夏への扉、再びーー日々の泡

甲南大学文学部教授、日本中世文学専攻、田中貴子です。ブログ再開しました。

お得な「観世アーカイブ」

2009年10月29日 | Weblog
 ご存じの方はよくご存じ、知らない方には特に秘密にもしていないのだがまったく知られていない、私の二年越しの連載「近代知識人の見た〈中世〉」(『一冊の本』朝日新聞出版のPR誌)が、あと一回で終わる。現在、近代人の世阿弥受容の言説について書いているが、とても最終回で終えるのは無理な内容なので、大幅加筆訂正し単行本化することになった。
 これについては、単行本を以て定本としたいと思うが、なんせ今、頭の中の4分の1くらいは世阿弥で占められている。私は中世文学が専門のはずだが、世阿弥や能というのは、いくら中世とはいえ芸能史や美学ともかかわる分野であるゆえ、本格的な研究はしたことがないのである。また、最近は近代における世阿弥や能の研究が加速度的に進んでいるため、私の書いているものなど「へ」のようなものであろうことは解っているのだが・・・。
 それにしても、勉強になる、世阿弥くん。能は見ているだけでは解らない、ように思う(もちろん見たほうがいいが、私はかつて『観世』という雑誌で一度も見たことがない「室君」の作品研究が当たってしまい、しょうがなく書いたことがある。後で能の研究者に聞いたら「私も見たことがない。だって昭和37年?くらいから演じられたことがないから」といわれた)。

 さて、このたび観世文庫・観世宗家主催の「観世アーカイブ」が公開され、あまりの便利さ、お得さに驚いたのでご報告する。フリーワードや書名などで検索でき、書誌と画像も出てくるのである。私がこれを本格的に使うことが頻繁にあるとは思えないが、非常に便利になりました。
 それを記念してか、東京大学駒場博物館で関連の展観が行われている。いつ顔を出そうか、体力と相談している最中である。なお、詳細は各サイトに依られたいが、無料ギャラリートークが毎週土曜日に行われていて、14:00に入り口付近にいれば聴けるという。もう終わってしまったものもあるが、これからの予定は、

10月31日(土)磯田道史氏(茨城大学)お殿様の研究の方ですね。
11月7日(土)落合博志氏(国文学研究資料館)研究上は何を聞いてもすぐに明快回答の方です。
11月14日(土)横山太郎氏(跡見学園女子大学)能の近代受容史の論文で、お世話になってます。
11月21日(土)小川剛生氏(慶應義塾大学)武家と和歌、二条良基等、この人も何でも知ってる方です。

となっている。どなたのところに出没しようか、と迷っております。
 やかましい私が来たらおそらく迷惑だと思われるだろうから、変装してゆこうかな。

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