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側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

脊柱側弯検診 - 二次検査連絡を受けたとき、お子さんを何処へ連れていかれますか ? (手術に至った要因)

2018-04-27 13:47:37 | 親としてどのように立ち向かうか

理学療法学会発表からの引用です。「成長期側弯症患者が手術に至った要因」報告者は名城病院理学療法室 荒本久美子先生他 (グーグル検索からは発表年月日不明)

下記はあくまでも私見です。患者さん、そしてそのご両親がどう感じ、何を考えたかは、ご本人のこころの中にあり、知ることはできません。ひとつ想像されることは、相当の葛藤があっただろう。ということ。私自身も自分の病気を知ったとき、それ以降の様々な治療の中で、自分の気持ちを整理する為にかなり自分自身と格闘しなければなりませんでした。そういう経緯は、「病気」を知った本人、そしてその家族が経験するひとつの道程なのだと思います。別のブログに「ひとりで逝く覚悟」というタイトルを付けうる気持ちに至るまでにかなりの年月を要しました。

“病気”と向き合う覚悟などというものは、小学校の教科書にも、中学の授業でも誰も教えてくれるものでもなく、病気になったその人自身が、経験から学んでいくしかないものだと思います。

子どもが罹る病気の辛いことのひとつは、大人の目から見たら、まだ何も学んでいない「こども」がその病気と向き合っていく状況が生まれることだと思います。親なら代わってあげたい。自分のこの命と引き換えてもいいと思うもの。それが母親ならなおさらだと思います。

 

でも、“病気”と向き合うには、他にも様々な要素があると思います。

 

そのひとつが、正しい知識、正しい情報を得ること。

 

    学校での脊柱側弯検診

       ↓

    二次検査を受けるように、という連絡をもらった

       ↓

     (意識しなかった) 

     (大したことではないと考えた)

     (病院に行こうと思ったけど、忙しくて、いつの間にか忘れていた)

     (子どもが嫌がって 行かなかった)

     (側弯症と診断されるのが怖くて 行けなかった)

 

様々な考えが去来したと思います。そのことを誰も否定も非難もできないと思います。人間は弱い生き物ですから、心が乱される出来事や状況は、できれば「見たくはない」と無意識の力が働くと言われています。逆に、心が安心できることに意識は向かう、とのこと。

 

〇塚整体に代表される数多くの整体・カイロの宣伝広告が、いまだにインターネットをひらけば見ることができます。患者さんの母親が書くブログにもその名前が登場します。お母さんは「良かれと思って」のことだと思いますが、宣伝の一助となり、口コミの拡大再生産が続きます。

 

人は、じっと運命のゆくえを待つよりも、何かを行動して前に進むことを好みます。そういう「考え方」が遺伝子に組み込まれているがゆえに、ヒトが人類として進歩してきたのだ。と、ものの本には書いてあります。

 

先に掲げた学会報告中の「民間療法で何かをやってもらっているという満足度は高かった」ということの理由が理解できます。

 

病院の医師はとても忙しくて、じっくりと患者さんやご家族の話に耳を傾けている時間はありません。患者さんとそのご両親にとっては「初めて経験」することでも、医師には日常であり、そして何よりも、日本の医療現場の環境では、毎日の外来に来ている100人、200人、300人の患者さんを全て診察しなければならず、それが終われば、午後からは手術あるいは病棟患者の回診あるいはカルテ等診療記録の整理あるいは学会発表の準備等々に忙殺されています。レントゲン撮影結果から、コブ角20度であれば、「経過を見ましょう」という診断がおこなわれるでしょう。それはわずか5分か10分の説明かもしれません。

一方、民間療法では、過去の実績が壁一面に貼りだされ、自信満面の療法者が「大丈夫」「側弯は治ります」「この患者さんたちの写真を見て下さい」「この子は、いまは△△△で有名な〇〇〇ですよ」「この体操をみんなと一緒にやりましょう」「毎日家でもやれば必ず治ります」と、1時間も2時間も、丁寧に、そして親身な態度と言葉で説明してくれます。

体操が終われば、......医学的に意味があるとどうして思えるのか、私には理解できないのですが.....ゆらゆらと揺れるベットに横になって身体を休めるのでしょう。.......もしそれが側弯治療の一環として行われているとしたら、それはそれで法的に問題があると考えるのですが.....

