タイトルを「大人」から「高齢者」に変更して、NSFのQAシリーズを続けます。
このQ&Aは、米国National Scoliosi Fundationのホームページに掲載されている
内容の和訳を試みたものです。今回は治療というもっとも重要な範囲に踏み込んだ
ものですが、これらは米国医療環境を反映したものですので、患者の皆様におかれ
てはあくまでもひとつの参考情報として受け止めていただきたいと思います。
患者の皆様は、自己判断をすることなく、できるだけ早い時期に国内の側弯症専門
医師に診断をあおぎ、ご自分の状態を把握することが大切です。先生から治療方針
の説明をうけ、治療にはげまれることを希求しております。
(august03)
http://www.scoliosis.org/resources/medicalupdates/degenerative.php
Q:変性性側弯の患者さんに対する治療はどういうことをするのでしょうか?
A:その患者さんの側弯の状態(重症度)に応じた治療となります。例えば、
1)理学療法と非ステロイド系の抗炎症薬
2)装具(コルセット)
3)手術
Q:いずれかの治療を始めるまえにあたり、どのように患者さんの状態を診断するの
かについて教えてください
A:初めて患者さんが診察に訪れたとき、私たちが知りたいことは、この患者さんは
何を主訴としているのか、身長は以前よりも縮んでいるのかどうか、洋服はきちん
と体型に合っているかどうか、下肢にしびれや筋力の衰えなどの神経症状がある
のかどうか、というようなことに注意を払います。
もし患者さんの胸椎上部に変形カーブがある場合、呼吸機能障害が発症しているか
どうか、日常生活で以前よりも疲れやすくなっているかどうか、耐久力が減少して
いるのかどうか、というようなこと、つまり、以前よりも様々な面で体調/体形に
変化が現れているのかどうか、ということを知るようにつとめます。
そのような広範囲にわたることを問診により聞き出し、できるだけ以前に撮影した
レントゲン写真の入手をこころみたり、昔のカルテを入手できないかを試みます。
以前の状態がわかるものがあると現在と比較して症状の把握が正確にできるからです。
患者さんの健康状態は良好なのか、それとも重篤な症候に至っているのか、例えば
脊椎に悪性腫瘍はないかとか、何か変性性側弯以外の病気がカーブの原因になって
いないか、ということに注意を払います。
Q:理学療法とか、運動などはカーブ進行を止めるのでしょうか?
A:運動によりカーブが減少することは期待できません。それらが側弯カーブ自体を
治すということは期待できません。それらを患者に施したり、運動を推奨するのは
患者さんの「全体的健康状態」を改善したいからです。そうすることで、患者さん
が側弯症という病気と「つきあって」いくということが期待できるからです。
運動がカーブを減少させることはありませんが、例えば「痛み」のコントールには
役立つことが期待できます。
Q:患者さんの年齢的なこととか、症状の程度などにより、運動することが無理な
ような場合は、どういう治療をすることになるのでしょうか?
A:患者さんによっては、硬性ブレースとかTLSO装具の使用を検討するかもしれません。
ご存知のように、これらの装具は「アンダーアーム装具」とも呼ばれるもので、
プラスチック製で軽く、薄いものです。
背中を支え、脊柱に荷重がかからないようにすることを目的として短期間ですが、
このような装具を使うことを勧めることがあります。患者さんによっては、これで
楽になり、自分の症状の具合を推し量ることもでき、また運動療法のスピードが
進むことにもつながります。このような装具での支持は短期間ですが、目標とする
ところは、運動により背中の筋肉が再び機能するようにしてあげることであり、
それによって身体的状態を回復することにあります。
Q:装具はカーブ進行を止めるのでしょうか?
A:大人においては、それはありません。装具はあくまでも、側弯カーブにより併発
している(減少している)身体機能の回復や、痛みのコントロールというような症状
の改善のためです。
Q:どのような場合に手術をすることになるのでしょうか?
A:手術を考慮すべき患者さんというのは、
1)明らかにカーブが進行を続けていることがはっきりしている
2)胸椎カーブにより呼吸機能が衰えている
3)腰椎カーブが、歩行困難などの神経症状の原因となっている
4)症状が患者さんの日常生活の障害となっている
Q:専門医師も手術を推奨し、患者さんが手術することに同意した場合、どのような
手術を行うことになるのでしょうか?
