地獄（絵本）

「地獄」という絵本が大ブームを巻き起こしているようです。
中身を観てみると…
釜茹で地獄に針地獄、なます地獄と、それはそれは陰惨な絵が、これでもかと描ききられています。

この話は耳にしていました。
「いつか見てみたいな」程度の感覚しか持ち合わせていなかった私。
しかし、昨日朝の情報番組で紹介されていたのを、たまたま観ていると、なんとも言えないモヤモヤ感に包まれていくのを覚えました。
そんな折りも折り。 夕方の授業で、その本を持ってくる児童がいるではありませんか。
うーん…
自分の感覚「モヤモヤ」の正体を暴きたくなりました。
そのために、目の前に現れたとしか思えない。

読んでみました。
めくっていきました。
まず目に飛び込んでくるのは、鮮烈な赤、朱、紅。
炎、舌、血しぶきを表すその色。
そして、なんと表現してよいのか難しい粗い描写の閻魔様、鬼、人。
ヘタウマな線で描かれるそれらは、妙に生々しく、恐い笑み、情けない泣き顔、おののく形相を見せつけ、すべてが相まって「これが地獄である」という風景を作り出していました。

「この本の役割はなんだ？」
そこに恐らく、モヤモヤの正体を暴く鍵がある。

「悪い子がたちまち良い子に変身！」
「悪いことは閻魔様がみている！」
「おうちの中だけじゃなく、外でも良い子になりました！」


『どーん！！』

ネットでこれについて見てみた瞬間、私のモヤモヤが噴火して、穴という穴から吹き出しました。
シュー！と音を立てて空中を舞い、パラパラガサガサ降り注ぎ、私は先までモヤモヤだった塵をほうきではいて捨てました。
噴火装置のボタンを押したのは…あいつだな。

※以下の文は「裏腹」に潜んでいるあいつが叫んだ言葉です。それをお腹がすいた私が詩に仕立てました。決して特定の方にぶつけたものではありませんし、高圧的な表現については、ご飯を食べたらよくあいつに言って聞かせます。

《なんだそれ》
「良い子ってなんだ？良い子は誰だ？
悪いことってなんだ？
あなたが言う、その悪い子は何で悪い子になった？
トラウマ作るんじゃない。ヘタウマな絵なんだよ。
悪いことは何回まで許される？
あなたは悪いことをしていないのだな？ お先に地獄で待ってます。ときちんと話したか？
良い子は楽な子のことか？
悪いこともできなくて良いのか？
本に任せて手を抜くあなたは良い人か？ 友達ぶったら地獄にいきますよ。お片付けできない子はだぁれ。閻魔様に連れて行かれたい子はだぁれ。
私が閻魔様なら真っ先にあなたを連れていく。
成長過程で覚えることは痛みでしょ？
心と体の痛みを五感で覚えるんでしょ？
地獄を直接焼き付けてどうする？
想像力？悪いことをしたら地獄にいく。この本からそれ以上何を想像する？
天国って本も買ったのか？
子どもの時期のたかが絵本だからよいのか？
あおるテレビ、あおる本。
注文殺到して入荷困難。
今やプレミアついて８倍の値段のものまで。
私は￥3150で教育書を手に入れました。
ラッキー
￥31500なら買いません。
もっと早く知ってたらな。
残念でした。

この本は置いておけばいい。
買ってしまったならば。
子どもが見つけたら勝手に読ませればいい。
わざとらしく置くんじゃなくて、本棚に入れておけばいい。
子どもは考える。
自分で考える。
何度も開く子もいる。
見えない所に隠す子もいる。
声色変えてあなたが読む必要はないんだよ。
何も優しい本だけ見せればいいと言うんじゃない。
昔話の怖い描写を削除する動きも大嫌いだ。

だけどこれだけは言っておく。
そんなことをしなくても、こんな本なくっても子どもはみんな良い子で悪い子だ。
もっとよく見てやったらどうだ。」


あーすっきりした。 と腹の裏から声がしました。
「たかが絵本で目くじらたてて悪態つくんじゃない！」
あとであいつによく言っておきます。
そして。
この本の芸術性の高さも間違いないと表の私が言っておきます。


※写真はフランシスコ・デ・ゴヤの自画像と、ゴヤの作品「我が子を食らうサトゥルヌス」
一枚の絵でこんなに怖い。なぜ我が子を食らうのか？親に聞いてみたら「自分で調べて考えろ」と言われました。知る限り私が受けた一番の教育です。