなあ~。

第2幕第8場 90年代。オーストラリアのコンサート。フィナーレ。
I Still Call Australia Home(故郷と呼べるのはオーストラリアだけ)では、曲の中盤から、舞台奥の階段、最前列中央でコーラスされます。衣裳は、やはり冒頭のテンターフィールドの酒場のシーンのものです。
フィナーレのI Go to Rio(世界はリオ)では、マラカスを持って多分上手からご登場でした。(←劇場では確信をもって覚えていたのですが、帰宅して各シーン脳内再生していたら、記憶があやふやに・・・。どなたかはっきりおわかりの方いらしたら、教えてくださいませ。)途中で袖に引き、再びヒラヒラの袖をつけてご登場。セリで上がっていくときは、最後列左から2番目でした。このシーンはもう劇場がお祭り騒ぎ的なノリになってますから、私も記憶が飛んでいます。

以上、ネタバレしない程度に書いてみましたが、「ネタバレ」でもいいわ、という方は、青山航士さんの応援ファンサイト「アプローズ」、ネタバレ板をご覧ください。こちらは、かのかさんが管理をされているサイトですが、私あゆあゆが、昨年度初演版『オズ』の、青山航士さんご出演シーンに関する、「詳細レポ」を投稿させていただいております。

さて、全体の感想です。本当に『オズ』、いい作品ですね~。これは単に「泣ける」からいい作品ということなのではなくて、「笑い」もいっぱいあって、そして「涙」もいっぱいあって、そんななかで「ひととひとのつながり」というものがきっちり描かれているような気がするからなのです。「エイズ」、「父親の自殺」など、胸が締め付けられるような、本当に深刻な問題も描かれているのですが、「暗さ」だけでは終わらないし、とっても「前向き」なのに、わざとらしさがない、そういうところが、私は好きなのです。

坂本さんのピーター、素晴らしかったです。歌は勿論、客席とのコミュニケーションなどにおいても、本当に劇場に一体感というものを創り出しておられました。やっぱり1曲目のAll the Lives of Meは、いい歌ですね、冒頭から涙でした。そして第2幕、シドニーのコンサートあたりからもう涙、涙でした。

それから今日劇場に行って思ったのは、この作品を愛している人は本当にたくさんいるのだなあ、ということです。それは開演前の客席の雰囲気からもわかりますし、開演後ステージをみつめる周りの雰囲気からもすごく伝わってきます。ミュージカル作品をいくつか観てきましたが、ああいう雰囲気はなかなかないですよね。休憩時間のときも、近くの席の方が、「まるで同窓会みたいだわね、あっちにもこっちにも見たことのある人ばかり・・・」と話しておられるのが聞こえてきました。確かに今日は筋金入りのリピーターの方がかなり多かった感じでした。拍手や笑いのタイミングも申し合わせたかのようにバッチリ。この作品においては、客席も立派なキャストの一員かもしれない、そんなことを感じました。そして、ステージで演じておられるキャストの皆様の、この作品への深い愛情というものがものすごく伝わってくるのも感じました。この1週間、怒涛の『オズ』ウィークですが、とても楽しみです。

◆いよいよ開幕、『ボーイ・フロム・オズ』!!!

2006-10-28 00:04:28 | ボーイ・フロム・オズ
いよいよ明日28日、待ちに待った『ボーイ・フロム・オズ』が開幕します。日本での初演から約1年4ヶ月、再びあの感動に出会えるかと思うと、胸が高鳴ります。初演時においても、観るたびごとに新たな発見と感動がある作品で、今回も再演ということですが、また作品の新たな一面を発見できそうで、今からとても楽しみです。

ところで、ライザの真っ赤な衣裳とアンサンブルの「黒豹」のようなピッタリ衣裳が印象的な"She Loves to Hear the Music"と対をなすように、ピーターの真っ白な衣裳とアンサンブルのキラキラ衣裳が印象的なのは、ラジオ・シティー・ミュージック・ホールでの"Everything Old is New Again"です。今日は、この「ラジオ・シティー・ミュージック・ホール」と「日劇」の関係についてちょっと書いてみようかと思います。

『オズ』にご出演の青山航士さんをはじめ、佐々木誠さん、横山敬さん、上野聖太さんは、つい1ヶ月ほど前まで、日本の戦後を代表する歌手、江利チエミさんの生涯を描いたミュージカル、『テネシー・ワルツ 江利チエミ物語』にご出演でした。この作品には、度々今はなき「日劇」での、日劇ダンシングチーム(NDT)とチエミさんによるステージシーンが織り込まれていました。NDTに扮した青山さんたちも、スパンコールの美しい衣裳姿の女性ダンサーたちと優雅に「ラインダンス」を踊るシーンもありましたね。今は映画館などが入っている、東京・有楽町のあの有名なビルも、ほんの20数年前までは、「昭和の娯楽の殿堂」ともいうべきところだったわけです。そんな往時の「日劇」の熱気溢れるステージを、ミュージカル『テネシー・ワルツ』で、青山さんたちは、チエミさんの生涯とともに見せてくれました。

