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骨移植について Part 4 : 骨癒合

2009-04-25 23:51:25 | 側弯症手術について
(添付図説明 : 左側の図は、側弯症手術ではありませんが、脊柱固定手術における
骨移植とはどういう状態を示すのかをイメージしてもらう為のものです。移植骨は
この絵のように骨片の場合もあれば、さらにもっと細かく砕いて使用する場合も
あります。右側レントゲン写真は、側弯症患者さんに対する脊柱固定手術のものです。
金属ロッドに沿って白っぽい影になっている周辺が移植骨をおいた部分です。骨の
形状が明瞭にわかる第三腰椎~第五腰椎には移植骨はおかれていないことが写真から
判断できます。)

 骨移植という方法を理解する為には、その前に、脊柱固定手術というものをまず
理解する必要があります。ここでは骨移植を中心とした説明を展開していますので
側弯症における脊柱固定手術の詳細は割愛させていただきますが、整形外科という
「骨」を治療対象とする科の手術では、その手術目標の多くは「骨癒合」を得る
ことをめざして手術しているとも言えます。骨癒合はどういうことか、というのを
もっともイメージしやすいのは、「骨折」だと思います。
骨が折れると激痛が生じます。その治療ではこどものように若い人の場合は、
ギプス固定をして骨折が治るのを待ちます。この「骨折が治る」という状態が
すなわち「骨癒合」を得た。という状態なわけです。
骨折....骨が折れてふたつにばらばらに割れてしまった → ギプスで安定させる
 → 折れた骨どうしが繋がる (骨折の治癒)

この流れをイメージしながら、脊柱固定手術というものを想像してみてください。
簡略的に書きますと、

   側弯症により脊柱(胸椎~腰椎)がカーブしている
          ↓
   このカーブした脊柱を元にもどすために
   椎体(四角に見える骨)のひとつひとつにチタンスクリューを
   打ち込み、支柱を作る
          ↓
   この支柱と支柱をつなぐようにチタンロッドを接続させる
          ↓
   (実は上記の操作をしている最中に、先生はカーブを矯正する作業を
   行っています)
          ↓
   (チタンは非常に剛性に富む金属ですが、矯正して真っすぐにした
   カーブが元にもどろうとする.....曲がろうとする力を押しとどめるには
   十分ではありません。二対のチタンロッドで矯正しているのですが、
   それさえもさらに曲げようとするほどの力が側弯症では発生しています)
          ↓
   二対のチタンロッドだけで抑制しきれない変形しようとする力を最終的に
   抑えこむもの、それが移植骨をもちいることで得られる「骨癒合」なのです


人工骨と骨癒合について :
上記に説明した手術の流れは「自家骨(じかこつ)」とよばれる一般的に用いられる
手技を説明したものです。「自家骨」とは、患者さん自身の腸骨等から採取した
自分自身の骨という意味で「自家骨」とよばれます。
「自家骨」に対する他の方法として「他家骨(たかこつ)」とよばれる自分以外の人
からの骨を移植に用いる方法もあります。しかし日本では死者を火葬にする習慣や
献体等の率が少ないことなどもあり、欧米ほどには他家骨移植は用いられていません。
また他家骨の場合は、細菌感染(例えばエイズ等)などの患者さん自身はもっていなかった病気が移るリスクも...確率は非常に小さいですが...存在します。

他家骨は入手困難、さらに自家骨の採取にしてもその採取できる量には限界がある
、というような状況を解決する方法として「代用骨=人工骨」の開発が進められて
きました。

自家骨の代わりに代用骨が併用されるようになり、代用骨だけでの手術も研究され
いますが、この代用骨(人工骨)には、自家骨に存在する骨芽細胞が含まれていない
ため、骨癒合が成功する率が低くなるというリスクがあります。
先に記述しましたように、先生がたは脊柱固定手術によって骨癒合を得ることを
期待しているわけですから、その癒合が得られない.....これを癒合不全といいます
リスクは最小にすることを検討されます。しかし、同時に、人工骨を使用することで
採取量の少ない自家骨だけではできなかった手術も可能となります。
手術によって(患者さんの病気の状態によって)どれだけの数の椎体を固定するかは
ひとりひとり違ってきます。採取できる骨の量も異なります。それらを勘案した形
で次のような方法を選択されていると思います。

     自家骨移植のみによる手術
     自家骨+人工骨による手術
     他家骨も併用した手術

どのような手法を用いるかについては、手術時に先生から説明があると思いますので
不明点等があった際は、遠慮されずに質問して、納得して「手術に臨まれる」こと
が大切だと思います。


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1 コメント

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Unknown (もも)
2009-04-26 08:18:34
追伸
蝶々の表現は違うかもしれません。背中側のでっぱった部分、と覚えています。見る方向で蝶々と間違えて思い込んでいるだけかも・・。固定範囲が長いので人工骨を使用してもらい、良かったと思っています。
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