A:今日、手術方法も様々なものがあります。例えば、変形が強い腰椎カーブの場合
私は後方と前方の両方からの手術を行っています。具体的にいいますと、前方から
侵入し、患部の椎間板を切除し、そこに骨移植を行い、次に後方から侵入して
金属のインスツルメンテーションで脊柱を固定します。
もし可能であれば、この両方からの手術を同日のうちに行います。そうすることで
術後リカバリー期間は一度ですみますし、そうするほうが患者さんにとっては
心理的にも肉体的にも負担が少なくてすみます。
Q:手術後はブレースを装着するのでしょうか?
A:私の場合は、軽くて薄いブレースの装着を勧めています。お年寄りの場合は、骨が
もろく、若い人に比べて脊柱のカーブが「硬い」ために、それを戻すためには手術
はかなり広い範囲になります。そのような手術の後ですから、ブレースは脊柱を
保護することになり、より安全であるといえます。多くの患者さんが、術後6ヶ月
から9ヶ月ほど、24時間フルタイムでのブレース装着となります。もちろん、お風呂
に入るときははずして結構です。
Q:手術やその術式によるリスクにはどういうものがあるのでしょうか?
A:もちろん側弯症手術というのは大手術の範疇にはいるものです。かつ、この場合
患者さんは老齢の方が多いということになりますので、手術に伴う合併症は
.....その内容自体に重篤なものは少ないのですが....発生する率自体は、若い人
の手術に比較したら高いものとなります。ただ、一般的に言えることは、今日の
手術は非常に安全なものといえます。
Q:高齢患者が手術することで発生しうる合併症のリスクを減らすにはどういうことに
注意すればいいのでしょう?
A:年齢それ自体は患者さんの健康に対して重要な要因ではありません。
大切なことは、栄養のある食事をとること、身体を動かすこと、体重を管理することです。
手術前には、念入りに患者さんの健康状態/体調等を検査することで、手術が無事
に実施できるかどうかをチェックすることになります。
Q:このホームページを見ている患者さんの多くは、側弯症患者さんなわけですが、
まだ変性性側弯の症候は現れていない年齢だと思います。そのような年代の患者が
将来どのような問題を抱えることになるのでしょうか?
A:それは難しい質問です。私たちが診察している30度~40度の側弯カーブを有する
大人の患者さんの大半は進行性のものではありません。しかし、中には、進行を
続けるケースもあります。
一般的にいえば、30度のカーブの方は、将来においても心配はないでしょう。
そのような方は、体調管理に気を配り、体重を管理し、運動を怠らず、そして
正しい食事をとることに努めてください。
40度の患者さんは、必ず...少なくとも5年ごとくらいで...定期的に専門医にて
診察を受けて下さい。また身長も定期的に測定して注意を払ってください。
40度~50度のあいだにいる患者さんは進行のリスクがありますから、よりまめに
専門医で検査してもらうことに努めて下さい。もしカーブが進行しているようで
あれば、手術を勧められることになると思います。
Q:変性性側弯について、将来はどのようになっているものでしょうか?
A:高齢化が進み、老人人口が増加していること、そしてまた人々の健康志向と、
活動的であることへの希求が高くなっていることから、変性性側弯を発症した患者
さんは、病気による様々な障害に対して、「人生の妨げである」という気持をより
強く持つようになっていると思います。
また、将来はさらに手術治療の方法もさらに改善され向上していると思います。
この病気に対する研究も進み、また変形性関節症や骨粗鬆症の治療と予防について
もさらに多くのことを学んでいるでしょう。いつかは、どういう患者さんが変性性
側弯になりやすいか、というリスクを知る事ができるようになり、若い時からその
問題解決にむけて取り組むこともできるようになっていると思います。
(オリジナル英文は、URLにてNSFのホームページを参照ください)
下記URLにも説明を加えていますので参照ください
Little by little [大人の側弯症]
http://sokuwan.googlepages.com/adultscoliosis2
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ブログ内の関連記事
「高齢者の側弯症 運動療法の勧め Q&Aシリーズ No.1」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/7f210133e3f3c24969c77e1d6718921b
「高齢者の側弯症 Q&Aシリーズ No.2 老化による変性の進行」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/d10233cc9ab56f7ac61c050df4ea751e
「高齢者の側弯症 Q&Aシリーズ No.3 関節炎、骨粗鬆症」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ebe93b4414a162e6a7ca11aef68ae7db
このQ&Aは、米国National Scoliosi Fundationのホームページに掲載されている
内容の和訳を試みたものです。今回は治療というもっとも重要な範囲に踏み込んだ
ものですが、これらは米国医療環境を反映したものですので、患者の皆様におかれ
てはあくまでもひとつの参考情報として受け止めていただきたいと思います。
患者の皆様は、自己判断をすることなく、できるだけ早い時期に国内の側弯症専門
医師に診断をあおぎ、ご自分の状態を把握することが大切です。先生から治療方針
の説明をうけ、治療にはげまれることを希求しております。
(august03)
http://www.scoliosis.org/resources/medicalupdates/degenerative.php
Q:変性性側弯の患者さんに対する治療はどういうことをするのでしょうか?