そして、明日から開幕する『オズ』でも、第2幕第4場で、ピーターが、ニューヨークの有名なラジオ・シティー・ミュージック・ホールのロケッツと「ラインダンス」を踊るシーンがあります。公私共に幸せの絶頂にあるピーターを象徴するかのように、彼の「夢」が叶うシーンとして描かれます。BW版では、女性ダンサーのみで踊られ、しかも鏡を多用して、人数を多く見せるという演出だったようです。日本版では、美しい女性ダンサーに混ざって、彼女たちに少しも引けを取らない男性ダンサーたちが(つまり青山さんたちが)、その素晴らしい脚さばきを披露し、華やかさと、ピーターの幸福感を伝えてくれるシーンでもあります。

実は、ミュージカル『テネシー・ワルツ』に登場した、日劇の日劇ダンシングチームと、『オズ』に登場するラジオ・シティー・ミュージック・ホールのロケッツとの間には、ふか~い関係があったようなのです。日劇ダンシングチームは、このラジオ・シティー・ミュージック・ホール名物の「ロケッツ」にならって、結成されたものだったというのです。ラジオ・シティー・ミュージック・ホールは、1932年12月に開場しており、ロケッツはそのオープニング以来、このホールのステージで踊っているのですが、1933年(昭和8年)に、秦豊吉(はたとよきち)という舞台演出家(東宝専務)が、ニューヨークのこの劇場のロケッツのダンスを観て、不振に陥っている日劇もこれを手本とするべきだと考えたのだそうです。

ラジオ・シティー・ミュージック・ホールは、オープン当初から1970年代末まで、このロケッツが出演する華やかなショーと、ハリウッドの新作映画の上映をセットにして、このホールの呼び物にしたのだそうで、ロケッツが「アメリカの宝」と呼ばれるほどに成長したのも、このことが発端にあるのだそうです。当時の日劇も、映画の上映だけでは経営が成り立たないということで、世界一周旅行の際に秦氏が見学したこの劇場の手法にならい、「映画の上映+ステージショー」という形態を取り入れようとしたそうです。日劇ダンシングチームは、この目的のもとに、先ほどの秦氏が募集をし、昭和11年頃に結成されたものだったそうです。

日劇も世界恐慌の起こった1929年に着工、しかし資金不足で工事が途中でストップ、1933年4月に工事が再開され、同年12月に「日本劇場」として開場しています。一方、ラジオ・シティー・ミュージック・ホールも、1929年のNYの株式市場の大暴落に端を発する大恐慌という暗い時代に、普通の人々が手を伸ばすことのできる、ハイ・クオリティーのエンターテインメントを提供するための、美しい殿堂として建てられたものだそうです。

オーストラリアという、アメリカからは遥か遠い国からやってきたピーターにとって、このラジオ・シティー・ミュージック・ホールで、ロケッツと踊ることには、どんな意味があったのでしょう。1937年生まれで1981年に亡くなっている江利チエミさんと、1944年生まれで1992年に亡くなっているピーター・アレン、活躍された年代のコアとなる時期は大体重なります。勿論、日本とオーストラリア、全く異なる環境ですし、たどった道筋もまったく異なりますが、その「夢のはじまり」において、彼らのまなざしの彼方に、「アメリカ」という国のショウビジネスがあったことは、確かなことのようです。江利チエミさんのものとはまた違う、ピーター・アレンの「夢」が、明日から青山劇場で再び描かれます。彼の追い求めた「夢」の一端が、青山さんたち日本版ロケッツの「eyehigh kick / 眼の高さまで上げられる脚さばき」のさきにきっと見えるはずです。「日劇」から「ラジオ・シティー・ミュージック・ホール」へ・・・。さて、もうひとつの「夢」の軌跡はどんなものなのでしょう。


※ラジオ・シティー・ミュージック・ホールのHPはこちらです。

このホールの歴史(→The Music HallのHistoryをクリック)、及び「ロケッツ」の歴史(→Rockettesをクリック)については、なかなか興味をひかれます。

ロケッツの写真も多く掲載されており、ホリデー・シーズンの有名な”Radio City Christmas Spectacular”なんて一度観てみたいですね~♪

何と言っても、「エンターテインメントの殿堂」ですから、ライザ・ミネリもこちらでライブを行っています。

また、ロケッツのcostumesの記事には、Vincent Minnelliがロケッツの衣裳デザインに関わったというようなことが書かれているのですが、これは、ライザのお父上のことですよね~。美術の才能のあった彼は、1933年、ラジオ・シティー・ミュージック・ホールの主任衣裳デザイナーに選ばれているのだそうです。