 

何かをすることでコブ角が進行せずにすんだら、あるいは逆にコブ角が減少したら、そこには「因果関係」があると誰しもが考えます。 

 

      体操をした → 進行しなかった(あるいは減少した)

 

何かをして何かの結果が生まれたとき、ひとはそこに「因果関係」を見ます。良い結果が生まれたのですから、しんなおさらです。どうして疑うことなどできるでしょう。

 

でも、

     何もせず普通に日常生活を送っていく → コブ角が進行しなかった

 

こういう結果がうまれたとき、これをどう考えればよいのでしょう。

 

あるいは、

        体操を続けていた →  コブ角が進行した

 

こういう結果がうまれたとき、これをどう考えればよいのでしょう。


ひとは、自分が何かをして何か悪い結果が生まれたとき、そこには「罪悪感」が生まれる、と言います。

自分の何かが悪かったのではないか、ああすれば良かったのに、こうすれば良かったのに。と。

もっと家での体操時間を長くすれば良かったのではないか、さぼらずに毎日すれば良かったのではないか

 

そういう後悔の思いを(別の内容であっても)過去に経験している母親は、こどもに毎日がんばれと励まします。後悔させない為に、カーブ進行を止めるために、毎日がんばるように励まします。

 

そして、その結果は、次のような予想となります。

 

 ①体操を(骨成熟が完了するまで)続けた→(骨成熟時点で20度)カーブ進行が止まった(or減少した)

  体操を(骨成熟が完了するまで)続けた→(途中進行し装具をへて骨成熟時)40度→その後も普通に生活

  体操を(骨成熟が完了するまで)続けた→(途中進行し装具をへて骨成熟時)45度→その後進行し、〇〇歳で手術

 

  体操を続けた → 治療費が続かず止めた(その時30度で装具)→(骨成熟後)カーブは進行しなかった

  体操を続けた →治療費が続かず止めた(その時40度で装具)→その後カーブ進行し、手術となった

  体操を続けた 治療費が続かず止めた(その時40度で装具)→(骨成熟後)その後も普通に生活

あるいは

 ②(初診時20度) → 体操も何もしなかった→ カーブは進行せず、骨成熟後も20度のまま

  体操しなかった → 装具療法となり、骨成熟時点で30度 →その後もカーブ進行はなかった

  体操しなかった→  装具療法となり、骨成熟時点で40度 その後カーブ進行し、〇〇才で手術

 

整体に行くことを選択した方は、①が理想の結果、ということになると思います。

同時に、二次検査を受けて幸いにも、その時点では20度で、経過観察をへて、進行もなく日常生活を送っていける ② が 誰にとっても もっとも幸いな形と言えるでしょう。

では、二次検査で 20度であったときに、経過観察という何もしない状態が受け入れられずに整体に行った方で、①以外の結果は存在しないのでしょうか?   ここがとても重要なポイントです。

①以外の方は、絶対に 100% 存在しない?   逆の言い方をすれば、 整体に行った方は100%全員が①?   

もし、このブログStep by stepを初めてご覧になる方がおられましたら、どうか他の多くの側弯症患者さんが書かれているブログを検索してお読みになって下さい。

多くは、手術をされた方々のブログですが、それは「手術」という特殊な経験ゆえに「言葉にしたいことがある」という想いから書かれていると思います。この方々は ① 以外 ということになります。

では、今風の表現でいえば、この皆さんは「負け組」なのでしょうか?  

もし学校検診や二次検査で側弯症と診断された方(そのご両親)で、側弯症という病気がどういうものなのかを初めて調べておられる方がおられましたら、どうか、この点をよく考えていただけますでしょうか

 

その整体の言葉を借りるならば、世間には3500人前後の ①の方々 がいることになります。①の方々は無事卒業しているがゆえに、もう昔のことは思い出したくないからブログも書かないのかもしれません。 あるいは、大人となって初めて医学情報に触れて、①となって側弯を卒業できたことが、ある意味、偶然のなせることであったことを知り、何も語ろうとはしないのかもしれません。 あるいは、①であるがゆえに、他の方々を慮って、何も語ろうとはしないのかもしれません。

考えていただきたいのは、過去20年近くの年月の中で3500人、年平均175人 がもし①であったとしたとき、では、日本国内で二次検診(レントゲン検査)結果で「異常あり(経過観察)」と診断された子ども達は、どれくらいの人数になるか、という点です。

 

 

これは平成28年度全国統計データから引用しています。

一次の学校検診をへて、二次検診を受けて整形外科等でのレントゲン検査により「側弯症」と診断された子どもは平成28年度だけで 9571人 です。この約9000~1万人という数は毎年積みあがっていくことになります。 10年で約10万人、20年で約20万人。

 

   3500 vs 10万  あるいは  3500 vs 20万人  あるいは  175 vs 1万人

 

年間1万人、10年10万人、20年20万人  これらの子ども達は、整体で体操を受けなかったから

全員が手術を受けることになった ?   

 

そういう事実がありえないことは、おわかりいただけると思います。

 

初めて側弯症という病気について調べておられる方は、どうかこのブログ内の他の記事も参考にされて下さい。 マイルドカーブとはどういうものか、自然経過はどういうものか、なぜ医者が「経過観察」と言うのか。

 

この思春期特発性側弯症には、「勝ち組」も「負け組」もありません。

みんなが、この病気と向き合って、そしてその人の人生を選択し、生きています。

 

これから二次検診を受ける方や、側弯症と診断を受けた方に申し上げたいのは、インターネットに氾濫する整体やカイロプラクテックの宣伝文句にこころ乱されないで欲しい、ということ。

 

august03


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