A:その患者さんの側弯の状態(重症度)に応じた治療となります。例えば、
1)理学療法と非ステロイド系の抗炎症薬
2)装具(コルセット)
3)手術
Q:いずれかの治療を始めるまえにあたり、どのように患者さんの状態を診断するの
かについて教えてください
A:初めて患者さんが診察に訪れたとき、私たちが知りたいことは、この患者さんは
何を主訴としているのか、身長は以前よりも縮んでいるのかどうか、洋服はきちん
と体型に合っているかどうか、下肢にしびれや筋力の衰えなどの神経症状がある
のかどうか、というようなことに注意を払います。
もし患者さんの胸椎上部に変形カーブがある場合、呼吸機能障害が発症しているか
どうか、日常生活で以前よりも疲れやすくなっているかどうか、耐久力が減少して
いるのかどうか、というようなこと、つまり、以前よりも様々な面で体調/体形に
変化が現れているのかどうか、ということを知るようにつとめます。
そのような広範囲にわたることを問診により聞き出し、できるだけ以前に撮影した
レントゲン写真の入手をこころみたり、昔のカルテを入手できないかを試みます。
以前の状態がわかるものがあると現在と比較して症状の把握が正確にできるからです。
患者さんの健康状態は良好なのか、それとも重篤な症候に至っているのか、例えば
脊椎に悪性腫瘍はないかとか、何か変性性側弯以外の病気がカーブの原因になって
いないか、ということに注意を払います。
Q:理学療法とか、運動などはカーブ進行を止めるのでしょうか?
A:運動によりカーブが減少することは期待できません。それらが側弯カーブ自体を
治すということは期待できません。それらを患者に施したり、運動を推奨するのは
患者さんの「全体的健康状態」を改善したいからです。そうすることで、患者さん
が側弯症という病気と「つきあって」いくということが期待できるからです。
運動がカーブを減少させることはありませんが、例えば「痛み」のコントールには
役立つことが期待できます。
Q:患者さんの年齢的なこととか、症状の程度などにより、運動することが無理な
ような場合は、どういう治療をすることになるのでしょうか?
A:患者さんによっては、硬性ブレースとかTLSO装具の使用を検討するかもしれません。
ご存知のように、これらの装具は「アンダーアーム装具」とも呼ばれるもので、
プラスチック製で軽く、薄いものです。
背中を支え、脊柱に荷重がかからないようにすることを目的として短期間ですが、
このような装具を使うことを勧めることがあります。患者さんによっては、これで
楽になり、自分の症状の具合を推し量ることもでき、また運動療法のスピードが
進むことにもつながります。このような装具での支持は短期間ですが、目標とする
ところは、運動により背中の筋肉が再び機能するようにしてあげることであり、
それによって身体的状態を回復することにあります。
Q:装具はカーブ進行を止めるのでしょうか?
A:大人においては、それはありません。装具はあくまでも、側弯カーブにより併発
している(減少している)身体機能の回復や、痛みのコントロールというような症状
の改善のためです。
Q:どのような場合に手術をすることになるのでしょうか?
A:手術を考慮すべき患者さんというのは、
1)明らかにカーブが進行を続けていることがはっきりしている
2)胸椎カーブにより呼吸機能が衰えている
3)腰椎カーブが、歩行困難などの神経症状の原因となっている
4)症状が患者さんの日常生活の障害となっている
Q:専門医師も手術を推奨し、患者さんが手術することに同意した場合、どのような
手術を行うことになるのでしょうか?
