夏への扉、再びーー日々の泡

甲南大学文学部教授、日本中世文学専攻、田中貴子です。ブログ再開しました。

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病床六尺と少しーー病床漫語

2009年05月31日 | Weblog
 本日のきなこくん。シャカシャカトンネルから何をのぞく?

 
 さて、寝ては起きしている間にも、五月が過ぎようとしている。最近、私も猫たちもよく寝ているが、気候のせいだろうと思っていた。
 だが、きなこがあまり遊んでやっても喜ばないときが多くなり、これは・・・と思った。


 「田中きなこに春が来りゃ~イエイエイエイ~」(往年のレナウンのCM風に)

 異常にくりこを意識するのもどうもおかしい。くりこはとっくに手術して「永遠の乙女」になっているので、猫につきまとわれるという状況がまったくわからないらしい。そもそも、きなこが来たとき、くりこは初めて子猫というものを見たのであり、そのときの反応はETかUMAが来た、といったものだった。
 それがなぜかお尻をくんくんしようとするのだから、くりこにしてみれば「何?」の一言であろう。
 恐れたのか、くりこはずっと私のお布団から離れなくなった。きなこはそのためお布団に近寄れないことがわかったようで、「ぼく、自立すんねん」といったふうにあえて遠いところで寝ているようになった。
 手術、しないといけない時期になったのである。
 そう、きなこは宦官となるのだ。カストラートと言ってもいいが。
 宦官となった暁には、西太后の宮殿で権勢をふるってほしいものだ。

 物を食べてしまったので、また二時間横臥することが出来ない。それで、まことにつまらない日々雑感をいくつか書き付けることにする。

 病気療養するようになって、TV番組をやや見るようになった。普段はニュースと天気予報、そしてたまに見たい番組だけを見るくらいなのだが(ちゃんとNHK払っているし)、新たに見るようになったのは、NHK総合で土曜夜11:30からの「東京カワイイTV」という番組である。
 あるとき何気なくつけたら昨今の婦女子の風俗を紹介する番組をやっていた。見るとNHKである。こういうものもやるんだなー、と思いつつ、渋谷の女子高生のはやりものなどを観察。どうやら、外務省が日本のポップカルチャーを海外に紹介するための活動をしていて、それに連動した企画のようである。
 つけまつげを何枚も重ねた女子高生たちを、そこは笑うでも茶化すでもない態度はNHKっぽい。ときにはそのブームを支えるオトナたちのルポもする。海外で日本の女子高生の制服ファッションがはやっているというのも、実は初めて知った。タイの女子高生へのインタビューを聞いていると、タイ語はわからないが「Japan」ではなく「Nippon」と日本を呼んでいる。「ニッポン」というのが、一つのブランドになっているようである。
 こうしたものを、日本は文化として輸出しようとしているのであろうか。私はいっこうにかまわないし、日本文化を高尚に語る姿勢などがなくなったのはかえって喜ばしいのだが、流行の変化は非常に早い。海外に紹介している間に、もう次のブームが起こってゆく、ということになりはしないだろうか。
 それにしても、私は一度も制服というものを着たことがないのだが、最近では制服にアゲ嬢みたいな化粧と髪の毛が載っていないと落ち着かないようになってしまった。慣れすぎたのである。この「慣れ」が流行を一過性のものとし、次へ、次へと急がせることになるように思う。
 ただね、私は化粧が好きだが、つけまつげは絶対しないことにしている。なぜなら、つけまつげを剥がすとき、自前のまつげもいくらかは剥がれてゆくからである。以前、細眉がはやったとき毛抜きで抜きすぎて毛が生えなくなった、という人を沢山見た。いくらまつげも生え替わるとはいえ、いつかは生えなくなるようで嫌だ。私の母は独特の美容観を持っていた人で、眉毛やまつげを描いたり付けたりしていると、「眉毛やまつげが、自分はもう何もしんでええのやと思うて、生えへんようになる」と言い続けていた。母は眉毛が薄かったうえ、描いていたらもっと薄くなったというのである。そのため、私が生まれたときは、眉毛が薄くなりませんように、とお祈りまでしたというのだ。おかげで私は眉毛がしっかりあるので、形を整えるくらいで何もしていないが、こういった幼少期の価値観に影響されているのは確かである。
 

