海辺の暮らし

この歳まで引越しや旅行を繰り返してきた私が、これからの旅も交えて街や漁港のことを書いていきたいと思っています。

東北の魚、伊東の魚。

2009-02-16 10:19:37 | Weblog
私は40歳になったばかりの頃に過労のためしばらく仕事を休むことにして、家族を連れて福島県のいわき市泉が丘というところに移り住んだ。まだ子供たちも小さいし、そんなに長く休むほどの貯えもなかったので、2年ほどしかいなかったけれど、この町が東北を代表する漁港のひとつ小名浜港の近くだったので、私の魚屋めぐり生活のスタートとなった地点だ。
もう20年も前のことになるが、あの頃はまだバブルがはじける直前で、東京周辺の家賃が高く、いろいろ探していたら特急列車も止まるJR泉駅から徒歩15分ほど、10畳とか8畳とかいう大きな部屋が7つくらいあって、廊下も1,8メートル幅、駐車場も付いて、これなら小さな子供も含めて7人家族でも悠々と言う家が、家賃10万円たっだ。
15年後の伊東移住でも巨大家屋の家賃が15万円。地方に住む醍醐味のひとつだ。
ところで、小名浜でびっくりしたのは蟹で、ズワイガニ、紅ズワイガニが真夏を除くほとんどのシーズンに食べられることだった。移ってすぐの5月に魚屋の店先で紅ズワイガニが1杯700円クライで売られていたので飛びついた。
店の人間には「東京の人は蟹を見ると目の色が変わるから」と、ちょっと皮肉に言われてしまった。常磐道が開通する以前は首都圏に輸送する手段もなく、地元の人間はいくらでも取れる紅ズワイなどは見向きもしなかったのだそうだ。他にも、首都圏の魚屋では見かけない魚がいろいろあって、口が肥えた。
伊東の場合、魚の種類は大体首都圏の魚屋に並ぶ鯵や鯖、鰯、鰹、メジ鮪などが多いのだが、鮮度と値段の違いが大きい。また、珍しい魚は少ないとは行っても、ソーダ鰹など、東京では食べたことがなかった。本かつおに比べ細身で身質も柔らかいのだが、鮮度がよければさっぱりしていていくらでも食べられる。
住んで見なければ、そして朝魚屋を覗いて、安くて旨そうな「その日のこれ」を探すのが海辺の生活の基本だ。