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夏への扉、再びーー日々の泡

甲南大学文学部教授、日本中世文学専攻、田中貴子です。ブログ再開しました。

きなこ日本文学全集 (第34回配本)

2010年10月24日 | Weblog
菊池寛 「父帰る」


女の声 ゴメン・・・

きなこ はい?

女の声 きなこはおらんかの?

きなこ へえ

女の声 きなこか?

きなこ まあ、おかあさんか、えろう変わったのう

女の声 遅うなったが、上がってもええかい

きなこ ええとも


1日半振りに学会から帰れる母は、いかにもすまなそうに玄関にたたずんで

いたが、きなこが笑顔で迎えると、母も笑顔になって、そそくさときなこの

頭をなでたのである。


*二十年ぶりに帰ってきた父、ではなく、たった一日半、きなこに会わない
だけで心弱くなる母と、よりたくましくなって母を迎えるきなこの感動の
対面を、きく・ちかんの名作でどうぞ。

魔法のじゅうたん

2010年10月22日 | Weblog
 きなこが座っているのは、魔法のじゅうたん?

 いえいえ、カーペットタイプの爪研ぎです。ちょっと寒くなってきたので、床に

寝転ぶのを控えるようになりました。で、ここが最近のお気に入り場所です。

 「ママ、元気になったか?」きなこが聞いてくれます。

 木曜日休んだら、少しましになったよ、ありがとう。明日は中世文学会大会に

出席するため、広島市に出張します。友人が発表のトリなので応援に行くのだ。

体がもつよう、控えめにすごそうと思います。

ママの消息(by きなこ)

2010年10月20日 | Weblog
 みなさん、こんばんは。

 ママの不調をご心配いただいてありがとう。通勤はなんとかしたはるので、ぼく

もさびしいのを耐えて待ってるで-。ママ、twitterではようつぶやいたはるけど。

 床でのごろ寝もちょっと涼しくなったかな。ほんまはママのお蒲団に行きたいん

やけど、ぼくは自立した猫やから、まだ我慢すんねん。

きなこ日本文学全集 (第33回配本)

2010年10月13日 | Weblog
 室生犀星 「蜜のあはれ」


「おじさま、お早うございます。」
「あ、お早う。好いご機嫌らしいが、ぼくはまだおじさまじゃないよ。」
「あら、ごめんなさい。じゃあ、お兄さま。こんなよいお天気なのに、誰だって機嫌好くしていなきゃ悪いわ、お兄さまもさばさばしたお顔でいらっしゃる。」
「こんなに朝早くやって来て、またおねだりかね。どうも、あやしいな。」
「ううん、いや、ちがう。」
「じゃ何だ。言って御覧。」
「あのね、このあいだね。あの、」
「うん。」
「このあいだね、お兄さまが召し上がったマグロ缶、実はあたいのお父さんなんですの。」
「なんで金魚のお父さんがマグロなんだね。」
「あら、お兄さま、ご存じないの。金魚は仮の姿で、出世するとマグロから鯨になるんですのよ。」
「(うっそー)・・・」


*金魚がいろいろな女の子になって「おじさま」を翻弄する素敵な小説です。室生犀星といえば「杏っ子」という教科書的な常識をとりはらってください。なお、NHKでドラマになった「火の魚」にも、「蜜のあはれ」は少し使われていたようでした。講談社文藝文庫で読めます。

読書の秋なりけり

2010年10月12日 | Weblog
 秋が深まってゆきます・・・という感じではないのですが、読書にはいい気候で

す。きなこも本日は読書中。何を読んでいるのかな?

きなこ『本や』

 本はわかってるってば。本のタイトルは?