 同じNHKといえば、これはほとんど毎回見ていた「新日曜美術館」の司会が四月に姜尚中氏に代わってから、あんまり見る気がしなくなった。前の檀ふみさんのときも、檀さんがはしゃぎすぎで見てらんない感じではあったが(モデルのはなさんが出ていたときは割と好きだった)、姜氏のもの柔らかな声が番組のトーンを何か異質なものにしてしまっている。ビジュアル的に人気のある学者だから登用されたのだろうが、この番組には向いているとは思えないし、氏が美術に対してどんなスタンスを持っているのかが伝わってこないのである。
 司会者にするより、番組で「姜尚中を鑑賞する回」を作ったほうが視聴率が上がると思うが。


 またまた話変わって、ネットのニュースで「31日は禁煙推進の日」という記事があり、禁煙してほしい有名人が上がっていた。
 私は煙草を吸わないが、今の禁煙運動とやらいうものはちょっと異常であると思う。うちの大学でもキャンパス内全面禁煙をやったものの、校門を出たすぐ横の溝に吸い殻が溜まっているといったおかしな状況になったため、数カ所に喫煙所をもうけることになったのである。ここには、受動喫煙を避けるための装置が施される予定であるという。
 煙草を吸うのは個人の自由である。それを「健康増進法」などで国ぐるみで禁止するというのは筋が違う。それなら、禁酒運動もすべきだし、そのほかの健康を害する可能性のある嗜好品はすべて禁止したらよいのだ。それもせずに禁煙運動ばかり行うのは、なぜであろう?
 ただし、喫煙者のマナーが今までひどかった、という状況が関与しているのは仕方がないだろう。喫煙は個人の自由であるが、「人の吐いた煙を吸わない」のも個人の自由であるからだ。電車内や会議室、教室のような閉鎖された場所で喫煙するのはマナー違反であるし、歩き煙草もすれ違う人が多いところでは危険である。
 ただ、携帯灰皿を用意し、戸外の人のいないところで吸うのがどうして悪いのか、私にはわからない。建物の中でも、喫煙所を作って完全分煙するほうが現実的であると思う。今なら、煙が室外に出て行かなくなるようなエアーカーテンもあることだし。
 お節介に「煙草は体の害ですよ」というのなら、お酒もそうである(私は飲酒者である。あまり量は飲まなくなったが、これが原因で肝硬変やらの病気にならないとも限らない。しかし、おかしなことに日本では通勤電車のなかでひっそりビールやチューハイを飲むことは許されているようなのだ)。喫煙者も飲酒者も、害があることなどわかってやっているのだから、人の迷惑にならない限り放置しておけばよいのである。
 

 病床にいると、子規ではないが身近なことをいろいろうだうだ考えることが多くなる。
 かといって、私は子規みたいにあんパン3つも4つも食べてはいないが。
 

近況報告

2009年05月21日 | Weblog
 療養生活一ヶ月近くなりました。
 やはり、逆流性胃食道炎は「あまりに疲れていて、帰宅後食べてすぐ寝る」ことを繰り返していたためであることがはっきりしました。食事療法を二週間続けてみても改善のきざしがありませんでした。
 今は自宅で軽い家事、書き物などはできるようになりましたが、いくらネットで注文するにしても生鮮食料品はどうしても買いに行かねばなりません。半日外出すると、二日くらい体がだるいのはまだ仕方がないのでしょうか。ちょっと横になったらすぐ数時間寝てしまいます。
 精神状態はかなり安定してきました。猫たちの力も大きいようです。また、たまにメールをくださる同僚や友人のみなさんにも感謝しています。
 しかし、私はお風呂好きで時間がある限りぬるめの半身浴は欠かせないのですが、お風呂に入るとぐったりしてしまうのが辛いところ。
 
