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装具療法 3データの比較 (大阪医科大学OMCブレース追加) 資料追加

2017-11-04 10:32:55 | 特発生側弯症と装具療法
初回記載:2017年11月3日
追加:2017年11月4日 レントゲン写真
追加:2017年11月4日 別府発達医療センター資料追加


装具療法終了した25年後のアウトカム (2016年最新文献より)」を先にお読み願います。
そこで用いた海外データ2件に、国内データ1件を並べて視認できるようにしてみました。



この図の作成意図は、時期と場所(国、病院)の異なる「思春期特発性側弯症における装具療法の長期結果」3件のデータを並べてみることで、見えてくるものがあるのではないか? ということです。左がノルウェー、真ん中がギリシア、そして右は2015年の大阪医科大学の研究データです。

 ・装具装着前のコブ角 ・装着時のコブ角(いわゆる装具による矯正力) ・装具療法終了時のコブ角 ・長期フォローアップ時のコブ角

どのような傾向になるかは、見えてくると思います。 課題を再掲して考えてみたいと思います。


  5. 患者の立場から見た場合、経過観察であれ体操療法であれ、その前提である「早期発見されること」は非常に大きな意味を持つ。

(comment by august03)
・最初のスタートラインである 装具装着得のコブ角は、3データとも 30°前後です。これがもし 発見時から40°を超えていた場合は手術リスクが高まることがノルウェーのデータから推定されました。
・装具装着時の矯正したコブ角 これも3データとも 20°前後です。これがもし 40°を超えていた場合は手術リスクが高まることがノルウェのデータから推定されました。








このふたつのレントゲン写真を比べたとき、何を感じられるでしょうか?
研究報告によりますと、上のこどもの場合は、一日20時間装着の指示を100%遵守、下のこどもの場合は遵守率は7.7% であったと報告されています。


6. 装具療法においても下記のような課題が存在すると考えられる。
  例えば、・装具療法は患者(こども)にとっては、心理的にも、物理的(暑さ・装着時間等)にも非常に難儀なものである。どうすれば軽減することができるか?・装具療法の有効性を確実なものにするには、装着時間は? 装具のタイプは? 装具製造の技術的要素は? などのデータの蓄積も必要であろう。・装具療法をしても効果がなく、カーブが進行する場合がある。どのような場合に進行するのかの原因究明(側弯症のタイプなのか? 装着時間の量なのか? )

装具療法が効果を得なかったのは、装着時間の遵守が悪かったせいでしょうか? もしかしたら、装具でも抑制できない進行するタイプの側弯症だったかもしれません。特発性側弯症の原因がいまだに不明ですから、これはまだ誰にも答えることのできない課題です。

ただ、現時点において事実(らしい)と推定されていることは、25°を超えたら装具療法に入り、できるだけ装着時間は長いほうが、将来的にコブ角を低い次元で維持できるだろう。ということです。 装具療法を終えてコブ角が30°前後をその後も維持できれば、さらに40代、50代になったときに腰痛を感じるかもしれませんが、手術を避け得る確率は大きくなります。

でも、どうすれば装着時間を遵守してもらえるようになるのでしょう?



    民族的、宗教的な背景から、患者さんがたは医師の指導に素直である。という環境なのでしょうか?  
    もしかすると文化的土壌として、学校でのイジメとか、「恥ずかしい」というような感情を
    生み出すことのない背景がある?
    何がそうさせているのかはまったくわかりませんが、患者(お子さん)さんが装着している時間の長さが
    アウトカムに反映されているのは確かだと思います。

引用文献は
◇2015年 Efficacy of the Osaka Medical College (OMC) brace in the treatment of adolescent idiopathic scoliosis following Scoliosis Research Society brace studies criteria 大阪医科大学


追記 2017年11月4日

ちょっと古い報告になりますが、1995年「当センターにおける思春期特発性側弯症に対する装具治療成績」別府発達医療センター.石谷栄一先生 等 (整形外科と災害外科44:(3))より引用します。



(comment by august03)
このように医学データを集積していくことで、「見えてくるもの」があります。あくまでも「推定あるいは仮説」の域であることを謙虚に受け止める必要がありますが、早期に発見して対応していくことで、治療効果に影響を及ぼすということは「見えてくる」と思います。



SRS組織もSOSORT組織も、25°を超えたら装具療法という点では方針が一致しています。25°以前に発見されて、その後は定期観察により、進行傾向が確認されたら 25°~30°からは装具療法に入り、できるだけ長時間の装着時間を守る(守ってもらう)、というのが標準的な考え方と言えると思います。


  5. 患者の立場から見た場合、経過観察であれ体操療法であれ、その前提である
   「早期発見されること」は非常に大きな意味を持つ。
    この手段であるスクリーニングが抱える課題も存在する。
   例えば、・国内の全ての自治体で実施されているわけではない。
       ・スクリーニングには費用がかかる。
       ・スクリーニングの精度向上という課題もある。
        (よりローコストで、ハイクオリティのスクリーニングが求められる)

august03


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
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☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?



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