A:今日、手術方法も様々なものがあります。例えば、変形が強い腰椎カーブの場合
私は後方と前方の両方からの手術を行っています。具体的にいいますと、前方から
侵入し、患部の椎間板を切除し、そこに骨移植を行い、次に後方から侵入して
金属のインスツルメンテーションで脊柱を固定します。
もし可能であれば、この両方からの手術を同日のうちに行います。そうすることで
術後リカバリー期間は一度ですみますし、そうするほうが患者さんにとっては
心理的にも肉体的にも負担が少なくてすみます。
Q:手術後はブレースを装着するのでしょうか?
A:私の場合は、軽くて薄いブレースの装着を勧めています。お年寄りの場合は、骨が
もろく、若い人に比べて脊柱のカーブが「硬い」ために、それを戻すためには手術
はかなり広い範囲になります。そのような手術の後ですから、ブレースは脊柱を
保護することになり、より安全であるといえます。多くの患者さんが、術後6ヶ月
から9ヶ月ほど、24時間フルタイムでのブレース装着となります。もちろん、お風呂
に入るときははずして結構です。
Q:手術やその術式によるリスクにはどういうものがあるのでしょうか?
A:もちろん側弯症手術というのは大手術の範疇にはいるものです。かつ、この場合
患者さんは老齢の方が多いということになりますので、手術に伴う合併症は
.....その内容自体に重篤なものは少ないのですが....発生する率自体は、若い人
の手術に比較したら高いものとなります。ただ、一般的に言えることは、今日の
手術は非常に安全なものといえます。
Q:高齢患者が手術することで発生しうる合併症のリスクを減らすにはどういうことに
注意すればいいのでしょう?
A:年齢それ自体は患者さんの健康に対して重要な要因ではありません。
大切なことは、栄養のある食事をとること、身体を動かすこと、体重を管理することです。
手術前には、念入りに患者さんの健康状態/体調等を検査することで、手術が無事
に実施できるかどうかをチェックすることになります。
Q:このホームページを見ている患者さんの多くは、側弯症患者さんなわけですが、
まだ変性性側弯の症候は現れていない年齢だと思います。そのような年代の患者が
将来どのような問題を抱えることになるのでしょうか?
A:それは難しい質問です。私たちが診察している30度~40度の側弯カーブを有する
大人の患者さんの大半は進行性のものではありません。しかし、中には、進行を
続けるケースもあります。
一般的にいえば、30度のカーブの方は、将来においても心配はないでしょう。
そのような方は、体調管理に気を配り、体重を管理し、運動を怠らず、そして
正しい食事をとることに努めてください。
40度の患者さんは、必ず...少なくとも5年ごとくらいで...定期的に専門医にて
診察を受けて下さい。また身長も定期的に測定して注意を払ってください。
40度~50度のあいだにいる患者さんは進行のリスクがありますから、よりまめに
専門医で検査してもらうことに努めて下さい。もしカーブが進行しているようで
あれば、手術を勧められることになると思います。
Q:変性性側弯について、将来はどのようになっているものでしょうか?
A:高齢化が進み、老人人口が増加していること、そしてまた人々の健康志向と、
活動的であることへの希求が高くなっていることから、変性性側弯を発症した患者
さんは、病気による様々な障害に対して、「人生の妨げである」という気持をより
強く持つようになっていると思います。
また、将来はさらに手術治療の方法もさらに改善され向上していると思います。
この病気に対する研究も進み、また変形性関節症や骨粗鬆症の治療と予防について
もさらに多くのことを学んでいるでしょう。いつかは、どういう患者さんが変性性
側弯になりやすいか、というリスクを知る事ができるようになり、若い時からその
問題解決にむけて取り組むこともできるようになっていると思います。
(オリジナル英文は、URLにてNSFのホームページを参照ください)
下記URLにも説明を加えていますので参照ください
Little by little [大人の側弯症]
http://sokuwan.googlepages.com/adultscoliosis2
/////////////////////////////////////////////////////////////////////////
ブログ内の関連記事
「高齢者の側弯症 運動療法の勧め Q&Aシリーズ No.1」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/7f210133e3f3c24969c77e1d6718921b
「高齢者の側弯症 Q&Aシリーズ No.2 老化による変性の進行」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/d10233cc9ab56f7ac61c050df4ea751e
「高齢者の側弯症 Q&Aシリーズ No.3 関節炎、骨粗鬆症」
http://blog.goo.ne.jp/august03/e/ebe93b4414a162e6a7ca11aef68ae7db