 さて、食後二時間は横にならないようにしているので、久々に「きなこ日本文学全集」をUPしました。
 今、光文社版江戸川乱歩全集を全巻現金で購入すると、もれなく「BDバッジ」がついてくるというので、迷っています。講談社版、春陽堂文庫版も持っているので、本文校訂がちゃんとしてある光文社版を、研究もしない私が買うのはどんなもんか、と思うのですが・・・。病気のときこそ、全巻再読、というのもよい機会ではあります。
 私の大学時代の恩師である本田義憲先生は、入院したとき『甲子夜話』と続編、続々編をすべて読んだということです。それだけ時間があったということでしょう。東洋文庫を「大人買い」して全部読んでみたい、気もする。
 今、凝っているのはチベット。病気になる直前、『ダライ・ラマ自伝』(文春文庫)を読み、

 ダライ・ラマって、「働きながら近畿大学工学部を夜学で卒業した、東大阪の町 工場のおっちゃんで、夢は人工衛星まいど2号を宇宙へ送ること」みたいな感じ
 がする・・・

などと思ったりしたのですが、続いて河口慧海の『チベット旅行記』(白水社Uブックス)をぼちぼち読み始めました。なぜか、病気になると旅行記がおもしろくなります。『入唐求法巡礼行記』と『参天台五台山記』もちゃんと通読したいものです。
 でも、読んでいるうちに寝てしまうのですが・・・。
 どうやら、文殊さんの御利益はなさそうです。

きなこ日本文学全集 (第十六回配本)

2009年05月21日 | Weblog
 江戸川 にゃんぽ 『屋根裏の散歩者』


(高等遊民・きな田三郎は、浅草十二階ならぬ京都タワーをのぞむ集合住宅「東栄館」の住人である。)


 彼はさっそくその晩からキッチンのカウンターの上に寝そべって、部屋の下を眺めることをはじめました。さて、そこへ寝てみますと、予期以上に感じがいいのです。同居人の暮らしをそっとうかがっていると、なんかこう自分が探偵小説の中の人物にでもなったような気がして、愉快ですし、いろいろの激情的な場面を想像しながら、眺めているのも、興味がありましたが、この住人は毎日決まり切った生活しかなく、決して刺激的でもなかったのでした。それは、ほんのたまに、男が訪ねてくるなどということさえ、なかったのです。

きなこ日本文学全集 (第十五回配本)

2009年05月21日 | Weblog
 安部公房 『箱男』


 これは箱男についての記述である。
 ぼくは今、この記録を箱のなかで書きはじめている。体ごと入り込むと、すっぽり、ちょうど頭まで隠れるダンボールの箱の中だ。
 つまり、今のところ、箱男はこのぼく自身だということである。箱男が、箱の中で、箱男の記録をつけているというわけだ。

 なお、猫が箱男になるのはすこぶるたやすいことだ。それは箱女でも同じことである。ほぼすべての猫は、箱があると入らずにはいられないからだ。
 

(すべての猫は箱男・箱女です、よね?)

きなこ日本文学全集 (第十四回配本)

2009年05月21日 | Weblog
 松本清張 『張り込み』


 きな木はk市の肥前屋旅館に滞在し、向かいの家の女を張り込んでいた。
 
 女が現れたときは買い物籠を手に提げて裏口から通りに出てきた。夕食の買い物であろう。顔がはっきり見えた。さほど整っていないが、乾いた顔である。四十分ばかりで彼女は帰ってきた。買い物籠には新聞紙に包んだものがはいっている。片手には安い赤ワインの瓶を抱えていた。彼女は晩酌をするらしい。

 きな木は思った。「ぼくの夕食はいつなんだろう?」


(松本清張生誕100年を記念して、初めて猫による実写化を実現。窓辺から同居人の女を張り込む猫の、お留守番の記録である。)

 

私的「やまひのさうし」

2009年05月03日 | Weblog
 ブログに病気療養のことを書いたせいで、いろいろな方からメールを頂戴しました。お見舞い、ありがとうございます。幸い、キーボードは打てますので、その後の報告を。
 病名は「慢性疲労症候群」と「逆流性胃食道炎」です。ようやく診断がつきました。
 