きなこ『題未定やで』

 『題未定』っていうタイトルは、むかーし、小松左京氏の本で実際あったのでし

た。きなこが読むふりをしているのは、ヤン・ピーパー『迷宮』(工作舎)です。

きなこ「絵がいっぱいあっておもしろいで」

私「まあ、そうやね・・・」

 今日は風邪で喉と鼻がやられてしまい、いつもの病院の後、耳鼻科に行きました。

すると、風邪もそうだけど、私の場合はアレルギーが強いといわれました。熱が

でないのはアレルギーの症状らしいです。で、アレルゲンは? ブタクサですと。

先生「お住まいの近所には森や林はありますか?」

私「ないです。街中ですから。公園が一つあるくらいです」

先生「では、勤務先はどうですか?」

私「(あっ)そういえば、山の近くで緑が豊かですね・・・」

先生「たぶん、それが原因でしょうね」

 お薬貰って帰宅するも、顔や目がむずむずします。秋にも花粉症があるようです

ので、みなさまもお気を付けくださいまし。

私「あー、饅頭恐いじゃないけど、ブタクサ恐い」

きなこ「ぼくはササミとマグロ缶が恐いで」

私「ついでに、熱いお茶も恐い、なんていいなさんなや」

 きなこ、落語も好きみたいでした。
 

まだ夏日・・・

2010年10月09日 | Weblog
 本日、京都は27度まで気温が上がりました。夏日やーん。あつう・・・。

 きなこも「開き」になって熱を放出しております。いつになったら秋の服が着られ

るのでしょうか。

 まあ、きなこは年中着たきりですがね。

きなこの雑誌カフェ

2010年10月08日 | Weblog
 居間の端っこに雑誌が積んであるのですが、きなこは最近そこがお気に入りです。い

つもながらの乱雑ぶりでお恥ずかしいのですが、雑誌の山にきなこはすっぽり入り

込んで座ってしまいます。だから片付けられない・・・というのは言い訳だな。

 きなこが見上げているのはテレビ画面。番組は「東京カワイイTV」です。今日は

「溺愛系男子」が紹介されていました。お人形や犬の着せ替えをしたり、イクメン

と呼ばれる育児に励む男性の特集です。きなこは何を溺愛しているのでしょうか?

たぶん、おやつのササミではないかと思いますが・・・。

 あ、きなこ、目やにがついてるで。雑誌カフェの店長としてはかっこ悪いで。

特別編・きなこ漫画劇場 『テルマエ・ロマエ』

2010年10月05日 | Weblog
ヤマザキマリ 『テルマエ・ロマエ』は第二巻が発売され、古代ローマ帝国風呂文

化を日本に流布させることに多大な貢献をなした。また、主人公のローマ風呂技師

であるルシウスが「平たい顔族」(日本人)によって日本風呂文化に謙虚に学ぶ

姿勢も、時空を超えた国際交流であると高く評価されたと聞く。

 京都市にも、人間と猫という種の違いをものともせず、文化を共有し理解しよう

と日夜交流に励む二人きりの家族がいることを、私はローマふうの石版に記して

おきたく思う。

 そこで、今回は猫族による『テルマエ・キナエ』をお送りしよう。


タナカキナコ『テルマエ・キナエ』

 古代ネーコ帝国は風呂のない文化を持つ特殊な地域であるが、一部、人間族と共

同生活するネーコ族に限っては、半ば強制的に風呂に入らされるという過酷な風習

を持っている。キナウス・タナカトウスはその一人である。水の入っていない風呂

には多大な興味を持ち、しばしばその中において遊技をなすのであるが、数ヶ月

に一度(夏季はもっと頻繁に)、風呂桶の中につけられて「平たい顔族」にごし

ごし洗われるという蛮習にさらされるのであった。

 あるときキナウスは、風呂桶から足を滑らせ湯にもぐったと思うと、平たい顔族

が入浴している最中の風呂場にタイムスリップしたのである。

キナウス「こ、ここはっ」
ーーどうやら例の世界へ来てしまったようだな・・・。

平たい顔族の中年女は、浴槽に首までつかって角川文庫を読んでいて、キナウスの

ことには気づいていないらしかった。おそらくいつものミステリなのであろう。

ーーあ、洗われてしまう・・・。

キナウスは、数週間前の恐怖の時間を思い出して身震いした。しかし、女はミステリ

に夢中で、真っ赤な顔をして犯人捜しをしているようである。その様子は、風呂という

ものを心から楽しんでいるようだった。

ーーうむ・・・。平たい顔族に会うと何やら心底からほっとする・・・。

すると、いきなり女がキナウスのほうを向いてこういった。

「どっちの顔が平たいねん? 鏡みてみ」

風呂場の大きな鏡には、「毛の生えた平たい顔猫族」が映っていた・・・。