 昨今「有名」になった病気ですが、いまだに単なる「慢性疲労」と同一視されて「休めばすぐに治るだろう」と思っている人がほとんどです。ネット上で多くの情報が流れているのでここでは詳しく述べませんが、私の場合、血液検査も甲状腺も女性ホルモンもまったく正常であり、どうして、週末に一、二日も倒れ伏してしまうのか、風邪様の状態が続くのか、まったくわかりませんでした。寝不足はいつものことなので、寝れば治るだろうと考えていたのが昨年初夏。
 ところが、いくら休んでも、寝ても体のだるさ、筋力低下、関節痛、喉の痛み頭痛、そして集中力低下はどうにもならず、金・土曜日どころかへたすれば日曜日までずっと臥せっているという状態になったのが、私立大学の入試シーズンが一段落した二月末でした。
 通常なら三月の半ばになるとかなり時間が自由になるのですが、昨年度は学科主任として最後まで責任の大きい業務があり、25日の卒業式がすんでほっとする間もなく翌日から新年度の準備が始まり、まったく心も体も休まることがありませんでした。
 不眠気味なのは常だったのですが、次は過眠がやってきて、普段床につく時間である夜26:00に就寝し、気がついたらデジタル時計の明かりが「9:00」を示しているので、「えらい暗いな・・・」とよくみれば、夜の9:00だった、といった変調がしばしばとなりました。ただ、覚えていないだけで一度くらいは用足しに起きているようで、猫のトイレとご飯の世話もしてあったのはややオドロキ。自分の食事より、猫を優先するようすり込まれていたわけですが、当の猫ズは両者こってりと熟睡中です。猫は16から20時間も寝ているというが、


  「私もついに猫化しつつあるのか・・・」

と、本気で思いました。

 四月の半ばのある日、二限目の授業があるときの起床時間である朝7:00に三つの目覚ましが次々と鳴り、いつものように床からゾンビのごとく這い出そうとしたところ・・・

  体がお布団に磔にされたようで、まったく動けません。

  「私は猫ではなく、キリストさんになったんか・・・・」

 こんなときでもオチをつけようとする関西人の血ですかね。
 具体的にいえば、筋力がまったくなくなり、関節が痛んで力が入らない状態なのです。たぶん風邪だろうと思い、しばらく待って、蛇少女のごとくずるずる這ってメールで休講を知らせようとしたものの、PCのところまで行けません。しかたなく、手許にあった紙に乱筆で用件をしたため、またずるずる蛇少女をやって大学へFAXしました。
 その日は、夕方まで動けませんでした。猫たちのトイレやご飯の世話も出来ず、夕方になってやっとカリカリと水を用意して、自分はまたしても床へ。

 翌日もまったく同じ調子でした。幸い、一人暮らしのこととて簡単な食料は二週間分備蓄してあり、ネットで注文も出来るのでとりあえず休養することにしました。ようやく立ち上がれるようになった金曜日、予約していたかかりつけの女性医師のもとへ、今度は蛇からもぐら程度に進化した姿で受診しました。

 「前々から、一ヶ月くらい休養とらないとていうてたのに」

 代々京都で医業を営むおうちの先生、身内の京ことばでずばずば言わはります。そりゃ、休みたかったけど、学科主任というのは学科の責任を負う立場なのでとても一ヶ月も休めません。

 「あなたがいちばん調子よかったのは、どこやら外国へ行ってきはったときや   わ。顔色がものすごうよかったもの。今年は行かへんかったの?」

と問われ、かくかくしかじか、最悪の状態を説明する私。

 「これは立派な慢性疲労症候群ですよ。あなたにはパニック障害もあるんやし、 このままがんばりすぎたら鬱病も発症しますよ。十二指腸潰瘍もやったやろ?
 ストレスがひどすぎるんやで」

 ここで出た慢性疲労症候群については、もしや、と思って本を読んだりネットで情報を集めていましたが、現在関西では大阪市大、大阪大学、滋賀医大の付属病院で主に診療がなされています。阪大のHPでチェックしてみると、「23点以上の方はすぐに受診してください」とあるのに、私の点数は56点と倍以上でした。
 ただ、この病気の原因はまだ解明されておらず、また、ほかの病気が隠れている可能性もあるので、とりあえず滋賀医大の専門の先生に紹介状を書いていただくことにしました。
 なんで滋賀医大だったかというと、大阪は人が多くて、パニック障害の私にとっては発作が出やすいからです。滋賀県は、よくお寺の調査に行きますが、電車もバスも道も空いているのです。国道161号線などを車で走っていると、あまりにほかの車がいないのであっという間に高速道路感覚になってしまうくらい。しかも、まだ滋賀県でスピード違反の切符を切られたことはありません(そんなこと、誇ることではないけどな)。

 滋賀医大のM先生は、慢性疲労症候群の原因が逆流性胃食道炎にあるという新説を持つ方です。私は判断力が低下しているので車ではなく電車にし、自分の病状経過などをまとめて文書にして行ったのですが、ここでの診察で二つの病名がついたわけです。
 ただ、M先生の説はいまだ仮説であり、あくまで「可能性がある」というにすぎません。先生はすべてを逆流性胃食道炎で説明しようとする傾向があり、では脳へのストレスはというと、ほとんど話を聞いてくれないままでした。たしかに、ストレスが脳の視床下部に影響して自律神経失調症となり(この病名は二年前についていたのですが)、それが司る胃と食道との間の弁が開きっぱなしになり、増加した胃酸が逆流した結果さまざまな症状を引き起こす、というのは首肯できます。では、自律神経失調が先か、逆流性胃食道炎が先か、というと、私の場合明らかに前者があり、その結果が胃や食道にきたのだとしか思えません。その点では、二年以上も同じ女性として私を診察してくれたかかりつけの医師の方が客観的な視点で見ているように思えました。パニック障害も明らかに満員電車が原因なのがわかっているし。

 もちろん、すべての慢性疲労症候群の患者が逆流性胃食道炎が大本の原因であるわけではないのです。それを判断するため、二週間の生活と食事改善を行うことになりました。それでもやはり同じ状態であれば、慢性疲労症候群という完治しない病気をだましながらつきあってゆかねばならないのです。
 ただね・・・。この食事改善というのが、大学で通常勤務していたら絶対実行出来ないシロモノなんですよ。朝、昼、と食事量が少ない人は夜たくさん食べる傾向にあるけれど、それでは胃がまったく休まっていないので、まずは胃を休めるために夜の食事は抜いてください、といわれて、

 「あんね、大学でへとへとになって、一時間半電車乗り継いで帰宅して、食事し ないまま夜原稿書く、なんてできひんやんか」

と内心、一瞬の殺意を覚えるくらいかっとなった。昼だって、会議のあるときは食べ損なうこともあるし、学生が来たりしたらおむすびを五分で流し込む、といった生活なのですよ。まあ、M先生のいうように、長年こうした「かまない食事」を続けてきたつけが来ているのでしょうが。

 M先生が紹介してくれた、食事療法でこの病気を克服した女性のブログを帰宅後見たところ、味のついていない小麦粉と水だけの蒸しパンばっかり食べたはる。しかも、小麦粉などの材料は出来る限り「自然素材」とか「農薬を使っていないもの」を買うとか、バナナは皮に薬剤がついているから、むいても両端を切り落として食べる、とか、私の大嫌いな「エコ女」の匂いがぷんぷんしています。
 安全でおいしいものは食べたいですよ、私も。しかし、現代に生きていてすべて「自然のもの」とか「有機農法のもの」ばかり食べるわけにはゆかないでしょう。買いに行く時間も、お金もかかる。M先生はこの女性をえらくほめるが、たしかに努力の上社会復帰出来たのはめでたいし本人の力だとは思うが、人それぞれの治療法を考えてくれるのが医者っちゅうもんでしょうが。
 
 「二週間、仏門に入った気持ちでやってみてください」

とM先生はいう。私が読んだ本では、永平寺の新参僧は、朝・晩のおかゆで脚気起こしてたけどな(なお、たまには肉ナシのカレーやシチュー、マカロニサラダなども出るのだそうだ。ルーに肉エキスが入っているというのは、「気にしない」ことになっているという。野々村馨『食う、寝る、座る 永平寺修行記』新潮文庫)。
 仏門は好きなので、私なりに妥協をして、次のような二週間の計画を立てました。

 1、消化の悪いものは避ける
 2、アルコールはお預け(泣)
 3、少量をよく噛み、時間をかけて食べる
 4、朝、昼の主食は少量のごはんとおかゆ
 5、夜は水や麦茶のみ(カフェインが胃酸を増加させるから)
 6、食べたらすぐに横にならない
 7、負担のない程度で散歩等の外出の練習をする

 お茶好きの私がカフェイン絶ちするのはお酒を断つより辛いのですが、幸い暑くなってくる時期なので麦茶があるのがまだまし(これ、お江戸では「麦湯」というのが本当だそうですね)。大学を移るときは毎回、公募の結果が出るまで何か断ち物をする習慣があり、今まで鶏肉、梅干し、小豆、お漬け物を絶ったのですが、なぜか守り通したときには「面接通知」が来たものです。オカルトは信じていませんが、実に不思議。
 
 なお、M先生は胃潰瘍や胃炎にきく薬を出してくれましたが、かかりつけの医師の薬も続けてかまわないということで、現在、以下の処方で様子を見ています。

 パリエット10mg 朝2錠
 マルファ液 就寝前 30ml    
 ガスモチン       これらは胃の薬

 補中益気湯         漢方。免疫力を高める
 半夏厚朴湯         精神的安定、喉の違和感など
 桂枝ブクリョウ丸      更年期対策
 デプロメール 25mg×4    鬱病の薬。パニック障害の治療にも。

 頓服でデパス1mgを適宜
 そのほか、ビタミンCとB12(B12が睡眠の改善に効果があるとされる)

 これはあくまでも私に対する処方ですので、ご参考までにあげたたけです。かつて私は鬱病を経験しているので、その影響かデプロメール(SSRI)がよくきくようです。また、漢方はかかりつけ医師が提案してくれたもので、副作用がないわけではなく、ききはじめるのに時間がかかるのですが、私にはきくようです。とくに、原因が複合的な病状の場合、漢方という手は考えてもいいと思います。ちなみに、粉薬状になっていて、保険がききます。やってみようという方は、よく医師と相談のうえ、自分も「漢方あいうえお」などのサイトで納得ゆくまで調べてからのほうがよいと思います。

 私は、慢性疲労症候群の患者さんのためにこれを書いているわけではありません。単なる私的な病気日記ですので、ちゃんと取り組みたい方はまず大阪大学のCFS
(慢性疲労症候群の意味)についてのHPを熟読されることをお薦めします。また、大阪市大と阪大の先生方が『危ない 慢性疲労』(NHK生活人新書)という本を出しており、これもかなり役に立つと思います。M先生は専門誌の論文しかないようです。「エコ女」と私が呼ぶ患者さんのサイトは、あえて記しません。読みたい方は「慢性疲労症候群」と「逆流性胃食道炎」の二つをand検索にかけてみてください。

 このような次第で、現在空腹に絶えつつ高山寺の明恵のような、または宝地房聖真のような生活を送っています。体を起こしておくのはかなり疲れるので、なんとか起きていられるようにこうやってブログなど書いております。本を読むと、すぐに寝てしまうのが困りもの。
 免疫力をあげるには、最近「笑い」が効果的といわれているので、桂米朝と桂枝雀のテープ(昔買ったのでテープなのだ)を枕もとで流したりしています(江戸の落語は聞いていると怒られてるみたいな気になるので)。しかし、爆笑というには至りません。
 あ、けっこう笑えたのは山田邦紀『明治時代の人生相談』(幻冬舎文庫)。「便所に落ちた私は早死にするのでしょうか」「美しすぎる私の悩み」「女にまたがれると出世しない?」など、笑いました。そして、やはり関西人にはオチのある笑いが最適。小説はデビュー時から全部読んでいる黒川博行氏の未読だったエッセイ『おおさかばかぼんど 夫婦漫才』(幻冬舎文庫)は、黒川のおっちゃんのファンなら確実に笑える。
 なんだかあほになりそうな本ばかりであるが、これで少しは免疫力と気力が上がったかもしれません。
 しかし、笑った後、どっと疲れてしまうのはまだ病気初心者ということであります。各方面にご迷惑をおかけしていますが、それを気に病むのもストレスになりますので、このさい前期期間中は「気にしない」ことにさせていただきます。
 ああ、疲れた・・・。